序:Contrat de la mort
その昔、豪華絢爛な白亜の城があった。その白亜の城の名前は『ハイブライト』と言った。ハイブライトを支配するのは凛々しく気高い王と美しい王妃。二人は愛し合い、いつしか子どもを授かることになる。
彼等が授かったのは二人の兄弟。しかし、この白亜の城を支配する王は一人と決まっていた。そう、生まれた時から彼らは争う運命を背負わされていた。
やがて、成長した兄は権力を欲するようになる。変わりゆく兄を憂いた弟は悲しみのあまり、ハイブライトから姿を消した。
――そう、弟とともにいた少女と共に。
しかし、兄は少女を弟に渡す事すら許さなかった。必死に逃げ纏う少女を追い詰め、遂に兄は少女を捕まえる。これ以上逃げられないと悟った少女は弟の命を見逃す代わりに、兄の元へ向かい契りを交わす。
けれども、事実が変わる事はなかった。少女が愛するのは唯一人であり、少女の愛を向けられない兄は更に狂っていく。
不本意な契りと悲しみに暮れていた少女の前に突如現れたのは弟。兄を憂い、兄を想い、姿を消したが、少女を愛する想いだけは何物にも代えられない。兄から救おうとやって来た弟に対し、少女は喜びの涙を流し、やがて二人は結ばれる。
現れた弟によって少女を奪われた事を知った少年は、残酷な悪魔へと成り果てた。そう、彼は人間ですら無くなった。降臨した残酷な悪魔は世界を形成する全てを破壊しようと暗躍する。
――僕を認めない世界など滅ぼしてしまえ。
少年の残酷な仕打ちと、愛し合う二人に挟まれ苦しむのは、残された子供たち。
――身勝手な大人によって運命を狂わされていく少年少女達が、怒りと悲しみを胸に立ちあがり、目の前に広がる世界の全てを否定しようと動き出す。