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ぐぅるるるる~……
『「あ…」』
沈黙に耐えられなかった彼女のお腹が限界を迎え、彼女の表情もしょぼしょぼとしぼんでいく。
「お腹空いてるの」
と少年は、まだ両手で顔を隠しながら彼女に聞くとうんと返事が返ってくる。少年は目を瞑りながらポケットに何かないか探してみるが何もなくうーんと唸っていた。そこにまた彼女のお腹が鳴る。
「僕が寝泊まりしてるところには食べ物があるけど、このままだと君が露出の変質者で捕まっちゃうから服着ないと、君着るもの持ってる?」
少年の言っている意味が分からない彼女は首をかしげる。
「服ないの?もしかして追い剥ぎにあったのかな…と、とりあえず僕ので申し訳ないけどこれ来てくれる?」
上着を脱ぎ彼女に渡そうとしたが彼女は首をかしげたままだった。
「いやかもしれないけど我慢してほしいな、じゃないと君を村まで連れてけないよ」
少年から差し出される布をじっと見つめこれは何かと尋ねる。
「え、これは服だよ男物だけど女の子の服と作りは同じだよ、早く来てくれないと僕の目のやり場に困るんだけど…」
はいっと差し出さした服を彼女が受け取ったのを確認し後ろを振り向き待ってみるが布ずれ音すらしなかったので恐る恐る振り向き確認するが、彼女はまだ着替えてなかったずっと少年が渡した服を見つめているだけだった。
「もう着た?ってまだ着てないじゃん!早く着てよ」
『…?着る?なにを』
急いで目をそらす。そして、彼女の返答は意外なものだった、彼女が服を知らないということに。
服を知らないまま生きてる人間がこの世にいるのかと疑問が頭によぎる、それにこのままだと彼女は永遠に服を着てくれない可能性が出てきた。
「か、貸してその上着。僕が着させてあげるから、そ、その後ろを向いてくれると着させやすいかな」
『うしろ?…うん』
くるりと後ろを向き静かに待っている。
これは、仕方がない、不可抗力なんだ。と少年は自分に言い聞かせる。
彼女に極力触れないようそっと手を動かすが動揺で手が震える。
上着を肩にかけた辺りで少年の指が彼女の肌に触れた。ほんの数ミリ。
「『あ…』」
その声とともに少年の動きがぴたりと止まった。
彼女が不思議に思い少年の方に振り向くと、少年の顔は耳や首まで真っ赤だった。
『どうして顔の色が変わるの、どうして?』
彼女はぴとっと少年の頬に手を伸ばす。すると少年はさらに湯気がでてきて目の焦点が合わず間抜けな声が出る。
「ぴゃっ」
バタンと直立したまま背中から地面へと倒れてしまった。彼女も突然目の前の少年が倒れ驚くがすぐに冷静になる。人が倒れた。ならば聖女の役割は女神に祈るのみ。
少年が目を覚ますと鼻先に小鳥がちゅんちゅんと鳴いて立っている。視線を横にやると、彼女が膝をつき両手を胸の前に組みブツブツと何かを唱えている。彼女の後ろからは夕日の光が差し込みまるで光が彼女を包み込んでいるようにみえる。それはまるで
「せいじょ…さま…」
少年が目を覚ましたことに気づき彼女は祈るのをやめ、少年に声をかける。
まだ覚醒しきっていない少年はゆっくりと体を起き上がらせる
ピピピッと小鳥たちが少年の体から離れる。なぜこんなに小鳥がいるのかと周りを見ると鳥だけでなく小動物やシカやイノシシ、キツネまでが彼女の周りに佇んでいた。この森にこんなに野生の動物がいたことに少年は驚き彼女の方に目を向ける。そういえばまだ彼女にちゃんと服を着せていないためまだまだだ彼女の姿は際どいものだった。また顔に熱がこもる。
すると彼女はすかさず少年に手を伸ばし両頬をびしっとつかむ。
『倒れちゃだめ』
そういうと彼女のお腹からぐぅーと音がなる。少年はハッとする。先ほどまで太陽は自分の真上にあっただが今は完全に日が沈むまでそう時間がかからないほど経っている。
少年はずっと倒れていた、つまりその間彼女は空腹に耐え自分のためにずっと祈っていてくれていたのかと彼女に問うとこくんと頷く。
「ご、ごめんねお腹空いてるよね早めに村に行こうそこまで遠くないから」
そう言うと少年はムンと表情をしかめ先ほどとは違う手つきで彼女の服を完全に着せ終える。
「それじゃ行こっか」
こっちだよと日の沈む方向へと二人並んで進む。二人の後ろには二つの影が伸び、キラキラと星たちが顔を出し始めていた。




