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生前の記憶の一部が蘇る。だが、この記憶は新しい生を受けた今不要なもので、この花もあの金色の花に似ているがよく見れば全くの別物。

そう全く違う、この世界ではもうあの灰色の世界で毎日同じことを繰り返し言わなくても、民のために懺悔を聞かなくてもいい。何よりすべてを消し去る光に包まれることもない。前の世界では、誰かのために生きてきたがこの世界では自分を犠牲にしなくてもいいということ。

では、まず一番やりたいこと、それは


『この部屋から出ること』


今まで狭い部屋の中で過ごしてきた彼女はずっと外の世界に触れてみたかった。彼女は勢いよく壁に向かって走った。こげ茶色の棒の間にはちかちかと光が見える。きっとそこに出口があるのだと信じ走る足を止めなかった。

緑の床は走るたびに足裏がくすぐったかったが、痛みもなく平坦な道だったため走りやすすぐに壁の所までたどり着いた。だが目の前には壁は見当たらず、壁と思っていたのものは焦げ茶色の大きな棒が床から伸びていた。それがずっとずっと奥のほうまで何本も連なり伸びていたせいで壁だと錯覚してしまったのだ。

それに、そこは天井からの光が届いていないのか薄暗さとひんやりとした寒気を感じる。

足を一歩踏み出す。が、足裏か伝わる感触が先ほどまでの緑の床とはまるっきり違う足元を見てみると緑の床と茶色の床が混ざっていた。しかも、その床を踏むたびに足が床に沈みグチュっと音が鳴る。

彼女は、驚き足を引っ込めると床には、彼女の足跡がくっきりと残っている。このまま進むと足だけじゃなく体まで沈んでしまうのではないかと不安になる。

だがこのままここに留まればずっとこのまま前に進めば出口があるかもしれない。ならば、彼女の選択肢は進むしかない。勇気を振り絞って一歩、また一歩と足を動かす。床はグチャグチャと音を出し足が少し沈む。怖い、だがここで止まってしまったら何時まで経っても外には行けない。幸いにも茶色の床以外にも横に伸びた茶色の棒、灰色の硬くつるつるした床が足場となってくれた為、時間はかかったが先に進めるようになった。

どうにか、茶色の床を越えることができた彼女は安堵した。茶色の床を越えた先にあったものは、さらさらと水が流れているところだった。その周辺の床には先ほどの茶色の床を歩いたときに足場にしていた灰色の床に見えた、でも大きさが違うここにあるのは大きいものあれば手に持てるほど小さいものまである。


床に目を向けているとちゃぷんと音が聞こえた。音が鳴った方へ視線を向けても何もいない。よーく目を向けると水の中にてらてらと光る何かがいた、それに注目しているとそれがいきなり水から飛び出てちゃぷんと音を立てまた水の中へ戻っていく。小さな飛沫を上げるその物体を不思議そうに見ていたら、ぐ~と彼女のお腹の音が鳴る。転生してから何も食わず飲まずで歩き回っていたからお腹も空くだろう。まずは、水分を取るために水辺に近づきそっと顔のぞかせる。先ほどの水飛沫をあげるものはいない、水面には、彼女の姿が映しだされた。前の世界ではまともな食事はなく生きるための必要最低限しか与えられなかったためいつも瘦せこけた見た目をしていた。彼女もそれが普通と思っていたので改めて本来の姿を見た彼女は驚きを隠せなかった。しばらくするとぽちゃんと音ともに水面に映る自分の顔がぐにゃりと歪む。いつの間にか彼女の覗く水面下で動く物体は光を反射してきらきらと彼女に魅せている、飛び跳ねたりキラキラと次から次へと彼女の前を動くそれに夢中になっていると遠くからガサ、ゴソと一定のリズムを刻みながらこちらに近づいてくる。

「今日は、もっと下流の方で狙ってみるかなぁ最近肉も魚も食えてねえからな~さすがにいっぴ、きは…って、ん?…は?え、え…」

カランガコンっと物が落ちた後、間髪入れずに大きな叫び声が辺りに響く遠くの天井には小さな影がいくつも飛び跳ねておりさらに影が小さくなっていく。彼女も突然の大きな音にびっくりして固まってしまった。

「お、お前ってか君、なんでこんなところに人がいるんだよ!!しかも…ふ、ふくっ、服!着てねーじゃん!?」

俺何も見てねえから!と彼女の前に現れた少年は顔真っ赤にし極限までに目を瞑り更には両手で顔を隠しあわあわしている。一方、彼女の方はというと突然現れて大きな声を出したかと思えば次に喋る言葉は鳥のさえずりよりも小さく弱々しかった男をジーっと見つめていた。

少年は、彼女からの反応がなくちらりと見るが彼女がこちらを見つめているのに気が付き更に顔を赤らめる。


しばらく何もしゃべらない静かな状態が続いた。先に静寂を破ったのは彼女だった。

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