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先ほどまで激しい橙色に包まれていたのに今はとても眩しい、でも熱くも冷たくもない。
暖かい場所。
〈おかえりなさい早かったわね〉
〈早速貴女の話を聞かせて頂戴〉
〈まずあなたが一番最初に貰ったプレゼントでしょう、名前のことよそれに好きな食べ物は?それに好きな本の物語とか言葉とか。〉
〈あ、きれいなお花とかも聞きたいわ、勿論大切な人とかも〉
鈴のような音だけが聞こえるが周りには誰もいない。
どうだったと投げかけてくる問いに答えようと、聞こえてきた綺麗な音を真似てみるも拙い音しか出なかった。
それもそのはず、濁音が混じった言葉とは言えない音、表情も虚ろで正気がない。見た目は生前と変わらず細い金色の糸、青白い柔肌、肉はなく皮だけで骨、臓器を守っているかのようなボロボロな魂の器
鈴音の主の前にいるのは生前、どのような仕打ちを受けてきたのか一目でわかるほど目も当てられない酷い様をしていた。
〈何もないの〉
〈そう…〉
また、鈴が鳴るそれを真似てみても思い通りの音は出なかった。
それ以降も鈴が鳴る。
〈せっかく私の愛し子が帰ってきたのにこんなつらい報告ではだめよ〉
〈私の祝福を受けた愛し子たちはみんな幸せになるはずなのに〉
〈私の仕事はあなた達の過ごしてきた生涯を記録しなくてはいけないのよ、それなのに〉
〈こんなの可哀想すぎるわ〉
段々と弱くなっていく音、だが何かをひらめいたのかすぐに音色は戻っていく
〈そうよ、もう一度別の世界でやり直してみましょう〉
ちょうど、試してみたい世界があるの、緑も豊かで風も穏やか、でも前に貴女がいた世界より危険は多少あるけれど、それでも生きる術が沢山ある所よきっと気に入るわ
と、興奮した音が次々聞こえてくる。
〈前の世界では、神聖な力が使えるよう祝福を授けてしまったのが逆に人間にとって恐怖を感じてしまう対象になったのかしら、今度の世界はそれがないとも言えないから別の祝福を貴女に贈るわ〉
貴女に一人で送り出すのは怖いから私の眷属であるこの子を連れて行ってあげて
この子はまだ概念だけの存在だから貴女が新しい世界に降り立ち、この子の存在を定義した時、あなたを守り導く祝福となるでしょう
〈さあ、いらっしゃい〉
目の前に大きな手が差し出される。
この感覚を覚えている。
自分の体より鈴音の主の指の一本のほうがはるかに大きい。
数年前も祝福とともに優しく包み込んで新たな世界へと送ってくれた。
そして今回もボロボロの体を優しく包み込みそっと撫でてくださる。
鈴の音が耳に入ってくるたび次第に意識は遠く瞼も重くなる
『めがみさま』
鈴音の主を思い出した時、完全な眠りへと落ちていった。
〈今度はこの子が怪我無く無事に生涯を終え、私のもとへと帰れるようにしてあげないとね〉
〈この子が新たな世界に降り立って一番最初にが口にしたものがあなたの魂の器になるの〉
〈あら、待ちきれないの?もう少しの辛抱だからお待ちなさい、あなたはまだ肉体を得ていないけれどすぐにこの子のそばで守れるようになるわ〉
〈だからあなたも今はお眠りなさい〉
暖かな光が段々遠のいていき新しい世界の入り口に近づいていく
すぅすぅと寝息を立てている彼女は先ほどまでボロボロだった体が今では女神さまの優しい手の中で本来の美しさを取り戻していく、その横で寄り添う様に勇敢な概念が眠っている
〈おやすみなさい私の愛しい子たちよ、そして、いってらっしゃい〉
〈次は貴女とちゃんとお話できることを楽しみにしているわ〉




