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「あ、あの…あまり見ないでいただけませんか…」
セリアからの問いかけで、レオンは自分が長い時間セリアを見つめ続けていたことに気がついた。
濡れた女性を見続けるというあまりにも不躾な自分の態度に顔が青ざめる。
「す、すまない!!」
慌てて顔を背けるも、セリアの顔は真っ赤だった。
「驚かせてしまって申し訳ございませんでした…助けようとしてくださり、ありがとうございます。」
「…見ていたのか?」
先ほどの押し問答を見られていたようで、レオンは思わず苦虫を噛み潰したような顔になる。
「はい、他国の人間の子供のためにこの海に飛び込もうとするなんて、あなたはとてもお優しいのですね。」
ニコリと微笑むセリアに、レオンは観念した。
仕事中の真剣な眼差しは凛とした花のように。
豊かな髪を揺らして波と戯れるように泳ぐ姿は、まるで童話の中の人魚のように。
子供を撫でる優しい笑顔は女神のように。
「さぁ、積み荷も終わったし今日の仕事は終わり!宿に行こう!セリア様、今日はありがとうございました、また明日の出発の時に。失礼します!」
ニールは慌ててレオンの腕を引っ張り、予定していた宿屋に連れていった。
「レオン様!まさか…」
「あぁ…」
ウィッグを外し、鋼の海神と呼ばれた男は見るもの全てを狂わせるような笑みを浮かべながら赤面していた。