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6日目の朝


教会の控室でセリアはアレンジしてもらったエンパイアドレスを見て、恍惚のため息をついた。

シンプルな、パフスリーブがついたドレスは、レースと真珠が飾られ華やかなものになっていた。

お揃いのベールにはティアラがひかる。

けして下品ではないその輝きに、このドレスや袖を通せることがとても光栄だった。

着替えたセリアは髪型とメイクをしてもらい、鏡の中の自分を見る。

まるで別人のように美し女性がいた。

正直、母も祖母も美しい人だったため、もともとそれなりに整っていたとは思う。しかしいま鏡の中にいる人物はまるで肖像画の絵のようだった。


「セリア様、なんでお美しい…」


「あなた達の腕が良すぎるのよ」


「そんかことありません!私たちはセリア様の良さを引き出すお手伝いをさせていただいただけです!」


「そうです!スッとした鼻も、大きな瞳も、長いまつ毛も、ふっくらとした唇も全てセリア様の持って生まれたものです!」


「豊かな藍色の髪も、海のような瞳も全て!」


着飾ってくれた侍女たちが鼻息荒く熱弁してくるので、セリアはあ、ありがとうと返すことしかできなかった。


「セリア、準備はできたか?」


扉の向こうからレオンの声がした。

できてますよ、と扉を開ける。レオンの瞳がセリアを上から下まで見下ろしたあと、全ての動きが止まってしまった。


「レ、レオン様…?」


そっと腕に触れると、レオンはビクッと一歩後ずさった。セリアはショックで、涙目になる。


「に、似合ってないですか…?私としては、今までで1番綺麗かと…」


化粧でさらに大きくなった瞳が潤むと、レオンが大慌てで首を振る。


「とても美しい!あまりの美しさに、本気で女神かと…」


「んっふ」


1人の侍女が耐えかねて笑い声が漏れてしまう。

不敬罪で罰せられかねないが、屋敷から連れてきた侍女達はその程度では主人が首を切らないことを知ってる。そして、この主人がセリアにベタ惚れなことも知っている。


1人が笑いだすと、他のものも絶えられないとばかりに部屋の中は笑い声が響いた。


「笑うな!おい!腹を抱えるな!」


赤面しながら使用人たちに怒鳴り散らすレオンの姿は、なんとも滑稽だ。

しかしセリアだけはほっと安堵した笑みを浮かべていた。


「よかった…。」


その美しさに、皆が笑いを止めて息を呑んだ。


「すまなかった。セリア、今までで1番美しい。まるで海の女神のようだ。」


「…海の女神!」


皆が納得したようにうんうん、と頷いていた。


「レオン様も、とても美しいですね。」


レオンは薄いシルバーをメインにして同系色でまとまった装いをしていた。彼の黄金の瞳がキラキラと光り、セリアは彼こそ天からの使いなのでは…?と思うほど輝いていた。


「セリア、全部口に出てるぞ。俺は嬉しいが…」


慌てて手で口を塞ぐも、全て書かれており、周りから温かい目で見られてしまう。


「鋼の海神と海の女神の結婚…」


侍女の1人が恍惚とした表情でうっとりと呟いた。

その一言は外で待機していた記者にも伝わりまたたく間に広がり、本日の教会での祝福を一目見ようと多くの野次馬が集まった。



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