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5日目の朝、侍女たちは苦悶の表情を浮かべていた。
今日ばかりはセリアに好きなことをさせてあげられないのだ。
明日は教会の宿泊と、パーティ日なのだ。朝から動くため、前日からピカピカに磨き上げなければならない。楽しそうに真剣に、朝の読書をしているセリアに伝えるのがとても心苦しかった。扉の前で誰がノックするのかと押し付け合っていると、中から扉が開く。
「どうしましたか?入ってください」
セリアに促され、侍女たちが数名入っていく。
「申し訳ございません。集中して読書をしていましたので…」
「大丈夫ですよ、気を遣ってくれたんですね。皆さんが来るお時間に気が付かずすみません」
非を謝れば、逆に謝られてしまった。
「それでは、本日は明日に向けてセリア様を磨かせていただきます。」
「はい、お願いします。」
セリアは美容に良い入浴剤のお風呂に入り、全身をマッサージされ、髪はツヤツヤに。果実が入った美味しいお水を時々もらい、明日に響かないようにローカロリーな食事を楽しんだ。
「思っていた以上に快適だったわ…」
夕方、少し遅めのお茶会の時にセリアはレオンにこぼした。
「もっと痛くてしんどいのかと思っていたら優雅にお風呂に入ってマッサージされてしまったわ…おかげでいつもよりや体も軽いし頭もスッキリしてます…」
お茶会のメニューもいつもとは異なり特別仕様だが味に妥協はなく、とてもおいしかった。
「そうか、侍女たちがセリアは元が美しいからそこまでゴタゴタする必要がなくて羨ましいと言っていたな。」
「そ、そんな!」
セリアは恥ずかしいような嬉しいような複雑な気持ちになった。
「特に腹部が引き締まっていたと聞いた。それはやはり泳ぐことが多いからなのか?」
「ちょ」
「代わりに少し背中が凝りがちとも言っていたな…」
「レオン様!デリカシーが無さすぎます!!」
自分の体のことを真面目に分析されて、セリアは顔から火が出そうだ。侍女たちは将来のことを見据え、レオンと婚約する女性の健康状態などを話す必要があった。そのため話をされてることは構わないが、それを面と向かって自分に言われるのは流石に恥ずかしかった。
「あぁ、すまない…」
おそらく分析は彼の癖なのだろう。気まずそうに頬をぽりぽりとかいていた。
「もう…!」
セリアは拗ねたふりをしてみた。自分が怒ったらこの人はどんな反応をするのか見てみたかったのだ。
するとレオンはすぐにそれがふりだと見抜いていたが、あえてのっかった。
「どうしたら機嫌を直してくれますか?」
セリアのそばで片膝をつき、手のを取る。
まるで王子様のような仕草に、最近レオンはすっかりスキンシップにも慣れてしまい、内心悔しくなる。セリアはツンとした表情のまま
「夕食の前にレモンティーが飲みたいですわ」
と高飛車な令嬢のように答える。
「喜んで作らせていただきます。我が姫。」
レオンは破顔して手の甲にキスをした