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「ここがセリアの部屋だ。」
淡い水色が基調となった、可愛らしい部屋だ。
「素敵…」
「気に入ってくれたか?」
「もちろん!!…ただ」
セリアは何か言いづらそうにしている。レオンが気に入らなかったのかと、カタログの取り寄せを考え始めたところで、意を決して口を開く。
「広すぎませんか?」
セリア個人が使う部屋だが、フォートリアの部屋三つ分くらいありそうだ。
「そうか?これでも手狭方かと思うが。」
「これが!?」
セリアはオーシアナにきて、レオンとの価値観のズレに少し焦っていた。
「お茶を淹れてくる。」
そういってレオンは部屋を出て行った。セリアは立ち尽くしてその場を動けなかった。
大きすぎるお屋敷。広すぎる部屋。慣れないドレス。そのどれもがセリアには重く感じた。
ふと、手に持っていたサンドイッチを思い出し、椅子に座って頬張る。すると、食べ慣れた味がした。
「…オリーブだわ。」
オリーブがアクセントになった、胡椒がきいた鶏肉のサンドイッチ。故郷の味に涙が出てきた。カゴの中に手紙が入っていることに気がついた。
『レオン様の指示で作らせていただきました。落ち着けたら幸いです。内緒ですよ』
その言葉で、とうとう涙腺は決壊した。
彼はちゃんとわかってくれている。それが嬉しかった。
ノックの音に返事をすると、扉が開いた。
泣きながらサンドイッチを食べるセリアをみて、レオンはギョッとした。
「だ、どうした?美味しくなかったのか?」
「とても…美味しいです。」
「なら部屋が気に入らないか?」
「いいえ、私の部屋と同じ水色に揃えてくださって嬉しいです。」
「では誰かに何かされたか!?」
「皆さんいい人です。嫌なことなど何もありません!あなたも私を気遣ってくれてたのに…気が付かないで勝手に落ち込んで…自分が嫌になってしまいます…」
なんだかよくわからないが、レオンはセリアを抱きしめ背中をさする。ひっく、ひっくとしゃくりあげていたセリアも少し落ち着き、すみません、大丈夫です。とレオンから離れる。が、レオンの服はセリアの涙やら鼻水やらがついていて再びすみませんすみませんと謝罪繰り返した。
「気にしなくていい。落ち着いたか?」
「はい…」
「慣れない地に来て大変だろうが、1週間よろしく頼む。」
「はい、よろしくお願いします。」
「では、一緒にお茶を飲もう。」
「はい!」