表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/45

34

貴族の国ではないため、フォートリアの女たちの愛情表現は割とストレートである。それはセリアも例外ではなかった。


レース前、船の点検をしていたレオンはニヤニヤが隠せなかった。


「浮かれてんなぁ兄ちゃん」


「顔引き締めとけヨォみっともねーぞ」


周りの参加者にガラガラと笑われてしまう始末だ。


ゴンドラレースでは4チームに分かれて予選を行い、それぞれ一位だった4人が決勝をはしる。


まずは予選を勝たなければ。

レオンはふーとため息をつき、顔と気持ちを引き締める。


始まりを告げる、トランペットの音が高らかに響き渡る。


波飛沫が舞い、男たちは切磋琢磨し合い勝者が決まる。レオンが出るのは3レースめ。2レース目の船が進み、準備を始める。道を確認するため正面を向くと群衆から少し離れた王族席で、セリアが手を振っていた。軽く手をふり返すと、セリアががんばれと口をパクパクさせていた。


やる気に満ち溢れたレオンは、予選をぶっちぎりで通過した。たとえ小舟でも、船の扱いで右に出るものいなかった。彼は海や船のことに関しては天才である。そのため、海軍大将まで上り詰めたのだ。海神はそんな彼への尊敬からついた名である。


船を手足のように操り、レースで活躍する美形は、街の女たちの注目の的だった。



決勝戦、レオンが入場すると、一際大きな歓声が上がる。セリアは、それに少し面白くなさそうな顔をしてしまい、マリノに注意されてしまった。


レースが始まると、レオンは徹底マークされていた。1人抜け出されては止められない、そう考えた他の参加者は、3人がかりでレオンを止めに来た。直接相手の船を攻撃などをしなければ、多少船同士のぶつかり合いなどは許容されている。

しかし、レオンはそれすらも意に介さずに進んでいく。結局、レオンは最初から最後までトップを譲らないままゴールテープを切った。


大きな歓声と、花吹雪が舞う。新たな勝者の誕生に、豊漁祭に参加する国中の人が沸いていた。


「いやだ、完敗だよ。」 

「その船燃料でも積んでんのか?」

「来年は出てくんなよ!」


負けてしまった参加者たちも、軽口を叩きつつもレオンを讃える。


「ありがとう、3人できた時は正直焦った。」


嫌味かよ〜!!と肩をばんばんと叩かれ、4人で笑いながら握手を交わした。


そして、表彰式。

今年は国王が見に来ているため、国王から勝者のリングが渡される。フォートリアの伝統的な意匠に、真ん中に一つ、大ぶりな真珠が嵌め込まれている。


皆、リングの行方を固唾を飲んで見守る。

何人かは予想ができていたが、予想通りであれば彼は自分たちとは違う立場の人間であるため、今後は気軽に接することは難しいかもしれないと、寂しくなる。


「セリア」


王族席にいたセリアに声をかける。ニコリと笑ったセリアはレオンの目の前に移動する。


「この勝利を貴方に。」


跪いてリングを差し出し、愛を乞う姿はまるで絵画のワンシーンのようであった。


「セリア、俺と結婚してください。」


「はい、喜んで」


レオンの手を取り、額にキスをする。

その瞬間、今日1番の歓声が国中に響いた



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ