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豊漁祭4日目
4日目は芸術の日だ。
昨日屋台がずらりと並んでいた広場では踊りのコンテストを開催している。異国の踊りや、伝統的な舞など様々なものがエントリーしている。
運河沿いには色とりどりのキャンバスが並び、投票制で1番を決める。今年のテーマは魚だ。忠実に描かれたものから幻想的な色合いのものなど、どれも甲乙つけ難いものになっている。
沿道に立ち並ぶ柱には、女性たちが刺繍した旗が掲げられている。
それぞれの家の前では子供たちが、自分で作ったアクセサリーやおもちゃを売っている。
小さなものから大きなものまで、様々芸術が入り乱れるのが4日目。
そして4日目の夜は海の灯火を灯す。
浜辺に並べた貝殻の蝋燭に火をともし、皆で感謝や願いを祈るのだ。
火を灯すのは巫女の役目。
一つ一つ、皆の願いが届くように心を込めて点火していく。
最後の一つが点火されて、セリアがはけていく。皆が祈りのために頭を下げた時、物陰から手が伸びる。
セリアの腕を掴み、暗闇に引き摺り込もうするが、掴んだのはゴツゴツとした硬い腕だった。
「まぁ、今日を狙うよな。」
掴んできた腕を掴み返し、捻り上げると情けない声を出す。
セリアからこのイベントを聞いていたレオンは確実に狙いに来るだろうと読んでいた。
おそらく主人はあまり謀に長けていない。そこまで見抜いていた。
待機していたフォートリアの兵たちに捕らえられ、男たちは連行されていった。
全て、少し離れた暗がりで行われていたため浜の外から灯火を眺める国民たちは気が付かなかった。
セリアは震えるかは体を抱きしめ、大丈夫、大丈夫と呟いていた。どんなに万全でいたとしても、やはり怖いものは怖い。そんなセリアをレオンは後ろから抱きしめ、セリアの呟きに合わせた大丈夫、大丈夫と繰り返してくれた。
しばらくすれば震えもおさまっていたが、セリアはもう少しこのままでいたかった。