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フォートリア王国豊漁祭の前日。
日課のお茶会で、レオンが少し歪に、しかし可愛く包装された箱を差し出した。
「これを、明日からつけてくれるだろうか?」
セリアは受け取り、箱を眺めリボンを撫でる。
「これは、あなたが包んでくれたのですか?」
「あ、あぁ。上手くできなかったが、街の子供達に教わって…」
「…嬉しい」
彼の思いやりが胸に広がり、セリアは温かい気持ちになる。そっと包みほどき、箱を開くと上品ながらも華やかなバレッタが入っていた。
レオンが自ら工房に足を運び、職人と相談して作り上げた、世界に一つだけの髪飾り。セリアは手に取り、パチンと、髪につけてみる。
「ありがとうございます。…似合うでしょうか?」
「…とっても」
「よかった…。あの、わたしからも、これを。」
セリアもおずおずとスカーフを取り出す。
ライオンの横顔と碇をメインとした刺繍になっている。
「もしかして、俺がレオンだから?」
「安直すぎたかしら…?すごく素敵な名前だと思って…」
「嬉しい…!」
レオンはスカーフを首に当て、似合うだろか?と尋ねてくる。この顔で似合わないものはだろう。と思いつつ、褒めると本当に嬉しそうに笑った。
「まさかもらえるとは思わなかった」
「そんな、わたしだけいただくわけにもいかないですし!」
「じゃあ、セリアは俺が用意するって言わなかったら、なってくれなかったのか?」
「…………いいえ」
少し寂しそうに問いかけられると、嘘はつかない。セリアの否定で再びレオンは笑顔になる。
(鋼の海神なんて嘘じゃない…コロコロと表情の変わる人ね)
おそらくオーシアナ国の人間が聞けば、全員が嘘だと思うだろう。彼は船を一つ落とす時ですら、眉毛一つ動かさないのだから。