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お待たせしました。
オーシアナ国 公爵邸
「いったいなんなのよ!」
公爵家の次女、カミラ・グランディーヌは机をバンっと叩きつけた。
彼女は昔からレオンと結婚すると思っていた。家格の釣り合いも年齢的にも、自分が1番適していると思っていたからだ。公爵家に姉と自分しかおらず、少し離れた姉は幼馴染の侯爵家の次男を婿にもらい、いずれ家督を継ぐ。ならば残りは自分しかいないと思っていたし、周りもそう扱っていた。あの美しい人の隣に立つためなら。そう思いマナーも教養も血の滲む努力をしてきた。
そして先月、発表された婚約者は自分ではなく、小国の王女だった。
それからのカミラの荒れ用は、見ていられなかった。
お茶会もパーティも出ずに引きこもり、周りの使用人に当たり散らす毎日。
しかし1週間ほど前からパタリと病み、ふらりとどこかへ出かけるようになった。ニヤリと、底意地の悪い笑みを浮かべて帰宅するのだ。
しかし、今日のカミラは再び爆発していた。
「なんで1人も上陸できないのよっ…!いくら要塞島といえどありえないわ!」
ぶつぶつと何やら不穏なことを呟くカミラ。
実は、この1週間街のゴロツキたちに声をかけ、フォートリアに侵入するように金を積んで命令をしていた。
海賊のような輩もいたはずだ。なのに帰ってくる答えは近づけずに引き返すか座礁して行方不明のどちらかだ。そのうち、無理な願いだと受けるものもいなくなった。
「……もう手段は選べないわ……」
カミラは、次の定期航路の日を調べてていた。そしてその船に、刺客をもぐりこませるのだ。
近く、フォートリアで大きな祭りがある。皆が浮き足立つ時は、隙ができやすい。しかもその時に王女が1人になるタイミングがあるらしい。不慮の事故として、彼女には去ってもらおう。
鏡に映るカミラの姿は、、もはや恋する乙女とは形容し難かった。