20
日にちが決まってからは、フォートリア国民は準備で大忙しである。
しかし国中の皆がこのお祭りが大好きなため、誰1人としてこの忙しさに不満は漏らさなかった。
レオンも街に降りて、子供達と一緒にガーランドを作ったり、男達と柱を立てたり、セリアと街の女性で作ったお昼ご飯を食べたりと、楽しく準備の手伝いをした。
セリアも海の巫女としての祭事の準備もしつつ、街の準備も確認し大忙しだ。流石にこの期間はお茶の時間は取れなかったが、国民と対等に触れ合うレオンを見て、すっかり心惹かれていた。
刺繍上手なアルチーノおばさんがセリアに問いかける。
「レオンはあんたの恋人かい?」
「!?いたっ」
セリアは針で指を指してしまい、思わず顔が歪む。
バカだねぇ、と言いながら手当をしてくれるアルチーノおばさんにおずおずと尋ねる。
「そう見えますか?」
「いや、見えない。だけど2人ともお互いを見る目がねぇ。」
「目…?」
「それはそれは、大好きって目をしてるよぉ」
「うそ!!」
もう刺繍どころではないセリアは一度針を置いて深呼吸をする。
「ライバルは多いよ、きをつけな」
声を一層小さくしてセリアに耳打ちをする。セリアは浮き足だった気持ちが一瞬で冷め、真顔でアルチーノおばさんの方を向く。
「ど、どういうこと?」
「未婚の娘がたびたびスカーフを渡してるよ。一枚も受け取ってないみたいだけどねぇ、あんたも早く渡さないと痺れを切らして受け取っちゃうかもヨォ」
うひひ、と楽しそうに笑うアルチーノおばさんに、セリアは頭を殴られたかのような衝撃を受けた。
(それもそうよね…顔が良くて、分け隔てなくみんなと接してくれる人だもの…)
セリアの胸は、バクバクと大きな音を立てていた。