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レオンは目立つ銀の髪と金の瞳を隠すため、茶色の前髪が長くセットされたウィッグを被り、フォートリア行きの商船に乗り込んだ。
船長に話はつけてあるが、見習いということで一応仕事をする。船長は顔を青くしてたが。
普段から船に乗るのは日常茶飯事なので、特に不自由はしなかった。
下っ端たちともうちとけたころ、ようやく船がフォートリアの港に着いた。
貿易用のこの港だけは潮の関係で特定の時間ならばすんなり航海ができるらしい。
だが、時間を間違えるとそれはそれは悲惨なことになるという。
その時間も、フォートリア側の人が風と海の状態から合図を送ってくれなければわからないのだという。
それでもこの国と交易をするのは、それだけこの国の品物に魅力があるのだ。
港に着くと、簡素なワンピースを着た小柄な女性がペコリとお辞儀する。
藍色の髪と瞳を持つその女性は、テキパキと積み荷を下ろす指示を出す。
「あら?あなた初めて見る顔ね?」
突然声をかけられ、レオンは肩をびくりと震わせる。
「やだごめんなさい!驚かせてしまったわね…」
おろおろとした表情の彼女に、大丈夫と小声で告げれば、ホッと胸を撫で下ろした。
「初めまして、私はセリア・フォートリアです。あなたのお名前は?」
名を尋ねられたが、衝撃でそれどころではなかった。まさか、こんな異国の人間が出入りする港に王族がいるとは思わないからだ。