15
振られたと勘違いしたレオンは、その日から猛アタックを開始した。
オーシアナで流行りの布やドレス、アクセサリーをプレゼントして、顔を合わせれば好きだと伝えた。
女好きの友人曰く、プレゼントと愛の言葉でイチコロらしい。
しかしセリアの反応はいつも、思い描いていたものとは違った。
困ったように笑って、時々ため息をついていた。
あの日の紅茶のように、花束のように、喜ぶ顔が見たいだけなのに。
一方セリアは、お互いのことが知りたいと言ったはずなのに、一方的に送られてくるプレゼントに辟易していた。
悪気がないのはわかっている。だからこそ断りにくい。プレゼント攻撃が1週間ほど続いたが、痺れを切らしたセリアはレオンを誘って港町に視察に出た。
「誘ってくれてありがとう」
レオンはついに愛が通じたのだと喜んでいたが、セリアの瞳は冷め切っていた。
セリアが城を出て街を案内していると、女性から声をかけられる。
「あらセリア様!こんな色男連れてどこに行くの?」
「こんにちは、こちらの方は護衛です。街の視察についてきてもらってるの。」
オーシアナ国の王弟とは言えず、咄嗟に嘘をつく。
「そうなのぉ?じゃあ2人でこれでもお食べ!」
パン屋の婦人は、レモンのパウンドケーキを持たせてくれた。
「ありがとう!私これ、大好きよ。」
「知ってるわよ。貴方がちーさいころから好きだと言ってくれたんだから、うちでずーっと焼いてるのよ」
レオンは嬉しそうにパウンドケーキを受け取るセリアを見て、私の贈り物にはいつも困った顔しかしなかったのに。と呆然とした。
さらに街を歩くと、小さな子ども達が集まってきた。
「せりあおねぇちゃん!このまえは、おどりおしえてくれて、ありがとう!」
子ども達がどーぞ、と色とりどりの花を一輪ずつ渡してくれる。時には根っこごとついて泥だらけのもの持った。それは、レオンが送った大きな花束とは比べられないほど質素だが、セリアは目を見開いて、頬を赤くさせながら受け取った。
「みんな、ありがとう。どうしたの?このお花」
「あっちのはなばたけでつんできた!」
「まえにはなすきっていってた!」
「うれしい?!」
「えぇ、とっても。」
宝物のように大切に花を持つセリアを見て、レオンは雷に打たれた気持ちだった。
子ども達に別れを告げたセリアに、レオンは一つ提案をした。
「どこかで、お茶を飲みませんか?貴方のおすすめのお店を教えてほしい。」
「…喜んで」