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「あぁ、やはりこの服で正解だったか」
当然というの顔で頷くレオンにセリアはどうして!と思わず声を荒げてしまう。
「お部屋には上等な服を用意したはずです!なのになぜそのような…」
「貴方なら、食事の時は畏まらない方が好きだと思ったからだ。」
「えっ…」
「先ほどの美しいドレスもとても似合っていたが、私は今のような姿の貴方が、とても好ましい。」
少し頬を赤くさせながらも、まっすぐと目を見て伝えてくれるレオンに、セリアは我慢を問いかけた。
「此度の婚約は、政略結婚ですよね。あなたはウチを乗っ取りたいのでしょう?そのための甘言ですか?油断させるおつもりですか?」
もともとまっすぐな性格のセリアには、回りくどいことができない。ストレートすぎる問いかけに、レオンは苦笑する。
「本当にあなたを籠絡させるつもりならば、そこでハイと言わないだろう」
たしかに、とセリアは思ったがこの人が嘘をつくとは思えなかった。
「…政略結婚というのは、建前だ。私は…その…」
言葉尻が小さくなるレオンに、一言一句書き漏らさないように距離を詰める。
「そもそもあなた…なんで私のことをそんなに知っているのですか?紅茶のことも、服のことも…」
「そ、それは…」
「セリア様、このようなところで詰め寄られてはレオン様も困ってしまいます。まずは食事にしましょう。お時間を過ぎてもお二人が来ないので、シェフが困っていますよ。」
扉が開き、リドが2人を中へ招き入れる。
準備していたシェフのフランツが涙目だ。
セリアはモヤモヤとするも、レオンが手を差し出してきたので、素直にエスコートされ席に着く。
しかし2人の気まずさは解消されず、目を合わせることもなく黙々と食事をして解散した。