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「す、すまないのだが、離れても良いだろうか…」
重なった視線を逸らし、肩に置かれた手を振り払うこともせず、セリアに許可を取るレオンから、そっと距離をとる。
「ご、ごめんなさい…」
セリアの顔も赤く、2人で茹でたこのようになっているとノックの音が聞こえた。
セリアはその音に縋るように扉を開けると、リドが立っていた。
「失礼いたします。王弟殿下、この度は申し訳ございません。お召し物を用意してありますので、予定より早いですが滞在する間のお部屋へご案内します。メイド長はセリア様を頼みます。」
2人はそれぞれ自室に戻され、夕食に向けて着替えをすることに。
セリアはメイドにドレスを解いてもらいつつ、ふと鏡の自分を見る。
(わたし、もともと婚約破棄をしてもらおうと思ってたのよね。だったら、彼の前で着飾る必要ないんじゃないかしら。)
違う色のドレスを着せようとするメイドの手を止めさせ、普段着ているワンピースを手に取る。
水色のシンプルなワンピースは生地は上等だが、高価な身分の人を出迎えるには不充分だろう。
しかしセリアは迷うことなく袖を通す。
(もしかしたら、わかるかもしれないし。)
私がこんな無礼な姿で出れば、きっと彼も本性を表すだろう。
先ほどのこちらを気遣い、目があったら赤面し、慌てている姿が腑に落ちないが、もしかしたら呆れて1発婚約破棄かも!と思い食堂へむかうと、扉の前に白いシャツにトラウザーという、なんとも簡素な格好な男が立っていた。