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4 それは魔術の呪いなのか

 白い汚染の発生についてはいまだに謎が多い。

 これらがカビや粘菌に似た何かである事。

 しかし、全く同じとは考えられてない。

 繁殖力の異様な強さ。

 何より、人を含めて生物を化け物に変化させる性質。

 これらをもつ存在が、一般的に存在するカビや粘菌と同じであるわけがない。



 これらが蒸気機関の登場にあわせるように発生し。

 瞬く間に世界に拡がっていった。



 それは、新たに切り開かれた場所で拡大していった。

 蒸気による産業革命が起こった数百年前。

 蒸気機関の設置や、工場の建設などによる土地の切り開き。

 草原や森林の開拓。

 鉱山の採掘。

 こうして人が入った場所で、白い汚染は発生していった。



 これについては魔術師や魔女による呪いだと言われている。

 当時、こういった土地へ入る事に反対したのがこれらだった。



 昔からの禁足地。

 呪いのかかった土地。

 入れば誰かが死ぬ場所。

 工場の設置などに都合の良い場所の中にはこう呼ばれていた所があった。



 こういった地域では古くから住み着いてる者達がいた。

 これらは工場建設などの話に不安や懸念を抱いていた。

「あそこは昔から何か良くない事が起こる」

「踏み込んだ者達は苦しんで死ぬ」

 こういった事を口にした。



 特に地元にいた祈祷師と呼ばれる者達は警戒と警告を告げていた。

 地元で薬草を作ったり、豊作を祈願したりする者達だ。

 土着の信仰としてこういった者達がいる。

「迂闊に近づかない方がいい。

 何があるか分からないのだから」

 彼等はおおむねこのように開発への反対を口にしていった。



「それは迷信だ」

 警告はこの声によって否定された。

「我らが女神、聖母と神の子はそのような事は仰っておりません」

 そういって祈祷師や地元の者達の意見を否定した。

 唯一絶対の女神と、その代理人である聖母を崇拝する聖母教。

 この宗教の教会は、土着の信仰の多くを否定していった。



「科学的ではない」

 科学者達も同意見だった。

 蒸気機関によって注目された科学者達。

 世界のあり方を探る彼等もまた、聖母教会と同じ意見を述べた。

「昔からの言い伝えなどに、何の根拠がある?」

 再現されない、実際に存在しないものは否定する。

 そんな姿勢の科学者達は、古くからの言い伝えを悉く否定した。



 これらの助けや後押しを受けて、政府は開発・開拓を推進した。

 産業の拡大は国力に直結する。

 それを阻む要素など不要だった。

 反対の全てを蹂躙し、鉱山や工場が出来上がっていった。



 その場に住んでいた者達は、これらを不安そうに眺めていた。

 本当に大丈夫なのかと。

 そんな彼等の前で、森林が切り開かれ、道が通り、工場が建てられていった。



 こういった場所から白い汚染が始まっていった。

 それは最初、建設にたずさわる作業員から始まり。

 やがて都市にも蔓延していった。

 拡大は早く、対応も出来ず、人々は白く染まっていった。



 危険と言われた土地に入った者達。

 彼等はある日不調を訴えた。

 1人2人ではない。

 その場にいた全員がだ。



 このうちの何人かが病院に運ばれていった。

 しかし、効果があるわけがない。

 原因も不明、当然ながら治療方法もない。

 ただ、ベッドの上で横たわらせるだけ。

 薬もあるが、それらを用いても意味がない。



 やがて運び込まれた者達の全身が白く染まり。

 病院内に拡がっていった。



 当然、医者や看護婦に事務員。

 入院患者に、来院していたその家族。

 これらにも感染していく。

 感染した者達は更に感染を広めていく。



 入院患者はともかく、そうでない者は自宅に戻るだ。

 そこで更に家族や近所にも感染していく。

 そして近所にいた者達は職場や学校へと向かう。

 そこで新たな感染が始まる。

 建設作業現場から白い汚染は一気に拡大していった。



「呪いだ」

 聖母教会は一言で断じた。

「森や山を切り開かれる事を阻止しようとした者達の呪いだ」

 問題が起こってるのは、地元にいる祈祷師や現地民が反対していた場所だった。

 だから、ここで起こった出来事は彼等による呪いだと聖母教会は断定した。

「迷信に陥り、邪教をあがめてる。

 そんな彼等が放った呪いだ」

 己の女神を唯一絶対とする聖母教会である。

 他の信仰を邪教と断定するのに何の躊躇いも持たなかった。




 土着の信仰が、山や森といった自然を信仰対象にしていたのも大きかった。

 彼等は身近にある自然を大事に、これらとの共存を唱えていた。

 こういった場所を神域としてる者達もいる。

 この逆に、決して踏み込んではならない危険地帯として禁域としてる者達も。

 この考えが逆手にとられてしまった。

「そんな大事な場所を守る為に、呪いを放ったのだ」

 教会のこの発言にある程度の信憑性を抱かせるには十分だった。



 かくて問題が発生した場所の近くに住んでいた者達。

 そこにいた祈祷師達。

 彼等の多くは糾弾され、殲滅されていった。

「彼等は呪いを放つ魔術師で、魔女だ。

 呪いを使う呪術師だ」

 こういって教会は祈祷師や土着の民を抹殺していった。

 後の魔術狩りや魔女狩りと呼ばれる活動が始まった。



 こうして各地から祈祷師達は消えていった。

 祈祷師達と共に生きていた者達も。



 しかし、それでも白い汚染が消える事はなかった。

 むしろ猛威をふるっていった。

 建設作業現場や都市から拡がった白い汚染は世界各地に拡大していった。



 汚染されてしまった作業員達もこれに加わる。

 病院にもいけない労働者達は、そのまま現地に放置されていた。

 そんな彼等はやがて怪物へと変化し、人々に襲いかかっていった。



「呪いはまだ続いている」

 聖母教会はこの状況をこのように定めた。

「死んだ彼等が怨霊となって呪いを広めてる」

 この教会の言葉を魔術狩りに勤しんだ者達は素直に信じた。

 事実かどうかも分からないまま。



 聖母教会はこの状況を打破するために祈りを続けた。

 唯一絶対の存在たる女神とその代理人である聖母に。

 しかし、効果があるわけもなく、白い汚染は拡がり続けた。

「女神への祈りが届いてないからだ」

 汚染が拡がる中で、彼等はただ祈り続けた。



 科学者達も懸命に研究を続けた。

 白い汚染の原因は何か、どうやったら止められるか。

 これらを調べていこうとした。

 しかし、そんな科学者達が真っ先に感染していく。

 研究室が怪物であふれるようになるのも時間の問題だった。



 かくて国も文明も崩壊し。

 生き残った人々は密閉された都市の中に潜むようになった。

「この呪いはいつ終わるんだ?」

 ため息と共に嘆きながら。





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