3 汚染が始まってからの人々の動き
世界が白く覆われて数百年。
カビや粘菌といわれる何かによる汚染は、留まる事を知らなかった。
繁殖しやすい熱帯や温帯は瞬く間に拡大していき。
大地は白く覆われていった。
これらは農作物などにこびりつき、枯らしていく。
他の植物にとって変わっていく。
これだけでも農地が壊滅する。
当然、食料の確保が出来なくなる。
もっとも、本当にカビなのか?
本当に粘菌なのか?
これについては未だに結論が出ていない。
そう見えるだけの、もっと別の何かなのではないか?
いまだに研究者達は答えを出せずにいる。
ただ、これらが深刻な問題をもたらしてるのは事実だ。
それに見た目や性質はカビや粘菌にも似ている。
それゆえに、人々はこれらをカビや粘菌と呼んでいた。
また、見た目の色から単純に呼び名を付けていった。
白い汚染と。
これだけでも一大事だが、問題は更に深刻だった。
この汚染は生物にもおよぶ。
動物、植物、そして人にも。
単にカビや粘菌が体に貼り付くだけなら問題はなかったかもしれない。
しかし、このカビや粘菌は思いもよらない性質をもっていた。
異形の存在への変化。
生命あるものを、怪物へと変貌させていくのだ。
怪物。
白く染まった者達はどれもがこうなった。
尋常じゃない怪力を発揮して。
汚染されてない者達に襲いかかっていった。
人類も例外ではない。
この汚染された者達からの襲撃によって、人類社会は崩壊。
白い汚染と呼ばれる現象から人々は逃げていく事になる。
少なくとも、これらが繁殖しやすい熱帯や温帯からは追い出されていった。
生きていく為に人は、寒冷地まで移動する事となった。
凍てつく寒さは人に厳しいが、白い汚染も塞いでくれた。
かろうじて温暖といえる、しかし寒さが厳しい地域。
この境界線の上に人々は移りすむしかなかった。
ここに新たな都市を造り、厳しい生活を始めていく。
また、自然と資源地帯に人は集まっていった。
迂闊に外に出ることが出来ないのだ。
資源の調達も難しくなる。
ならば、資源のある場所に住み着こう。
こう考えた者達が集まり、自然と都市が形成されていった。
特に炭坑には多くの人が集まった。
蒸気が用いられ始めた頃である。
新たな資源として石炭の重要性や必要性は上がり続けていた。
そんな石炭をまずは確保していった。
このため、炭坑を覆うように都市が造られていった。
この石炭から出て来る煤煙も求められていた。
立ち上る煙が汚染を遠ざけてくれる。
黒い煙は安全の象徴となっていった。
もっとも、これは白い汚染とは別の公害をもたらしもしたが。
白い汚染を遠ざけるために、自ら害をまき散らす。
そうまでして人々は白い汚染から逃れるために必死だった。
この公害から身を守るために、建物を密閉し。
建物同士を通路で繋いでいき。
様々な建物が連結されていった。
廊下や通路だけでなく、建物の間にも屋根がわたされていく。
床もカビや粘菌の繁殖を防ぐために覆っていく。
これにより建物の間の空間に広場が生まれた。
その屋根にはガラスがはめこまれ、陽光を取り入れるようにもなった。
室内に閉じ込められる事になった人々は、そんな広場を擬似的な外として扱うようになった。
その中で、蒸気機関をまわす。
更に発見された電気によって、人々は様々な恩恵を手に入れた。
しかし、外だけは取り戻す事も出来ずにいる。
産業革命と白い汚染の始まりから数百年。
人はかつてないほどに発展しながらも、閉塞を強いられていた。
人類を追い詰める白い汚染。
これらによって人々は閉じこもって生活する事になった。
その始まりは、蒸気によって人類が躍進しようとしていた頃。
あらわれた白い汚染によって、人類は未来を失った。
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