始まり
「なんで本気でやらないの?頑張ろうよ!」
「えー、だってめんどくさいじゃん」
「適当でもいいでしょ?」
「お前、本気で本気でって鬱陶しいんだよ」
・・・いやな記憶がよみがえる。
あの頃は全部を本気でやればいいと、全力でやればみんなのためにもなると。そう思っていた。
4月9日。今日は高校の入学式だ。大体の新入生は余裕をもって登校していることだろう。
ただ、俺はなぜかその大体に入っていない。
なぜか、簡単に説明すると迷子がいたからだ。
かっこつけ?お人よし?偽善?どれでもない、ただ放っておけなかった。
その結果、今すごくやばい状況になっている。入学式まであと5分を切っているのだ。
迷子を見つけるまではそれなりに同じ制服の人がいた。しかし、今自分の視界に映っている限りでは、一人として制服の人間がいない。
結論を言おう、やばい。
そんなこんなで、息を切らしながら俺、武藤 裕は学校の門をくぐった。
入学式も終わり、教室で担任となる先生から諸注意を受け休憩時間となった。入学式自体には間に合った。が、時間ギリギリについたこともあり、入学式が始まる前から少し浮いていた。
そのうえ、この学校は実家からも遠く俺は一人暮しをしている。
ということは、友達は誰一人としていない。というか知り合いすらいない。
友達を作るという行為が苦手な人間がこんな状況に置かれる。
結論。簡単な話だ、一瞬でボッチになる。
ということで、俺は高校生活最初の日の初めての休み時間を睡眠という形で過ご・・・
すっごく横から見られてる。すごく、うん、結構見られてる。
ただ、こちらを見てる奴さんは、すごい量の人に囲まれている。
自分の周りとは天と地ほどの差があるように思える。
なぜ、見られてるのかはわからない。多分話しかけてくれようとしているんだろう。多分。
ただ、奴さんにはすごい量の客人がいる。残念ながら今すぐには話しかけてもらえないだろう。
自分から話しに行けって?話しかけるのが苦手で入学式から浮いている人間が大量の人に注目されている人物に話しかける。超高難度すぎる。やめとこう。
ということで、一人からの猛烈な視線を感じる中、次に担任が教室に来るまで狸寝入りでもしとくことにしよう。
これが入学初日って結構先行きが不安に思えてくるが大丈夫だろうか?という一抹の不安を抱えながら俺は時間を無駄に浪費していくのだった。