22話黄金の火
エクスカリバーの掌に灯った金色の炎。俺は構えを解かず、その光を真正面から見つめた。
「禁忌、ねぇ……。あなたのような男が言うと、皮肉に聞こえますよ」
エクスカリバーは薄く笑う。炎の揺らぎと共に、その瞳に確かな自信が宿っている。
「フン、言ってくれるじゃねぇか」
俺は拳を握りしめたまま、一歩前へ踏み出す。ユリカの拘束を解くには、まずこいつを倒さなきゃならない。
「そのエルドラドとやら、どれほどのものか試してやるよ」
「いいでしょう……後悔しないでください」
次の瞬間、エクスカリバーの手元から金色の炎が爆ぜる。それはまるで意思を持った獣のように、うねりながら俺に向かって飛び掛かってきた。
「ちっ……!」
俺は咄嗟に後方へ跳び、間一髪で炎を避ける。しかし、その炎は地面を舐めるように広がり、まるで辺り一帯を支配するかのように燃え広がっていく。
「逃げられると思いましたか?」
エクスカリバーが手をかざすと、金色の炎がまるで生き物のように俺を囲む。逃げ場がなくなるのは時間の問題だ。
「チッ、面倒くせぇな……」
俺はすぐさま魔力を練り上げ、右手に炎を纏わせる。
「フレイムナッコー!!」
俺の拳が空を切り裂き、炎がエクスカリバーの作り出した金色の炎とぶつかる。衝撃とともに炎が弾け、火花が舞った。しかし——
「甘いですね」
エクスカリバーの炎はまるで喰らうように俺の炎を吸収し、さらに勢いを増す。
「……なるほどな」
俺は息を整えながら、奴の力を改めて見極める。
(こいつの金色の炎は、普通の炎を取り込み、より強力にする……そういう特性か)
ならば——
俺はゆっくりと拳を握り、魔力を集中させた。
「そろそろ終わらせますよ」
エクスカリバーが前に出る。俺も同じく、地面を蹴った。
「——焔穿つ拳!」
俺の拳が、エクスカリバーの放つ炎の壁を貫いた。
「なに……!?」
エクスカリバーが驚愕する。俺の拳にはただの炎ではなく、炎を圧縮し、爆発的なエネルギーに変える技——"爆焔拳"が込められていた。
「燃え尽きろォ!!」
俺の拳がエクスカリバーの腹に直撃する。衝撃が波となって広がり、周囲の金色の炎をかき消していった。
エクスカリバーは数メートル吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
「ぐっ……!」
俺はすぐさまユリカの元へ駆け寄り、拘束を解いた。
「大丈夫か?」
「うん……ありがとう」
ユリカを抱き起こし、俺は改めてエクスカリバーの方を振り向いた。
「……これで終わりか?」
倒れたままのエクスカリバー。だが、その唇にはまだ笑みが浮かんでいた。
「……いえ、これからですよ」
その瞬間、エクスカリバーの全身から金色の炎が噴き出す。
「ふざけんな……まだ戦えるってのかよ」
俺は拳を握り直し、次なる一撃の準備をする。しかし、エクスカリバーはゆっくりと立ち上がりながら、静かに言った。
「"本当の戦い"はここからです——」
金色の炎がさらに輝きを増し、俺の全身がその熱気に包まれる。
「チッ……面白くなってきたじゃねぇか」
俺とエクスカリバー、戦いはまだ終わらない——!




