純粋な心があった時期
廻原視点
「水面ー!早くしないと遅刻するわよー!」
「はーい!すぐ行くー!」
僕はピッカピカの小学一年生だ。
お母さんに連れられてこうして初めての通学路を歩いてる。僕の家はお金持ちだ。
だからと言って決して偉そうにしてる訳じゃない。お父さん、お母さんに教えられたようにつつましく生きるんだ。確か変換すると、慎ましく、だね。
お父さんは仕事で忙しい。会える事もなかなか無いけど日曜日にはずっと家にいてくれる。そしてお母さんの作った手料理を一緒に食べるのだ。
お父さんがいてお母さんがいる。
それが僕の何よりの幸せだ。
学校にたどり着き、教室に入る。新しい子達ばかりで、僕は少し緊張する。
友達何人できるかな?
そんな事を思いつつ、僕は授業に取り組んだ。
この後、僕は友達作りに励んだ。友達に沢山お金をあげたのだ。僕の家は金持ちだからね。こうして僕は友達作りのコミュニケーションを図った。
最初は上手くいっていたのだが、段々上手くいかなくなった。
お金が無い事を友達に伝えると、
「はあ?じゃあ、いらねーよ!」
と、吐き捨ててどこかへ行くのだ。
え?
どうして?
僕は生まれて初めて疑問を持った。だが原因は直ぐにわかった。
僕がお金をあげなかったからだ。
次の日に僕がお金を持ってくると、友達達が嬉しそうな顔をして近寄ってくる。
ほらやっぱり。
僕の生まれて初めての疑問は直ぐに解消された。
ある日僕は、いつものようにお金を持っていくとお母さんから、何故、金を持っていくと咎められた。僕は事情を説明するとお母さんは僕をおもいっきりひっぱたいた。
え?
起こったことが理解できない。
涙が溢れてくる。
見上げると、お母さんが怒ってる。
お母さんが怒るなんて初めてだ。
どうして?
簡単だ。
僕が悪い子だったんだ。お金を使って友達を作るなんて最低の行為だったんだ。
「水面・・・友達を作るためには物なんかで釣っちゃだめ。ちゃんと思いやりを込めて、接する物なのよ?」
うん、わかったよお母さん。
そう言うとお母さんはひっぱたいた僕の頬を撫でて笑いかけた。
「ごめんね水面・・・痛かったでしょう?」大丈夫だよお母さん。
あれ以来、僕は他人に笑いかけ、気を使い、様々な努力をして本当の友達をつくった。
でも、中には僕の事を目障りと思う人もいる。何故だと言うと、金づるがいなくなったからだろう。僕に利用価値がなくなったから、放課後いじめられる時もあった。
それでも、僕の友達がかばってくれた。うれしかった。
翌朝、僕が教室に入ると何かが違った。
クラスが妙に静まり返ってる。僕はそのまま自分の机に向かうとそこには、花瓶が置かれていた。花瓶の中には菊の花が入ってる。机の中にはカッターナイフの破片や、虫の死骸が入ってあった。
クラスのみんなが大爆笑した。
僕の友達もだ。
それ以降から、いじめが過激になってきた。先生達は知らん顔だ。
どうして?
上手くいってたのに
いじめのリーダーがその取り巻きを使い、僕を集団でいじめてきた。
僕は抵抗した。痛いから。
偶然、僕の手がいじめっ子の頬に当たった。バチンといういい音が響き、当たった本人は泣き出した。いじめっ子達が僕を囲んでくってかかる。
校長室に呼び出され、僕はお叱りを受けている。横にはお母さんがいて、ペコペコと頭を下げている。
そして、帰る途中に僕はお母さんに、「お母さん!僕頑張ったよいじめっ子達を全員やっつけたんだよ!僕は正しい事をしたんだ!」
と言うと、お母さんがまたしても僕の頬をおもいっきりひっぱたいた。
お母さんが前の時よりも怒ってる。
どうして?
僕は正しい事をしたのに。
信じて疑わない僕にお母さんは諭すようにいった
「水面。耐えなさい。どんな理不尽な状況下に置かれようとも手をだしたら負けなのよ。」
お母さんは拳を握りしめ、僕に伝える。
お母さんも耐えてるんだ。僕がどんな目に会い、どうしてこうも一方的にこちらが悪くいわれるのだと。
この日を境に、段々と僕は色々な疑問を持つようになった。
この当たり前な世界に。
そして数ヶ月。お父さんとお母さんが事故で亡くなった。不思議と涙はでなかった。
それから、僕の疑問を解消してくれる人はいなくなった。僕は、知り合いに引き取られることになった。親戚のおばさんは、優しい人だった。
何故、優しいかって?
それはきっと、同情してるからだ。
所詮は偽善。
偽善の心で可愛がられてもまったく嬉しくない。
僕はこの当たり前の世界に段々と失望してきた。何故、こんな世界になんの疑問も持たずに生きてるのだろう?
僕は人生を賭けた命題ができた。
この当たり前の世界の中から“答え”を見つけると。
高崎視点
俺の家は厳格で規律を重んじる家庭だった。
俺は小学一年生の時から父、母からありとあらゆる英才教育を叩き込まれ、勉強漬けの毎日だった。小学生なのに、高校生の授業をやらされ、それは最早、拷問に等しかった。
家には必ず、五時までに帰るようにしたし、夜の十時までは勉強をして、その間、何かを食べるのも許されなかった。
学校の成績ではいつもトップだった。周りの目からは尊敬と羨望の眼差しで見られる。
そんな日々に俺は優越感を感じていた。
そして自分だけは特別なんだと、感じていた。
だから友達なんて必要ないと思っていた。
だが、現実は違った。
周りの目は尊敬の眼差しから、痛いものでも見るかのような目へと変わっていった。
俺は尊敬と信頼を得るには、やはり他人との接触をしたほうがいいと考え、クラスメートと話をしようとした。だが無駄だった。
俺が話しかけようとするたびにどこかへと行ってしまう。
俺はこの時、初めて疑問した。
“普通”という単語を。
普通という言葉には定義が無い。それはこの世界が完璧ではないからだ。必ずどこかに穴がある。その穴がある限り俺達は普通という言葉を使ってはならない。
そして俺は果たして“普通”なのだろうか
俺は今まで言われたとおりに親に服従してきた。俺のしてきた事は間違ってたのか?
“普通”という言葉は余りにも重い。
みんなは言葉の重要性をわかってない。
時と場合によっては、言葉は思いがけない事態へと引き起こす。俺は今まで、勉強ばかりで他人との触れ合いなどをまるで知らなかった。
その結果、俺は孤独となり、周りからは異質の目で見られてしまう。
だが俺はこう思ってる。
頭脳は俺が遥に超越してる。
身体能力も生まれつき良い。
顔だちもなかなかだ。
それに比べて、何故こいつらは俺みたいな人間じゃないのだ?俺は異端ではない、普通だ。俺が“普通”なんだ。自分らがまともだと思うのなら、それなりの実績を残して俺に追いついてみろ。そうすれば認めてやるよ。
はあ~あ、眠い。
坂井視点
中学生に入学したばかりの頃、俺は己の好奇心を満たす為に、色々な事を遊びに変えていた。車が通る場所を走って突き抜けたり、猫の前にネズミを置いて喰わせたり、夜中に族の集会にどこからともなくエアガンで発砲したりと、自分の好奇心はより強い方に向き、激化していった。
ある日俺はいつものようにパソコンを使ってゲームをしようとした。
ネットワークを開き新しいゲームはないか探してると、シューティングゲームがあった。
俺はそのシューティングゲームに没頭した。なかなかに楽しめる。
架空の世界ではあるが、人を殺せるという喜びに浸っていた。
人を殺す?
そう、俺の根本的な欲求は実は“ソレ”だったんだ。
人を殺すのはこの世の法則、倫理、規制、制約から外れるということだ。俺はなんの変化もない日常に退屈していた。そんな時、退屈の矛先は“この世の規制の矛盾”に向いた。
完璧のように見えるが、必ずどこかに矛盾がある。
この世に“完璧”なものなど存在しない。
だとしたら
今、行っている数多の所業が無駄なんじゃないだろうか?
だってそうだろう?
いくら、法があり人間を縛ろうと、必ずどこかで事件が起きる。
警察は、犯罪者を逮捕する。
だが、犯罪が起きる前を止める事はできない。
必ず何か起きた後で警察は動き、法が使われる。
余りにも遅い。
事件が発生してからじゃ遅い。
矛盾しているんだよ。
確かにこの世にはそういう“束縛”があってこそ国家が成り立ち、人が成り立つ。
だが、事件が起きれば、そんなもの、まるで役に立たない。
だからこそ殺人だけじゃない、犯罪は必要なんだ。犯罪はその矛盾に気づかせる為の所業だ。そして人殺しはその矛盾した束縛から解放される唯一の所業だ。
“創るものと、壊すもの”
このふたつがあって初めて国家が成り立つ。
それが世の摂理というものだ。
俺には殺人願望がある。日が経つ度に、どんどんそれが膨らんでいく。
俺はいつかこの国家の為に、“壊すもの”になるのだ。
ああ・・・人を殺したい・・・・・・。
萩原視点
世の中はゴミばかりだ。
この素晴らしく平和な世界があるというのに、犯罪を犯すものがいる。何故、此処まで積み重ねた国家を犠牲にする必要があるのだ?
そこに個人的な感情を挟むのならそいつは、ゴミだ。私的な感情で犯罪を犯し、警察を動かし、弁護士が働き、明らかに迷惑してる。
そんな奴らに生きる価値は無い。
私が、この世の法則の矛盾に気づいたのは小学五年生の頃だ。何故、今までの積み重ねた、政治家の苦労を無駄にする?
馬鹿か? いや、馬鹿だ。
犯罪者は“犯罪を犯す者”だから犯罪者だ。犯罪を犯すのは簡単だが、簡単だからこそ理解出来ない。
簡単ならば自分で自覚出来る筈だ。
これはやってはいけない
あれはやってはいけないと自分で決めれる筈だ。最近の人間は決意が足りない。
要するにゴミだ。
私が、人間観察を初めたのは、小学生に入ってからだ。私は、常に暇人だ。親からは、法を勉強させられてきた。純粋な心は勿論ある。弁護士になり、正義のヒーローになるのだ。
その為には相手の心の内も把握しなければならない。
私には友達が多い方だった。だがそいつらは、私の知ってる事がわからず余りにも幼稚すぎる。
年が年だから仕方ないが、これではつまらない。低俗過ぎて。
仕方ないからそいつらは“友達という名の人間観察のサンプル”にした。
毎日が楽しかった。
相手の心理の盲点を心の中で毒づく。
互いに話し合ってるところを観察し、そこから矛盾を見いだす。
これほど、楽しい学校生活は他に無い。
楽しい反面、私は失望した。こいつらは社会の情勢などまるで知らんのだろうな。こいつらの中には将来、犯罪を犯す奴もいるかもしれないし、社会を築く奴もいるかもしれない。
未来の事などわかりはしないが、でる杭は打っておくべきではないだろうか?質の悪い人間は今のうちに淘汰すべきではないのだろうか?
人間の観察は大人の域にまで及ぶ。私の思う正しさと比較するためだ。
ところが大人は綺麗言ばかりを口にする。そんな事では犯罪は増す一方だ。
やはり私の思想が正しい。大人は綺麗言を抜かし、自身の正しさに酔うだけ。
だが、私は違う
本当の意味での平和を望み、平和を創れる資質を私は持っている。
私はこの世界のヒーローになるのだ。
斎藤視点
僕がそれを手に入れたのは小学校からの帰りだった。知らない人から貰った。ついていくのは丁重にお断りしたが。
家に帰った後、僕は親の目を逃れ、そのまま自室へと籠もった。机にそれを置く。
知らない人からは、それは気分がよくなる魔法の薬だよ。と、教えられた。
僕は期待と胸を踊らせ、その魔法の薬を飲んだ。すると、まるで天に召されるような感覚になった。
それからというもの、僕は定期的にその薬を飲んだ。
間違いなく幸せだった。これさえ有れば他は何もいらないと思う程だった。
ある日、急に体に異変が起きた。
体がだるく寒気が走る。イライラが募り破壊衝動が募る。吐き気がこみ上げ、心拍数が上昇する。
病院に行こうと思ったが、やめた。
理由はとっくに気づいてる。
あの薬を飲まなくなったからだ。
あの人に会いたい。僕は体の不良を我慢してあの時、会った場所へと向かう。だがそこには、あの人はいない。
僕は、そこでずっと待った。昼になり夕方になり暗くなり始めた頃、ついに僕の体の悲鳴が増してきた。僕は涙をこらえ、あの人に会いたいと切望した。
「あら、久しぶりねキミ。」
息も絶え絶えに、振り向くと、そこにはあの人がいた。
緊張の糸が切れた僕はそのまま、意識を失った。
目が覚めると、顔を覗き込まれていた。膝枕をされて、にこやかな顔が見える。
「ここは・・・どこですか? あれから僕は・・・」
「昨日からよ。薬がなくなって大変だったでしょ?」
彼女は、藤間美希と名のった。なんでもあの日、出会った時から、ずっと僕の事を待っていたらしい。髪は短めで、背は高め。活発そうな人だ。僕よりも三、年上で、中学生らしい。
「ねえ、君の名前はなんていうの?」
「・・・斉藤遊輝です。」
「へ~遊輝君ね!ねえ、遊輝君。ごめんねあんな薬渡しちゃって。でも、大丈夫!今度は薬を変えたから!苦しくなるんじゃなくて、別の感覚の薬にしたよ。」
僕はとりあえず、今日はその薬を貰い帰ろうとしたが、藤間が帰らせてくれない。
「駄目だよ遊輝君。遊輝君は私と一緒にいるの。初めて会った時から私、遊輝君の事が気に入ったのよ?せっかくまたこうして会えたんだからこれからはずっと一緒にいないと駄目なんだよ。」
藤間の目が段々濁ってくる。僕は怯えながら、言葉を紡ぐ。
「でも、でも、僕のお父さんお母さんが心配してるし・・・」
「うーん。仕方ないわね。私ね、一身上の都合で引っ越す事になるの。だからね、薬がまた切れたらいけないから、私が定期的に君の家に送る事にするよ。」
「そんな事・・・できるの?」
「うん。私の家は普通とは違うから。でも一身上の都合だから数年もすれば、また遊輝君に会いにいくからね。」
その後僕は、藤間の家から出て家へと帰った。親からは物凄く怒られた。
あの日からは1ヶ月事に、薬が送られてくる。名も知らぬ配達員が来て、親も不振がっていたが、僕の遠い友達からの貰い物だと配達員が言った。
僕もその話に合わせて、なんとか親にもわかってもらえた。
中学生になってからは授業で、僕の使ってる薬の正体に気づいた。あれは麻薬と呼ばれ、使ってはいけない物らしい。
あの薬を服用し続けてそれ以降の僕はどんどん感情がなくなり、無関心になってきた。副作用をまだ味わった事は無いが、味わいたくもない。
そして後悔はしていない。
こんなに最高な気分になれるのに、違法とされるなんて馬鹿げている。
こんなにいい“栄養剤”をくれた藤間にはとても感謝している。
会いに行くと言っていたから、きっとまた会えるだろう。
そろそろ、薬の効力が切れる時間だ。
僕はポケットから、ビンの中に入った錠剤を取り出し、口に含む。
ごくんという飲み込む音と共に、快楽が押し寄せてきた。
廻原視点
新しい僕の親は、とても嫌な人だ。僕の事を厄介もの扱いする。
どうせ僕の家の金目当てだろう。
僕はそんな当たり前と化す日々に嫌気が募り遂に、殺してしまった。
計画的犯行だ。親の墓参りに行くと公衆の面前で駄々をこね、電車を使い、現地へと向かう。
電車を待つ場所はとても人が多く、防犯カメラにも恐らく、僕の姿は小さくて映ってないだろう。ここにいるのは僕よりもずっと背が高い大人ばかりだ。
電車が来た瞬間、親を突き落とした。周りからは悲鳴が聞こえ、僕はその人ゴミの中で薄ら笑う。
だれも、僕の事なんて疑わなかった。二度も両親を失い世間はさぞかし、同情してるだろう。
もう直ぐ、中学生を卒業するから、僕はひとりで生活していく事にした。お父さんお母さんの莫大な資産があればそれは充分可能だった。
これでもう邪魔者はいない。
僕は“答え”を見つける為に、今日もひとりで生きている。
だが高校生になってからは、ひとりではなくなった。僕が答えを見つけるための協力者及び、利用するための道具が出来た。
リストカットをする自殺願望者。
殺人衝動を持つ破綻したイカレた男。
人間を観察する、上から目線の奴。
そんな僕らを一歩引いたとこから傍観する麻薬中毒者。
こいつらと僕の思想はまったく同じではないが、どこか共有出来るところがある。
答えが見つかるまでこいつらは利用させてもらう。
きっとこいつらも僕と同じ事を思ってるだろう。
ならば遠慮はいらないな。
例え殺してしまう事になってもね・・・・
今日も当たり前な世界が続いて行く。
いつか僕は答えを見つけ、この当たり前の世界から抜け出してみせる。
僕は今、生きてる事に疑問を感じてるだろうか?
それすらも僕の命題の許容範囲に入るな。
新しい学校生活の中で今日も朝、早めに登校する。教室にはいつもの四人がいる。
窓の外をボーっと見ている高崎。
僕らのなんて意に介さずといった感じでゲームに没頭してる坂井。
そんな二人を観察してる萩原。
室内の隅っこでアイマスクを付け、音楽を聴きながらイヤホンを付けて寝そべってる斎藤。
僕は黙って席につく。
今日こそは、
“答え”を見つけてみせる




