笑え、膝小僧
ついにセイガを喫茶店におびき出した岩谷たち、しかしここから始まる攻防が長い!
キングバック60話「笑え、膝小僧」
「そう、残念」
セイガは再び椅子に座る。
喫茶店のウェイトレスが注文を取りに来る。
「お客様、ご注文はお決まりでしょうか?」
「アイスコーヒーを頼むわ」
「僕はアイスティーで」
「かしこまりました。お連れの方はどうなさいますか?」
その時、ウィルメリアとセイガはテーブルに座っていたが、ノレドたちやセイガの部下は護衛であるためその場に立っていた。
そのことに気を使ったウェイトレスは彼女らにも何かいるのではと聞いたのだ。
「こいつらにそんなものはいらないわ」
セイガはさも当然のように言い放った。
「……僕も結構だ」
ーー前言撤回だ、こいつは仲間にすべきではない!
人を立場でしか判断できない人間とはつるむつもりはない!
ウィルメリアは心の中で性質的にセイガとは相まみえないタイプの人間だと感じ取った。
ウィルメリアはチラッとエルフェを見る。
「(ウィルメリア様、分かりましたわ!)」
ーー頼む、エルフェ。
ごめんなさい、ウェイトレスさん。ちょっとご迷惑をおかけします。
エルフェの足元からスライム状のキングバックが出現し、ノロノロと地面を這い、エルフェの元を離れて行く。
そしてスライムは店内の方へ侵入していった。
「一体何をする気だ?」
岩谷は隙間から店内に入って行くスライムを目で追う。
「あまりそっちに目線を持っていくな、エルフェを信じろ」
「ああ、分かった」
俺たちは何気ない日常会話をしながらウィルメリアの様子を見守る。
すると岩谷は衝撃な光景を目撃する。
店内からスライムがアイスコーヒーとアイスティーを乗せたおぼんを乗っけて出て来る。
「ぶっ⁉」
岩谷は思わず飲んでいたコーヒーを少し噴きだす。
「汚ねぇ!」
クラスチェ顔を歪める。
「いやぁよ、角度的にお前たちからは見えてないかもしれないが、スライムが堂々と店内から出て来たんだよ! 今」
「こらえろ、治、それが今俺たちが出来ることだ!」
すると、次の瞬間スライムはさっき注文を取っていたウェイトレスの姿に変わる。
以前岩谷に変身したときと違い、そのウェイトレスの姿にはリアルな彩色が施されており、一見すると普通のウェイトレスにしか見えない。
「カラーにもなれるんだ」
「岩谷! 見すぎ!」
クラスチェがこちらを睨む。
「わりぃ、わりぃ」
俺は誤魔化すようにコーヒーを口に含む。
そのとき、岩谷はウィルメリアの方をチラッと見る。
岩谷は再びコーヒーを噴きだす。
「ちょっと! 岩谷、なんだよ、さっきから!」
「ご、ごめん、今チラッとエルフェを見るとよ、あいつ足がガクガクになってんだよ、膝小僧がプルプル震えてんだよ、こんなの吹き出すだろ!」
クラスチェがエルフェの方を見ると、エルフェは汗をダラダラとかき、足をプルプル震わせ今にも倒れそうだ。
「あれ、ヤバくね」
「あいつ、やっぱ、色を付けるのきついんじゃねえか!」
ウィルメリアはこの事態を察してか、セイガを引き付けるように会話をしている。
ーー耐えてくれ、エルフェ!
ウェイトレスに変身したスライムはウィルメリアのテーブルに近づく。
セイガはウィルメリアとの会話に夢中で変身したスライムを見もしない。
ウェイトレスに変身したスライムは無言で、アイスコーヒーとアイスティーをテーブルにすっと置くと、その場を離れる。
「よし、上手く行った」
「後は気づかれずに店内に戻るだけだね」
何とかバレずに睡眠薬入りアイスコーヒーをテーブルに置くことに成功した光景を見た岩谷たちは安心して、コーヒーを口にする。
その時、セイガの部下の一人が異変に気付く。
そう、エルフェの異変に気付いたのだ。(そりゃあ、気付くでしょう)
「あの~大丈夫ですか? さっきから苦しそうですけど」
セイガの部下の一人がエルフェの様子を心配する。
「な⁉ バレたか!」
スティーブは驚きを隠せない。
「流石に、あれはなぁ~」
岩谷は遠い目をしている。
そのときのエルフェは口から泡を吹き始め、プルプル震える股は大きく開いていた。
「だ、大丈夫ですわ!」
「いや、でも口から泡吹いてますし、ガニ股で膝小僧笑ってますよ?」
「も、問題ないことこの上ないですわ!」
「いや、そんなこと言っても……」
セイガの部下はまだ食い下がらない。
シンプルに心配しているのだろうが、これが原因でセイガにバレるのはマズイ。
「こ、これは、カニのモノマネですわ!!」
エルフェは苦し紛れに言い放った。
ーーいや、無理があるだろ!?
その場に居合わせた全員がそう思った。
「え? なに? カニのモノマネ?」
セイガの部下は困惑した表情をする。
ーーガチな反応ですわ、もう泣きそうですの……
でも、もうすぐでウェイトレスに変身した私のアクア・エビデンスがここから見えない範囲まで
逃げれる。
ここでバレるわけはいかないんですのよ!
「ちょ、チョキチョキですの~」
エルフェは指でチョキを作り笑顔でカニのモノマネをより本格的に行う。
「……あ、あはは、チョキチョキ」
セイガの部下は苦笑いでチョキをしてくれる。
気を使ったのが見え見えである。
岩谷たちは笑いを必死にこらえる。
ーーああ、滑った挙句、気を使われたんですの! もう、泣きたいんですの~!
そしてやっとスライムは視認範囲から外れる。
その瞬間スライムは変身を解除し、その場にぐったりとする。
「(エルフェ、お前はよく頑張った!)」
事情を知った者たちは全員心中でエルフェを賞賛する。
「さっきから、あなたたちチョキチョキ、うるさいわよ!」
セイガが切れて、注意する。
「はいですの……」
「は、はいセイガ様」
エルフェは涙をポロっと流し、真っ白になる。
だが、そのときの俺たちはこのカフェに偶然仕掛けられた罠に気付いていなかった。
「お客様、どうしたんでやがりますか?」
「へ?」
俺たちは突然、別のウェイトレスに話しかけられて二つのことに気付く。
ーーやべっ! コーヒーをこぼし過ぎた!
岩谷たちはコーヒーを噴き出したり、笑いをこらえるとき、カップを倒したことに気付いていなかった。
そのため、辺りを汚してしまっていた。だからウェイトレスが異変に気付き、こっちに来てしまったのだ。
そして次がもっと重大な事態だ。
何故か、以前スティーブに戦いを挑んであっさり負けたタオンが何故か、この喫茶店でウェイトレスをしているのだ!
ーーこんなところで何してんだ⁉ こいつ!
このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございます。
今回はギャグが多めの回になりました。少しでも笑っていただけたのなら幸いです。
次回はタオンが再登場する回になります。彼女はやられてはしつこく登場する系のキャラなので温かい目で見てあげてください。
いつも読んでくださる皆様にお願いがあります。
ブックマーク、評価、感想など是非よろしくお願いします。
作者のやる気が上がり、クオリティがアップすること間違いなしです。
Twitterもやっているのでそちらで作品に関する情報を載せるかもしれません。
作者名で検索すると出ると思います。
どちらにせよ、次回もお会いできるのを楽しみにしております。




