氷雪の刹那
エステイトの強さを思い知るスティーブ、しかし彼はまだ諦めてはいない。
キングバック56話「氷雪の刹那」
スティーブは真っ直ぐエステイトを見る。
その目は決意に満ち溢れ、とてもこのまま負ける面ではない。
ーー目つきが変わった、一体何をするつもりだ?
目つきが変わったスティーブにエステイトは警戒を強める。
サーセイバーは剣を構える。
エステイトのオールグリッターはこれに合わせ、拳に纏えさせたナックルを剣の形に戻し、構えたその時だった。
サーセイバーはオールグリッターまで一直線に高速で移動し、斬りかかる。
オールグリッターは咄嗟に氷の剣でサーセイバーの剣を受け止めるが、その氷の刀身にひびが入る。
「なんて速さだ、どこにそんな力が!」
オールグリッターは水路の水分を使い空中に氷の矢を複数作り、サーセイバーに向けて発射する。
サーセイバーはこれを地面を滑るように移動して、容易に避ける。
「そうか、僕の氷を利用して、地面を滑ったということか、だが仕組みが分かれば容易い、来い!」
ーー滑る以上、いくら速くても動きが直線的であることに変わりない。
サーセイバーは一直線にオールグリッターに向かって突っ込んで行く。
ーー思った通りだ! もう、その速さにも慣れた!
オールグリッターはサーセイバーにカウンターを決めるように剣を構える。
サーセイバーがオールグリッターに接近した、次の瞬間、サーセイバーは地面に剣を突き立てる。
その剣を基点にサーセイバーの滑る向きが変わった。
突如として滑る方向が変わったことにより、サーセイバーはオールグリッターの正面から攻めるのでは横方向から攻めることになる。
クナイ持ちに変えた剣ですれ違うようにサーセイバーはオールグリッターを切りつける。
オールグリッターは身をよじって攻撃を躱そうとするが、サーセイバーの剣はオールグリッターの肩を切りつけ、その豪華な装飾は派手に飛び散る。
「ぐぁっ! ちっ」
オールグリッターは振り向き、サーセイバーを攻撃しようとするが、そこにサーセイバーの姿はない。
ただそこに残るのは凍った地面に刺さったサーセイバーの剣のみだった。
「な! どこだ!」
「上ですわ!」
エルフェの声でエステイトは上を見ると、そこには空中を舞うサーセイバーの姿があった。
「滑る床に剣を突き立てて、ジャンプ台にしたか!」
サーセイバーは低い地下水路の天井を蹴り、オールグリッターに向かって短刀を構え、急降下する。
オールグリッターを返り討ちにしようと剣を構えるが、それよりも速くサーセイバーはオールグリッターを切りつける。
再び豪華な装飾が砕け散る。
「ぐっ、離れろ!」
オールグリッターは持っていた剣を自分で砕くと、突然オールグリッターの周囲の地面から氷の山が生えてサーセイバーを攻撃する。
サーセイバーは地面に突き刺した剣を回収すると、凍った地面を滑り氷の山から離れる。
「さ、流石だね、速い」
「お前も随分と技のレパートリーが多いな」
「そうだね、こっちの氷は特注品でね、形成速度は速い。けど、これを避けられたのは予想外だったな」
「それじゃあ、そろそろ終わりにしよう」
「もうかい? 面白くなって来たところなのに」
エステイトは余裕がある態度を取ろうとしているが、額から流れる汗から余裕がないのがバレバレである。
サーセイバーは二刀流でオールグリッターに向かって突っ込んで行く。
「向かって来るか! ならば氷漬けだ!」
オールグリッターは氷の矢をサーセイバーに向かって複数飛ばす。
サーセイバーは自分の後ろ側の地面に剣を突き立てると、今度は回転しながらオールグリッターの方へ突っ込む。
両手に剣を持ち回転しながら突っ込むことで、飛んでくる氷の矢を剣で叩き落とす。
氷の矢を防いだ回転斬りはオールグリッターを襲い、オールグリッターは氷の剣で受け止めるが回転斬りは氷の剣を削り切る。
「な、何ぃ⁉」
そしてついに氷の剣をへし折ったサーセイバーの回転斬りはオールグリッターの胴体に斬りかかる。
「この私から離れろ!」
拒絶するような声と共に再び発生した氷の山はサーセイバーを襲うが、サーセイバー次々と発生する氷の山の一つを蹴り、距離を取る。
大きな氷の山で前が見えなくなったため、オールグリッターは氷の山を解除して視界を確保しようとする。
しかしその大きな隙をスティーブは逃さない。
サーセイバーは持っている剣をオールグリッターに向けてぶん投げる。
驚いたエステイトは解除した氷の山を再び発生させ、剣を氷漬けにして防ぐ。
「あ、危ない」
「それの最大の弱点は視界の邪魔になることだ」
「きゃっ!」
スティーブのその言葉がエステイトに届く頃にはサーセイバーはオールグリッターの後ろを取っていた。
そのまま、サーセイバーはオールグリッターの背中を斬る。
そうスティーブはエステイトが咄嗟の防御に氷の山を使うことを予想し、剣を投げた瞬間、サーセイバーを壁に向かって滑らせていた。
サーセイバーは一直線に向かった壁を蹴り上げ、向きを変えオールグリッターの背後まで壁ジャンプをしたのだった。
深いダメージを負ったオールグリッターはその場に膝を着く。
サーセイバーは膝を着くオールグリッター短刀をに向けるもののそれ以降攻撃を行おうとしない。
「ぐっ、どうした? 何故やらない?」
エステイトは負けを認めたようにオールグリッターの首を見せさせる。
しかし、その時サーセイバーは向ける短刀をしまう。
「何の真似だ?」
「これ以上、戦う必要はないだろう」
「何ぃ⁉ 敵に情けをかけたつもりか! 事と次第によったらこのまま地下水路ごと氷漬けにしてくれる!」
エステイトは怒り混じった声だ。
「敵? 何を言っている?」
スティーブ冷静に言う。
「はあはあ、そのまま返す、何を言っている?」
息を切らしながらエステイトはスティーブを見る。
「……そうだな、戦って分かったことがある。お前に殺気はあってもその方向は俺ではない、戦っていてもここではない何処かにその殺気は向けられている。故にお前は敵ではない」
「な、何を言っている⁉ ぼ、僕はスティーブ、お前と戦っていたんだぞ!」
明らかにエステイトからは焦りが多く見られる。
「だったら何故そんな真似をしている? 本心からではないだろう?」
「な、何故、それを? どうして気付いた⁉」
「寒くて少し時間がかかったが、匂いは嘘をつかない」
「お前、女だろ?」
このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございます。
最後に衝撃の事実が発覚しましたね、エステイト、彼いや、彼女は一体何者なんでしょうか?
次回にご期待ください。
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クオリティがアップすること間違いなしです。
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どちらにせよ、次回もお会いできるのを楽しみにしております。




