常識
水の国に侵入した岩谷たち、美しい外見とは裏腹にその世界は非常に偏った世界だった。
キングバック51話「常識」
「予防接種の中身は全く別物、これが国民全てを支配するキーになっているんだよ」
「中身が違う、予防接種と騙して国民に打っているのか!」
スティーブが勢いよく立ち上がり、頭を屋根にぶつける。
「い、痛い……」
「いいリーダーであるスティーブは許せないことだよね」
みんなスティーブが頭をぶつけたことは触れないでおく。
「それでよぉ、中身はなんなんだ?」
「残念ながら、前回でもその情報は手に入らなかったんだ、他の人からは聞けないし、よそ者の僕にはくれなかったから分からないままだ」
「でもなんで予防接種だと分かったんだ?」
「簡単だよ、否定意見が一切ないからさ、どんな薬にも否定的意見を持つ人間は必ずいる。そもそも薬は毒だからね、使い方を間違えると危険な物だ。それを国民全員に打つのに否定意見がないのは違和感しかないだろう? なら情報統制してまで隠したいことがそこにはある」
「なるほどな」
俺はクラスチェ言うことに納得した。
「そろそろ、アルファラスに到着する。それじゃあくれぐれも気を付けてね」
「おう」
俺はクラスチェとの会話を思い出し、もう一度街を見る。
「(この美しさ、人の笑顔、なんだか、真実を知ると全て噓っぽく感じてしまうな)」
「何をしているんだ! 早く行くぞロック」
クラスチェが俺を呼ぶ。
「(そういえば、本名を伏せているんだったな)はい、クランさん」
――俺がこいつの下なのは気に食わないが、まあいいだろう。
俺たちは街の人々に聞き込みをする。
「なあ、おっさん、俺仕事でここに来たんだが、ここはいい国かい?」
俺はたまたま立ち寄った屋台のおっさんに声を掛ける。
「ああ、いい国だとも」
「へえ、その心は?」
「何と言ってもリーダーのアルファラス様だ。いつも私たち国民のために身を粉にしてくれている。おかげで私たちはこうして安心して暮らすことが出来るのだよ」
おっさんは笑顔でアルファラスのことを褒めちぎる。
「へえ、それはいいことを聞いた、ありがとうな」
そう言うと俺は屋台を離れる。
――何人にも聞いたが、同じ反応だ。
貶すことが出来ないからああして褒めるのか、いいやそれは違うだろうな。
悪口を言えないだけなら、わざわざ褒める必要はない、あのおっさんは心からそう思っているのだろう。
これは思ったよりも根が深いな。
それから俺たちは三日間に渡って、街で情報を集めて回ったが、クラスチェが半年かけて集めた以上の情報は手に入らなかった。
「はあ、何にも得られねえな」
俺は取った宿のベットで寝転がりため息をつく。
「こういったものは根気が重要だ、たった三日で根を上げたか治?」
「いや、仕方ねえことだけどよ、こうも結果がでないとなあ」
すると、突然クラスチェがドアをドンっと開けて入ってくる。
「ねえ、二人とも見て! これ今日の新聞さ」
クラスチェはこの国の新聞の見出しを俺たちに見せてくる。
「うーんと何々? レジスタンス、またまた大規模な破壊活動! なんだこれ?」
「レジスタンスだよ、この国にもそんな連中がいたなんてこれは大きな収穫だよ!」
クラスチェは嬉しそうな表情だ。
「ふーん、けどこれには散々な言われようだな」
新聞の内容は水の国で活動するレジスタンスについて大きく否定するものだった。
「こんなもの情報統制している結果かもしれないよ」
「クラスチェのいう通りだ、自分たちの目で見て判断するべきだ」
「なるほど、確かにそうかもしれないな、じゃあそのレジスタンスについて調べてみる必要があるな」
「だったらすぐに行こう!」
クラスチェは生き生きとした様子で部屋を出て行く。
「俺たちも行こう」
「そうだな」
その日俺たちはレジスタンスの情報を集め回ったが、それでも確かな情報は得られなかった。
そればかりか、聞く人聞く人、みんながレジスタンスを大きく否定する人ばかりだった。
「はあ、全然だめだぁ」
俺は大きくため息をつく。
「これはうまく新聞が効いているな」
「うーん、もっと裏の世界の方に入っていかないとダメかなぁ」
収穫がなく、今日はもう切り上げようとした時だった。
「きゃああ!」
女性の大きい叫び声が聞こえた。
「なんだ!」
「……様子を見に行ってみよう」
そして声のする方へ向かってみると、そこには兵士数名が夫婦のような男女二人を取り囲んでいた。
「お願いします。お願いします。どうか息子にはその薬を打たないで下さい」
男の方が兵士にすがるように懇願する。
「何とぼけた言ってんだ旦那さんよ、俺たちはその子のためを思ってやって来たんだ、これだと、まるで俺たちが悪者みたいじゃないかぁ?」
兵士の一人は男の頭をポンポンと叩く。
「そ、そんなことは言ってませんが……お願いします」
兵士たちの前で男は土下座をする。
「おいおい、こいつ土下座したぜ!」
「ぎゃはははは、面白い旦那さんを持ちましたね、奥さん」
兵士たちは土下座する男を笑う。
「あ、あいつら」
岩谷は眉間にしわを寄せる。
「落ち着け、治。ここで見つかったら、全て台無しになる」
「わ、分かってるけどさぁ」
「はいはい、みんなのためにちゃっちゃと打ちましょうね」
そう言うと兵士は兵士は女性が抱いている赤子を無理やり奪い取る。
「や、やめて下さい。私たちは打つことを望んでいません! こんなやり方おかしくありませんか!」
女性は兵士を睨む。
「ああ⁉ あんたもそんなこと言う?」
「それじゃあ、周りにのみんな聞いてみましょう。俺たちは何かおかしいこと言いましかねえ? 我が王が用意した薬を拒むなんておかしくありませんか?」
兵士がそう言うと、周りの人たちは兵士に賛同する声を上げる。
「そうだ、我が王を否定するか非国民」
「みんなしているのだからあなたたちもするのが普通でしょう?」
街の人々の声はどんどん大きくなっていく。
「まっというわけで、諦めてね♪」
そう言うと兵士は取り上げた赤子に注射を向ける。
「ああ、やめてお願い!」
女性は兵士の腕を掴み引っ張る。
女性が引っ張ったことで、注射針が兵士の頬を掠め血が流れる。
「あ⁉ てめえ、女だからって何もしないと思ったらいい気になりやがって!」
「あ、そ、そんなつもりは」
兵士はぶち切れた様子で右の拳を女性に向けて振るう。
しかし、その拳は女性に当たることはなく、途中で別の手が兵士の手を掴んで止めていた。
そう岩谷が左手で兵士の右手首を強くつかんで防いだのだった。
その時の岩谷はまるで今にも襲ってくるような鬼の形相であった。
「権力に群がる犬どもが! てめらはもう人間じゃねえ!」
そう叫ぶと、岩谷は赤子を抱く兵士の顔面を右ストレートで打ち抜く。
「あーあ、やっちゃた」
クラスチェは呆れたような様子で首を振る。
「ふっ、そうだな、だが、俺たちらしい」
そう言うと、スティーブは岩谷の元に駆けて行く。
「ふぅ、これはこの後が大変だなぁ」
クラスチェも岩谷の元に駆けて行く。
このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございます。
今回は岩谷がやってしまいましたね、さあ、これからドンドン話が進み始めます。
これからのキングバックをお楽しみ。
次回の投稿は来週の月曜日です。
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どちらにせよ、次回もお会いできるのを楽しみにしております。




