潜入任務
水の国を攻めるべきと言うバルター。
そこにどんな理由があると言うのだろうか?
キングバック49話「潜入任務」
「率直に言おう、水の国を先に攻めるべきだ」
バルターはハッキリとそう言った。
「理由は?」
「そうだな……炎の国と水の国では兵力は五分五分か水の国の方が上だ」
「だったら何故水の国を推すんだ?」
「炎の国には奴がいる」
バルターは深刻な表情をする。
「勇願カガリだな」
ホルンも深刻な表情でバルターを見る。
「そうだ、奴一人が出て来るだけで、戦況がひっくり返ると言っても過言ではない」
「俺の左目も四年前奴にやられた」
そう言って、ホルンは自分の潰された左目を見せる。
「その目、勇願にやられたものだったのか」
スティーブは顔をしかめる。
「あの時、リリィを守るためにやられたものだ、奴は間違いなく最強だ。俺が小型最強と言われようとも、所詮は小型という括りがないと最強ではない半端者だ。それに対し、奴は正しくキングバック最強だ」
「いつかは倒さないといけないとは言え気が滅入るな」
スティーブは困った表情をする。
「おいおい、つまりは炎の国の勇願カガリがいるから戦いたくないっていう、消去法なのかよ?」
俺はバルターに聞く。
「それもあるが、一番の理由は水の国領内の河が狙いだ」
「河?」
「水の国はその名の通り、水に富んだ国、海だけでなく、河に関してもかなりの数が存在する。もちろんその中には炎の国に繋がるものもある」
「なるほど」
「やけに詳しいな、さすが情報屋というべきか」
「元だよ、それにそこは俺たち月の国とっての故郷でもある」
「え⁉」
「俺たちの国は元々炎の国と水の国の間に位置した、綺麗な河がある国だった」
「……」
「戦争のどさくさに紛れた連中に俺たちの国は滅ぼされ、今は水の国領だ」
「……そうか」
「そこを取り戻してくれたのなら炎の国まで安全に送り届けると約束する」
バルターは真剣な目で俺とスティーブを見る。
「スティーブ行こう! 水の国へ!」
俺はスティーブを見る
「奇遇だな、俺も同じことを考えていた所だ」
スティーブも決意に満ちた目で見つめ返す。
こうして、次の目的地が決まった俺たちだったが、この時の俺たちは水の国がとんでもなく、人の業の深い国だと言うことをまだ知らない。
その後俺たちは黒板のある会議室で座らさていた。
そこで眼鏡をかけ、教師のような恰好をしたクラスチェに授業のようなものを受けさせられていた。
「なんなんだこれは⁉」
俺は謎の状況に思わず叫ぶ。
「はい、そこ静かに!」
クラスチェが少し偉そうに指示棒で俺を指す。
「なんでお前が先生みたいになってんだよ!」
「まずは形からと言うだろう?」
そうバルターが水の国について詳しい奴がいるから、そいつに話を聞いてから作戦を立てようということになり、この部屋で待たされていたのだが、いきなりやって来たクラスチェが突然授業を始め出したのだ。
「なんでお前なんだよ!」
「僕が詳しいからですよーだ」
クラスチェは舌を出して挑発する。
「なんだかこいつに教えられるのはムカつく」
「先生にそんな態度をすんじゃあ、ありませーん、課題増やしますよ?」
「課題なんかあるのかよ⁉」
クラスチェは自分の立場が上と分かるや否や俺に偉そうな態度を取る。
「くそ、こいつ」
「お、なんだ? 先生とやるか?」
俺とクラスチェは睨み合う。
「おい、こんな時にいちいち張り合うな」
「そうだ、クラスチェ、お前は任務となると人が変わるんだ、これも任務と思え」
スティーブとバルターが呆れた様子で俺たちを注意する。
「ちっ、仕方ねえな」
「ぶーぶー、仕方ない、バルター様がそういうなら真面目にやりますよ」
やっとまともに水の国の解説が始まった。
「それではちゃんと始めます。まず水の国は永らく鎖国している国です」
「鎖国か」
「ええ、他国にかなりの警戒心を抱くリーダーによって守られる水都です」
「水資源とか敵は多そうだもんな」
「ええ、ですがここまで頑なに他国と関わろうとしなくなったのは今のリーダーに代わってからだそうです」
「……徹底的な秘密主義者か」
スティーブは何か考えるような表情でぼそりと言う。
「ええ、国境に壁を隔てて、そこには必ず兵がいます。今までと違い、正面から突破するのは得策ではありません」
「じゃあどうするんだよ?」
「内部の人間から入れてもらうしかありませんね」
「鎖国してるのに内部の人間に協力を得るのなんか不可能に近くないか?」
俺は疑問をクラスチェにぶつける。
するとクラスチェは得意をそうに胸を張ると、ポケットから何やらカードのような物を取り出し、見せつける。
「ふふん、この僕を誰だとお思いです? 様々な国でバルター様と共にスパイをしてきた僕ですよ。既に、水の国に入るためのパスポートは持っているんですよぉ」
「うわっ、普通にすげえ!」
俺は驚き褒めてしまう。
「そうでしょう? もっと褒めてもいいんですよ!」
クラスチェは無邪気な笑顔で笑う。
「……納得いかねえわー」
俺は何故こんなバカっぽい奴がスパイ得意なのか納得がいかなかった。
「まあ、いいや僕は向こう旅商人ってことになっているから、その助手ってことであと二人くらい連れて行けます。そうして内部の情報や突入ルートを作るというのが僕の作戦です」
「上出来だ、クラスチェ」
「えへへ」
バルターが褒めると嬉しそうにクラスチェは笑う。
「クラスチェとプラス二人そっちで選んでもらって潜入するという作戦だ。何か意見はあるか?」
バルターは潜入する二人を選ぶことを提案する。
「選出条件は?」
スティーブはバルターに質問する。
「そうだな特にはない、クラスチェはスイッチが入ると優秀だ。情報集などはこいつ一人で上手くこなすだろう、だがもし何かあったとき、こいつは戦力にならん、護衛として小型と大型を使える奴が一人ずつ欲しい」
「……俺が行く、鼻が利き、毒見も出来る俺は潜入向きだ」
スティーブが真っ先に立候補する。
「スティーブなら問題ないだろう」
バルターは強く頷く。
「この中だと岩谷が一番長い。お前も来い」
スティーブはこの俺を誘う。
「え⁉ 俺かよ!」
俺は誘われるとは思わず、驚いてしまう。
「戦力なら申し分ないと思うのだが」
スティーブは少し寂しそうな顔をする。
「いや、一応これ、潜入なんだけどな……まあ、スティーブがやりやすいならそれでもいいと思うが」
バルターは少し困った表情をする。
「へっへっへ、せいぜい頑張れよ、助手二号」
クラスチェは企んだ表情で握手を要求する。
「ああ、よろしくしようや、商人様」
岩谷は強くクラスチェの手を握る。
「痛い、超痛い、力入れすぎだバカ!」
クラスチェは岩谷に手を握られ悶えている。
「(不安だ……)」
バルターは呆れた様子でこの光景を見る。
こうして岩谷とスティーブ、そしてクラスチェの潜入任務が始まる。
このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございます。
区切りは微妙ですが、いちおう今回から新章が開幕しました。
おそらくこの醜美鎖国水都 アルファラス編はキングバックで一番長い章になると思います。
それだけ、内容も一番濃いものなると思います。
これからもキングバックをよろしくお願いいたします。
いつも読んでくださる皆様にお願いがあります。
ブックマーク、評価、感想などお願いいたします。
クオリティがアップすること間違いなしです。
どちらにせよ、次回でお会いできるのを楽しみにしております。




