決戦前
木の国との決戦を控えた岩谷たち、みんなそれぞれの覚悟を持って準備にあたる。
キングバック33話「決戦前」
木の国から宣戦布告を受けた岩谷たち、太陽と鋼の国の共同体は一週間後の決戦のため各々準備を行っていた。
「治はもういいの?」
病み上がりすぐに訓練場に来た岩谷にカレンは心配をする。
「ああ、ドラゴンと戦ったとき、俺のキングバックは生きていたから、二日もあれば再生は十分だ」
「……そう、なら良かった」
「俺の能力で少し、分かったことがあるんだ」
「何が分かったの?」
「クリサリスストーンズの脱皮条件だ。以前、強くスティーブやカレンに絆を感じたときに、クリサリスストーンズはそれまでと違う姿に脱皮することが出来た」
「確かに、バルターのときそんな感じだったわね」
「だろ? そしてそれぞれの姿はダイヤモンドビートルとはかなり特徴が異なる」
「ええ、正直言って、あなたらしくないキングバックだったんじゃない?」
「ああ、特にタンザナイトバタフライは全然違う」
キングバックの強さ、ステータスはその者の魂の性質に強く影響を受ける。
岩谷の魂の性質上、彼が使うキングバックは必ずパワーが高いモノに寄ってしまう。
しかし、タンザナイトバタフライはパワーが低く、そしてスピード重視のキングバックだ。
これは岩谷の魂の性質と全く逆といってもいい。
「ダイヤモンドビートルはいつでも出せるんだが、他は今まで出そうと思って出せたことがないんだ、でも今ならペリドットスタッグは必ず出せる気がする」
「じゃあ出してみて」
「ああ、出て来い、ペリドットスタッグ!」
岩谷がそう叫ぶと、クリサリスストーンズのレンガが剥がれ落ち中からペリドットスタッグが現れる。
「うそ、ほんとに出せたじゃない!」
「このペリドットスタッグを見て何か思うことはないか?」
「うーん」
カレンは少し考え込むと、ペリドットスタッグの剣を指さす。
「やっぱりこの特徴的な二本の剣かしら」
「そこなんだよ、これはどう見てもカレンのホワイトブレイドの影響が強いと思うんだ」
「確かに、拳で戦うってイメージが強いわね」
「そして何よりカレン、君が傍にいないとペリドットスタッグは出せないんだ」
「前にタンザナイトバタフライが出せないって言っていたけど、もしかしてその時……」
「ああ、スティーブは近くにいなかった」
「なるほど、様々な姿に何時でもなれるなら、最強じゃない? って思ったけど、そう簡単にはいかないものね」
「ああ、仕方ないな」
「でも条件が分かっただけでもいいじゃない」
「そうだな」
するとカレンはふと思い付いた疑問を上げる。
「でも、そうなら、ダイヤモンドビートルは一体誰なのかしら?」
「さあ? その辺は俺もよくわからん」
「それで? 今日はこのことを言うために来たの?」
カレンはこちらをきょとんとした表情で見てくる。
「いや、それを踏まえて色々と試したいことがたくさんあるんだ。出来れば、その練習に付き合ってくれると助かるんだが」
「ええ、いいわよ、さあ見せて頂戴」
岩谷とカレンは決戦の日まで共に訓練に勤しんだ。
一方スティーブはというと一人薄暗い部屋に篭り何かの作業をこなしていた。
「(……これは少々賭けになるかもな、だがホルンは確実に俺とやることになる。これくらいは耐えて見せるさ)」
スティーブは机の上にすり鉢やビーカーなど様々な機材を散乱させ、その上に置かれた一つの小瓶をポケットにしまった。
そして約束の日
岩谷たちはセンドウに集合していた。
「では作戦どうり、岩谷と俺たち鋼の国は正面から突撃だ。いいな?」
ドラゴンはそう言うと、岩谷の背中を軽く叩く。
「いいぜ」
俺は快く返事をした。
今回もスティーブは岩谷と離れて行動する。
「俺たちは別動隊として行動し、ホルンが来たらお前たちの所へ行かぬように食い止める」
「いやあ、ホルンなんて大物、相手したくないっすね」
ティッカロが苦い顔をしている。
「ホルンの相手は俺一人で務める、お前はノールの護衛だ、ノールは兵士でも何でもない、だから命を懸けて守れ」
「へいへい、了解っす」
「正直俺はノールを連れて行くことには反対なんだがな」
岩谷はノールを今回の作戦に参加させることには終始否定的であった。
「大丈夫です、治の足は引っ張りません!」
ノールは張り切った表情で岩谷を見る。
「いや、そういう意味じゃないんだが……まあ、ノールは俺と同じ言いだしたら聞かないタイプだからなぁ、よし、もし何かあったら、こいつを囮にして逃げるんだぞ」
岩谷はティッカロを指さす。
「ちょっと、それ冗談にしてはキツイっすよ」
すると、スティーブと同じ別動隊所属のユラジオ(第4話にて登場した太陽の国の数少ない能力者、岩谷ほぼ同年代)がソワソワしている。
「どうしたんだよ、ユラジオ?」
「い、いや、砂の国の時、僕は参加出来なかったから実戦なんて初めてだし、緊張しちゃって」
「あん時は、突然だったからなぁ」
「心配することはない、お前の実力、この俺が良く知っている。落ち着いて行動すれば、問題はない」
そうしてスティーブがユラジオの肩を優しく叩く。
「は、はい、頑張ります」
ユラジオは恥ずかしそうに照れている。
「さて、そろそろ来るはずなんだがな」
スティーブは時間を気にしている様子だった。
「ん? 何を待っているんだ?」
「ああ、事前に決戦場を密偵に調べさせているんだ」
「密偵? そんな奴うちにいたか?」
「知らないか? 最近まで捕虜にしていたクラスチェだ」
クラスチェ(第4話に登場、センドウに来た岩谷たちをつけていて返り討ちに会った少し間抜けな男、月の国出身)
「あーあいつか、あんな奴に任せて大丈夫か?」
岩谷はイマイチ信用していない様子だ。
「そんなぁ、僕だってやるときはやるよ!」
すると岩谷の真後ろにクラスチェが現れる。
「うわぁ! いきなり、後ろに現れるな!」
「へへん、こう見えても僕は凄腕の密偵なんだ、全然気付かなかっただろ?」
「ちっ、前はスティーブにあっさり見つかったくせに」
岩谷はクラスチェの弱い所を嫌味っぽく言う。
「匂いでバレるなんて反則だよ! 自分は気付かなかったくせに棚に上げないでよ!」
「なにぃ! このザコ能力が!」
「そっちこそ、パワーだけの低速ゴリラが!」
「なんだと!」
「ぐぬぬ!」
岩谷とクラスチェは子供のように互いに睨み合う。
「こんな時にいちいち喧嘩するな、二人とも」
スティーブが二人の仲裁に入る。
「でもよぉ」
「ついこの間バルターから、こいつを使えってクラスチェをよこしてきたんだ、あいつの情報量は目を見張る物がある、その情報収集の一部をこいつが担っていたんだ、少しは信用してやれ」
「はあ、仕方ねえ、わかったよ」
岩谷は渋々了承し、引き下がる。
「それで、何か分かったか? クラスチェ?」
「ええ、それが、奴ら今日になって一気に木を生やしたみたいで」
「やるとは思っていたが、直前で有利なフィールドに変えてくるとはな」
「どうするんだ?」
「受けた勝負を棄権するとなると、後々面倒だやるしかない」
スティーブは少し苦い顔をする。
「でも木のおかげで上手く敵の配置は調べられました」
「視界が悪くても、何処から敵がくるのかが分かっていれば上出来だ。上手くいけば逆に奇襲に使える」
「(なんだよ、クラスチェ意外と出来るじゃないか)」
俺は口に出すのは癪だが、心の中で静かにクラスチェに感心をした。
「よし、準備は整った、みんな木の国に向けて進軍だ!」
スティーブがそう叫ぶと、皆「おおー」と声を上げる。
遂に木の国との決戦が始まる。
このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございます。
いよいよ木の国との戦いが始まります。岩谷やスティーブだけでなく他のサブキャラクターとの戦いも必見です。これからもキングバックをよろしくお願いします。
この木の国編をもっとカッコいい名前の~編って付けたいんですが、まだ思いついていません。
次の投稿の月曜日までには付けるつもりなので、次も見て下さい。
また、いつものことですが、今後の私のモチベーションにつながるので、ブックマーク、評価、感想など良ければよろしくお願いいたします。




