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キングバック   作者: 君子な在る虎
王蟲森林大戦編 ~若輩の女王と燃羽の仮面~
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展望の一角獣と燃羽の仮面

岩谷たちに宣戦布告をしに来たホルン、彼らの木の国は戦力的に不利だ。

なのに何故彼らは岩谷たちに挑むのだろうか?

 キングバック32話「展望の一角獣と燃羽の仮面」



 ホルンがセンドウにて宣戦布告を行った前日、すなわち岩谷とドラゴンが決闘を行った日の木の国ではあるやり取りが行われていた。


 木の国の諜報兵士長が報告に女王の間に入ってくる。

「女王! 今入った情報によると同盟関係にあった太陽の国と鋼の国が一騎打ちを行い、共に相討ちになったそうです」


「一体何故そんな事態に?」

 女王は事態が理解していないといった表情だった。


「おそらく、その同盟とやらが、砂の国の打倒までという話だったのではないか、それで共倒れになったのならいいのでは?」

 ホルンが推測を語る。


「いえ、奴らどうやら共同体とやらになったようで」

「は⁉」


「いずれ、奴らはこちらに攻めてくる可能性が高いです」

「いつの間にそんな事態に……」

 女王は放心した様子だ。


「クソ、鋼の国は俺たちのように土地の力はないが、単純戦力なら、我らと張る。それにスティーブと岩谷が加わるとは」

「それだけではありません、現在敗北した月と砂の国は彼らの配下になっています。何かしらの支援もあり得ると思います」

「奴ら、滅ぼさずに味方に付けて大きくなってやがる」

 ホルンはギリッと歯を食いしばる。


「それで、我々との戦力差はいかほどだ?」

 女王が冷静に聞く。


「どれほどの支援があるか、わからないためなんとも言えませんが、鋼の国のドラゴンは規格外の能力です」

「具体的に言え」

 女王が少しきつく言う。


「こちらが確認したのは20mを超えるキングバックです。い、言いづらいのですが、おそらく女王のキングバックではまず勝てないでしょう。それと相討ちになった岩谷もそうだと言えます」

「……そうか」


「チイラは以前岩谷に負けている、俺も似たようなものだ、戦力差は歴然というわけか」

 ホルンは苦い表情をしている。


「はい、残念ながら、勝機はリーダーのスティーブを先行して倒すことしかありません」


「奴が前線に出て来なければ済む話だ!」

 女王が呆れたように叫ぶ。


「いや、奴は必ず出て来る」

 ホルンが真剣な表情で言い張った。


「なぜそう思うのだ?」

「俺の能力は敵が多ければ多いほどエネルギーを奪って強くなれる。大型はその遅さから俺の餌食だ。だから、俺を止めるためにスティーブは絶対に出て来る」


「ですがそれだとスティーブ一人にホルンさんが出ることになり、他がきつくなると思われます」

「いや、それしかない、私はホルンの意見に賛成だ」

 女王が強く賛成する。


「女王! それはリスクが」

「それは承知だ、だが、戦力が劣る以上ホルンにスティーブを討って貰うほかはない」

「た、確かに女王の言う通り、それが戦力の劣る我々の勝ち筋なのかもしれませんが……」

「私とチイラでドラゴンと岩谷を抑えるしかなかろう」

「正直ホルンさん抜きで守り切れるかどうか」

「勝利確率はどれくらいと思うか?」

「……10%あればいい方だと思います」

 諜報兵士長は悔しそうに告げる。


「うむ、仕方ないか、火や水に負けるよりかは幾分ましだろう」

「女王……」

 諜報兵士長は女王が負けたその先のことを考えていることに悲しむ。


 女王の間では何とも言えない暗い沈黙が流れる。

 そしてその沈黙を破ったのは女王でもホルンでも諜報兵士長でもなかった。


「それは困りますねえ、女王リリィ殿」

 ボイスチェンジャーが入ったようなノイズが入った声が女王の間に響く。


 さっきまでは誰もいなかった柱に知らない男がもたれかかっていた。

 男はフードを被っており、顔には仮面を付けている。

 その仮面は置時計を模した仮面で短針が真下、長針が真上を向いており、ちょうど6時を表している。

 だが、その仮面のおでこには取ってつけたような違和感を放つ角が仮面のアンバランスさを醸し出している。



「誰だ! 貴様!」

 ホルンは警戒した様子で男の正体を聞く。


「私ですか? 今あなた方に正体は現せられません、ですが皆、私のことを展望の一角獣、ユニコーンと呼んでいます。どうぞ、そちらで良ければ」

  男は丁寧ではあるがどこか飄々としており、とてつもなく胡散臭い。


「いいだろう、ユニコーンどうやってここまで来た。それとお前はどこの国の者だ?」

「侵入方法ですか? とても親切な方が私をここまで案内してくださいました。それと私はどこの国の人間でもございません。少し目がいいだけのただの傍観者ですよ」


「案内? 誰か裏切り者がいるのか? いやそれは後だ、そんな傍観者がここに何をしに来た?」


「ええ、私は傍観者ではありますが、あなたたちにここであっさり負けて貰っては面白くありません」

「お、面白いだと?」

「ええ、試合は拮抗するほど面白いでしょう?」

「俺たちの戦いを面白いだと?」

 ホルンは眉間にしわを寄せユニコーンを睨む。


「ホルンよせ、それでユニコーン我々に拮抗して欲しいのなら何か考えがあるのだろう? さっさと言え、話はそれからだ」

 女王はユニコーンをじっと見る。


「さすが、女王、話が早い!」

 すると、瞬きをする間もなくユニコーンは女王の目の前に現れ跪き、女王の手にキスをするようなポーズをする。


「貴様、リリィから離れろ!」

 ホルンは走って近づき、グロウシードを出すとユニコーンを攻撃しようとする。


 ユニコーンは振り向きホルンを見ると手をホルンの方に向ける。

 女王はその時、仮面からユニコーンの目を見た。

 その目は海の如く全てを飲み込むような青色に、魚の鱗がキレイに円形を作ったような模様があった。

 美しい目であったが、その目からはとてつもない冷徹さと殺気を感じさせ、一瞬で女王の全身を駆け、震えさせる。


 女王は自分のキングバックを出し、持っている剣をホルンとユニコーンの間に差し込み、強引にホルンを止める。

「り、リリィ⁉」

「待って、ホルン」

 女王は女王の威厳というよりも、年相応の女の子らしい声でホルンを止める。


「あ、ああ、分かった」

 ホルンは落ち着き、少し後ろに下がる。


 ユニコーンは向けた手を引っ込める。

 すると、飄々とした様子に戻る。

「いけないいけない、ついうっかり、殺しちゃうところでした、私のいけない所ですねぇ、つい衝動的に動いてしまうのは、女王リリィ、私を止め下さり、ありがとうございます」

「いや、こちらの者が失礼した」

 女王はホルンが無事だったことに安堵し、同時に男の異常さに冷や汗をかく。


「それでは、そんな賢明な女王を称え、一つこれを差し上げましょう」

 ユニコーンは顔全て覆うほどの仮面を渡す。

 その仮面は鋭く歯が生えそろい、こちらを嘲笑うかのような口をしている。

 目は右目しかなく、鋭い目つきで眼光を飛ばしている。

 その目には赤色に黒色が侵食する模様をしている宝石ようなものが5つ埋め込まれている。

 宝石のようなものはそれぞれ同じ形はしておらず、歪さを感じる。


「これは?」

「それはイカロスの仮面、簡単に言えばキングバックの隠された力を呼び起こす物、使い方は簡単です。その仮面を付け、力を欲するだけ」


「……こんなものが存在したのか?」

 怪しいと思うが、何故か引き込まれるものがあり、つい聞いてしまう。


「一時的なものですが、その力は膨大です、しかし、その振れ幅は人によります。私の目が語るに女王、あなたが最もこの仮面を手にするに相応しい」

「た、確かに、この仮面から感じる力、凄まじい」

 女王は圧倒された表情で仮面を触る。


「ふふふ、一度その力を体感してみるといいでしょう。しかし、その片目の仮面に付いている、宝石の数、それが使うことのできる回数です、ご使用は計画的に、それでは私はこの辺で、陰ながらあなたたちのこと応援していますよ」

 ーーまあ、岩谷を困らせるための駒としてですが……


 ユニコーンはその場から消えた。


「こ、この力があれば……」

 女王は心を奪われたようにイカロスの仮面をじっと見ている。


「リリィ、こんな怪しい仮面の力を信じるのか?」

 ホルンの言葉でハッとした女王は

「いや、だが、あの男が嘘を言っているとは思わん、最後の手段としては考えていいのではないだろうか?」

「……そう、だな」

 ホルンは心配と期待の入り混じった表情で女王を見ていた。



 

このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございます。

今回は木の国視点でのお話でしたね、何やら胡散臭い男ユニコーンが登場しました。

彼はこのキングバックのストーリーの中でかなり重要な人物なので覚えておいてください。

そして次回からはとうとう木の国との戦いが始まります。今後をお楽しみに。

また、今後の私のモチベーションにつながるので、ブックマーク、評価、感想など良ければよろしくお願いいたします。

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