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キングバック   作者: 君子な在る虎
ただ勝つだけではいけない決闘編 ~優しい嘘と辛い真実
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英雄

ドラゴンについた嘘を見抜かれた岩谷。

世界の真実をカレンに告げるためホテルに赴くが……

 キングバック31話「英雄」



 俺は突然誰かに部屋に連れ込まれ、押し倒される、かと言って何かされるわけではなく、俺を押し倒した誰かは俺の上でじっとしている。


 部屋はいい匂いがする、俺はスティーブをほど鼻は良くないが、それでも分かる。とても男の部屋の匂いではない。


 そして何より俺のお腹に押し付けられる柔らかい感覚から女性しかないと連想させられる。


「ねえ、何か言ってよ!」

 俺を押し倒した誰かから聞き覚えのある声を聞くと、ドスッと俺の腹に重い拳を入れる。


「うぐっ、そ、その声はカレン」

「何か、私に言いに来たんでしょ!」

 さらにもう一撃腹に入る。


「ごはぁっ(スティーブ、既にもう砕けそうです)」

「ねえ、何か言ってよ……」

 今度は急にしおらしくなる、さっきまでは気づかなかったが、カレンの声は少し鼻声である。きっとつい先ほどまで泣いていたのだろう。


「ご、ごめん、もう知ってたんだな」

「うん」

「大事なこと、黙っててごめん」

「……どうして?」


 とてもシンプルだが、答えにくい

「そ、それは……でも俺はカレンともっと一緒にいたい! この気持ちは嘘じゃない」

 俺は自分の本当の気持ちをぶつける。


「私ね、あの時好きって言われてとても嬉しかった。私も一緒にいたいよ……でもこの戦争が終わったら、私たちは元の世界に戻るんでしょ?」

 どうやらカレンは本当にドラゴンとの会話を聞いていたらしい。


「ああ……」

「忘れちゃうんでしょ?」

 カレンは涙目でこちらを見る。

「そうだ、ここでの記憶は全て忘れ、元の人生を歩む。それが正しい歴史だからだ」

 俺はカレンに真実を告げることが辛かったが、それでも誤魔化さずに話した。


「やっぱり、そうなんだ、ドラゴンや鋼の国のみんなのこと、そして治のことも全てなかったことになるんだ」

「……そうだ」

「私たちは正しくない、いらない歴史なんだね?」

「……」

「私たち、一体なんのために戦ってるんだろうね?」

 カレンはさらに涙を流して話す。

 ――この先を伝えるのが辛い。

 でも嘘をつくのはもっとしたくない。


「……この世界を正しく直さないと、歴史が変わって俺たちの存在自体が消える」

「そんなこと、分かってるよ! 理屈では分かってるのよ……でもこれからも戦いはまだまだ続く、でもその先に待ってるのがこれって」

「……」

 俺はカレンになんて声をかけたらいいかわからなかった。

 俺自身そこまで深く考えて来なかった、この戦争に勝ったその先まで。

 いや本当は考えないように目を背けて来たのかもしれない。

 カレンに出会って、今まで考えて来なかったことを後悔する。


「ねえ、このまま休戦を続けようよ、そしたらもっと一緒にいられるよ」

 カレンは俺の肩を掴み俺に覆いかぶさり、耳元で、すがるように俺に甘い言葉をかける。


「……それはいいな、俺もカレンと一緒にいたい」

「だったら……」

「でも、それは出来ない」


 --俺にはやらなくちゃいけないことがある。

 世界を戻さない限り、この世界で苦しむ人は増えるばかりだ。

 俺たちの幸せのためにこの世界を継続するのは間違っている。


「……やっぱりその選択をするのね」

「ああ、それでは何も前に進まない、俺たちは進むしかないんだ。それが、みんなが正しい世界で生き残る唯一の方法だから」

 俺はカレンの肩を掴んで引き離す。


「あぁ、あなたって人は本当に……英雄ではあるけれど、それは世界に対してだね」

 カレンの涙が、俺の頬に落ちる。

「ごめん、ごめん……」


 --俺はただ謝ることしか出来ない、だけど、これでいい、俺にはただ向き合うことしか出来ないから、世界の英雄にはなれども、個人の英雄にはなれない。


 カレンがまた、俺に抱きつく、泣くカレンを俺にはただ抱きしめることしか出来なかった。

 少しの間泣いた後に、カレンは口を開く。



「もういいわ、ありがとう、十分泣いたから」

「え?」

「私が好きになったあなたはこういう選択をする人だもの」

 そう言うと、泣いてはらした顔で笑って見せる。


「カレン……わがままな俺をそれでも好きでいてくれてありがとう」

「えぇ、あなたみたいな人、私しか受け入れられないんだから」

「ああ、そうだな」

「元の世界に戻ってもまた私を見つけてね」

「もちろんだ、どの時代でも必ず見つけて見せる」

 俺たちはそのまま強く抱き合った後、深い口づけを交わした。



 次の日、ホテル内、カレンの部屋

「さて、じゃあ、今日から張り切って行きましょうか!」

 カレンは朝から元気のいい様子で寝ている俺の頬をつつく。

「あ、ああ、そうだな」

 --切り替えすごいな。

 俺が驚いた様子でカレンを見ていると、カレンがニコッと笑う。


「案外あっさりしてるって思った?」

「え! あ、ああ、そうだな」

「元の世界でも私を見つけてくれるんでしょ?」

「ああ」

「なら、私、怖くない、この約束破らないでよね。破ったら、先に私が見つけてしばいてやるんだから」

 カレンはポキポキと指を鳴らす。

「あ、ああ、見つけるように頑張ります」

 --記憶を失っていてもカレンなら、やりそうだ



 俺とカレンが外で二人で歩いていると、ドラゴンとアレンの二人に出会う。

「やあ、昨日は……いややっぱり何でもない」

 アレンが何かを悟った表情でうんうんと頷く。

「いや、アレン、一体何を悟った⁉」

 カレンが顔を赤くし、俺は焦った様子でアレンの肩を揺らす。

「ハハハ、言うのはヤボだろう?」

 するとドラゴンが俺の肩をがっしりと掴む。俺はゆっくりとドラゴンの顔を見る。

 ドラゴンは目に涙を浮かべながら一言

「カレンを頼む」

「は、はい!」

 ドラゴンとアレンは手を振り、その場を立ち去ろうとする。すると、スティーブが声をかけてくる。

「お取込み中悪いが、俺たち共同体にお客さんだ、みんなすぐ来れるか?」

「あ、ああ、行こうみんな」

 俺は右手でドラゴンやアレンに行こうと合図し、左手はカレンの右手を握っていた。

 すると、俺の右肩をポンポンと軽く叩き、小さく呟く。

「良かったな」


 そして俺たちはスティーブに連れられ、センドウにて俺たちが作戦会議室に使っている部屋まで連れられてくる。


 なんとそこには木の国のNo.2ホルン・O・スレッカーが部屋の壁にもたれて立っていた。

「ホルン⁉ なぜここに」

「よお、久しぶりだな、岩谷、今日はただ、一つ伝えに来ただけだ」


「彼がホルンか」

 アレンが少し警戒しながらホルンを見る。


「前から随分の仲間が増えたものだ」

「伝えに来たと言うが一体何を伝えに来たと言うんだね?」

 ドラゴンが冷静にホルンに問う。

「ただ一つ宣戦布告に来た」

 ホルンは余裕な佇まいだった。


「そっちからくるとは予想外だったな、何が、目的だ?」

 スティーブがホルンを睨む。

「そうだな、条件を出しに来た、放っておいたら、お前ら、勝手に俺の国の森の深部まで侵入して来るだろう? こっちにも事情ってもんがある、どうせ、いずれ決着はつけなければならない。だったら先に色々と決めていた方が余計な被害は出ないってもんだ」

「なるほど、一般市民を戦いに巻き込まないためってことか、賢明な判断だ」

 スティーブは頷く。


「木の国との国境付近の木は切り倒しておいた。そこで俺たちとお前たちによる総力戦と行こう、そこなら双方どちらにも市民への被害は少なかろう?」

「日取りはいつだ?」

 ドラゴンが質問を投げる。

「一週間後の昼1時だ」

「昼でいいのかよ?」

 岩谷が疑問を上げる。


「土地はこっちの要望を通すんだ、時間くらいお前らの有利な時間でしてやるよ」

 ホルンは以前余裕の態度だ。


「なるほど、俺はいいと思うが、皆はどう思う?」

 スティーブが他のみんなに聞く。

「俺はいいと思うぞ」

 ドラゴンは真っ先に賛同する。

 それに合わせ、俺を含め他のみんなも賛同する。

「よし、決まりだな、なら一週間後、待っているぞ」

 ホルンはそう言い残すとその場から一瞬で消えた。


「順番的に次は木の国と思っていたが、まさか、向こうから来るとはな」

 ドラゴンが腕を組んで考え込む。

「もしかしたら、あまり時間をおいて私たちの連携を強化させたくないのかも知れませんね」

 アレンがドラゴンの疑問について答える。

「だが、俺たちの総合戦力は向こうより上だ、だがなにかそれだけではない何かを感じる。向こうには何か勝つための秘策でもあるのだろうか?」

 スティーブは心配そうな表情をする。


「考えすぎじゃないのか?」

「だと、いいのだが……」


 岩谷に考えすぎと言われたスティーブだが、スティーブの勘はよく当たる。

 果たして木の国との戦い、予想される通りの結果になるのだろうか?


このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございます。

今回で本当の意味で岩谷は鋼の国の人たちと仲間になれましたね。

あの夜カレンと何があったかはお察しください。

明日の投稿をお楽しみください。

また、今後の私のモチベーションにつながるのでブックマーク、評価、感想など良ければよろしくお願いいたします。

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