嘘が下手
ドラゴンとの戦いが終わり、再び関係を取り戻す岩谷たち。
しかし、岩谷には皆にある嘘をついていた。
キングバック30話「嘘が下手」
俺たちはその後、今回のことを祝うため、宴会を開いていた。
騒ぐ者もいれば、静かに料理を食べる者もいる、だが、皆太陽の国と鋼の国がこれからも共に続くことを心から喜んでいた。
俺もスティーブや鋼の国の人たちと話をしていた。その時、脳内にローキットの声が聞こえる。
「ちょっと、岩谷!」
「ん? ああパチ神か」
「話があるんだけど?」
「……分かった、皆俺ちょっと外に夜風を当たりに行ってくる」
俺は宴会を抜け、1人町の外に出る
「それで話ってなんだ?」
「あなた、これで良かったの?」
いつになく、ローキットの声は真剣だった、いや、正確にら真剣というより、心配をしているような様子だった。
「いいんだよ、これで……」
俺は少し歯切れ悪く、言う。
「あなた、あの時相討ちに見せ掛けたでしょ、本当はあなたのダイヤモンドビートルはあの時生きていた」
「……やっぱりお前は気付いてたか、そうだ、最後に残るのは太陽1つでなくてはならない、そうでないと歴史が変わる」
「それを分かっているのに、あなたは一見相討ちになったかのように見せ掛けた、それは何故?」
「……俺たちの関係を壊したくなかったんだ」
「そう……でも、それはあなたを信頼する彼らに嘘をついたことになる、既に世界は今回のあなたたち太陽の国の勝利を受理している、いつかはバレるわよ」
「……いいんだ、これで」
「あなたが他人を騙すなんてね」
「……」
「ふふふ、あなた、変わったわ、この世界に来て」
ローキットは嬉しそうな声で俺のことを笑う。
「何がおかしいんだよ!」
「ウフフ、何でもないわ、でも1つ言っておくわ岩谷、あなたね、嘘をつくのが下手よ」
そう言い残すとローキットの声は聞こえなくなった。
心なしかローキットは嬉しそうだったと感じたが俺は何故、ローキットが嬉しそうだったのかわからなかった。
「なんなんだよ、あいつは」
俺が少し悪態をついていると、後ろから声をかけられる。
「岩谷、今、少しいいか?」
俺が振り向くとそこにはドラゴンがいた。
「あぁ、いいぜ」
俺とドラゴンは隣に座り、夜空を見る
「なぁ、岩谷」
「どうしたんだ、急に?」
「聞きたいことがあるんだ、相討ちになったあの時、本当はお前のダイヤモンドビートルは生きていたよな、なのに何故、相討ちに見せ掛けた?」
ドラゴンは真剣な表情でこちらを見る。
「はぁ、早速バレてんじゃないか」
岩谷はローキットの言うようにすぐドラゴンに嘘がバレたことにため息をつく。
「当事者の俺をそう簡単に騙せるものじゃない」
ドラゴンは以前真剣な目つきでこちらを見る。
その目は、こちらが下手なことを言うとすぐに沸点に到達せんばかりだった。
「……どっちかが勝つと関係が崩れるとおもったんだ」
岩谷は気まずそうに下を向く。
「だが、いずれはバレる嘘だ、そうなったら、関係は悪化かもしれない。そんな簡単なことが分からないおまえではない、本当に相討ちにすることも出来たんじゃないのか?」
「それは……」
「何か、他ならない事情があるんじゃないのか?」
ドラゴンはこちらをじっと見る、さっきと違いその目はただこちら疑っている懐疑の目とは違う、どこか慈愛があるものであった。
このとき、2人の話を影からこっそりと聞くカレンの姿がそこにはあった。
「(一体2人は何の話をしているのかしら?)」
「実は……」
俺はこの世界が何故作られたか、俺たちがこの後の世界から来たこと、何故こんな戦争が起きているのかなど世界の仕組みを淡々とドラゴンに説明した。
「うーん、正直話が唐突過ぎて全ては理解出来ていないが、今まで感じていたこの世界への違和感のような物の正体がわかった気がする、つまりお前たち太陽が勝たないと、俺たち全員が歴史改変によって消える恐れがあるのだな」
「ああ、理解が速くて助かるぜ」
「だから、わざわざ、こんな回りくどいことをしてまで、相討ちに見せ掛けたのか」
「すまない、たとえ騙すことになったとしても俺たち2つの国が優劣なく、行くにはこれしか思い付かなかった」
「……いや、よくこんな苦行をやろうと思ったな、成功したとしてもいつかバレたとき今みたいに理解されなかったら憎まれるかもしれない。そんなリスクを1人で背負うなど……到底普通では出来まい。いや、最も良い結末のため、その身を焦がすのはお前にとって普通なのだったな」
ドラゴンはこれまでで岩谷の性格を理解していた。
「ああ、そうだよ、諦めが悪いのが俺の普通だ」
「なら、そんなお前に怒ることは俺は出来ないな、その勇気に免じて、これから俺たち鋼の国は全力でお前たちをバックアップしよう」
そう言うとドラゴンは岩谷に微笑んで見せる。
「あ、ありがとう、ドラゴンが話のわかるやつで良かった」
「俺はそこまで頑固じゃないさ」
「そう、だったな」
「だが、表向きは同盟、いや共同体を維持した状態で通す、これでいいか?」
「いいと思う、後でスティーブにも伝えてく、拒否されたら、説得か考え直しになるが」
「俺の方からもアレンなど、一部の者には伝えておく」
「すまない、ドラゴンに多くの人を騙すことに付き合わせちまって」
「気にするな、ただ、岩谷、カレンにはお前自身で伝えろ!」
「……分かった」
「カレンは俺の娘同然だ、泣かせるなよ」
ドラゴンはこれまでには見せないほどの鋭い目つきで睨んでくる。
「……善処します」
ドラゴンの気迫に少しビビッてしまった俺であった。
俺はスティーブにドラゴンとの会話内容を伝える。
「こういうことになったんだ、すまないな、事後承諾で」
「どうせ、そんなことだろうと思ってたよ、あの時の俺の忠告なんて、無駄だったな」
「す、すまん、勝手な行動ばかりで」
俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになり、頭を下げる。
すると、スティーブは優しく俺の肩をポンっと撫でる。
「いや、治、お前が大人しく言う事を聞くような奴ではないことは知っている、それを分かって放っている俺の責任でもある」
「でも、俺は今後も勝手なことするかもしれないぞ」
「好きにしろ、治を縛っては真の力はでないからな」
「あ、ありがとう、スティーブ」
「そんなことより、カレンのとこに行かなくていいのか?」
スティーブの指摘に俺は少し憂鬱な気分になる。
「そ、そうだった、はぁ」
俺はため息をつく。
カレンにこの事実をどう伝えるべきか、考えたくなくなる。
「ハハハ、なんだ、言いづらいか?」
スティーブは微笑みこちらを見る。
「笑い事じゃねえよぉ、なんて言われるか」
「真剣にぶつかってこい、そうすればお前の思いは伝わるさ」
スティーブは俺の背中を強く叩く。
「痛っ、わ、分かったよ、ここでぐちゃぐちゃ言ってても変わらないもんな、よし、行ってくる!」
俺は心を決め、カレンに会うことにする。
「ああ、当たって砕けて来い」
「砕ける前提ですか⁉」
「アッハッハッハ、なんとかなるさ、さあ早く行った行った」
そう言ってスティーブは精神的にも肉体的にも俺の背中を押す。
「ちくしょう、他人事と思って」
こうして俺はカレンを探していたが、町のどこにもいなかった。
たまたま出会った兄のアレンに聞くと、ホテルの自室にいるかもしれないとのことだった。
「えーと、どこの部屋だっけ? カレンの部屋は? アレンに部屋番聞いときゃ良かった。仕方ない、ちょっと他の人の迷惑になるかもしれないけど、おーい、カレンどこだぁー」
ホテルの廊下には静寂に包まれ、俺の声だけが響く。
「……フロアが違うのかな、あんま騒ぐと迷惑だよな、大人しくフロントに聞きにいくか」
俺は諦め、廊下を後にしようとする。
すると、俺がすれ違った部屋の扉が突然開き、俺は服の襟を掴まれ、部屋の中に引きずり込まれる。
「のわあぁあぁああああぁ」
バタンっと部屋の扉が閉じ、俺は暗黒の部屋に誘われた。
このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございます。
今回は前回の相討ちの真相がバレる話でしたね。
岩谷はこの嘘を隠し通すつもりだったようですが、嘘が下手なので即バレしてました。
ですが、ローキットは仲間の関係のために嘘をついた岩谷のことを人として成長したと思っているようです。
岩谷は嘘が下手なほど、嘘をつくことに慣れていませんから、そんな彼が他人のために嘘をつくように変わったことが親のように嬉しいのでしょう。
少し長くなりましたが今日はこの辺で、続きは明日投稿いたします。
また、今後のモチベーションにつながるので、ブックマーク、評価、感想など良ければよろしくお願いいたします。




