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キングバック   作者: 君子な在る虎
月下砂漠編 ~砂城の独裁王と月の迷走者~
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かけがえのない夢の系譜

テューラーを追い詰めた岩谷、彼はテューラーに何を思うのか?

 キングバック25話「かけがえのない夢の系譜」



「ひぃぃ、こ、こっちにくるなぁ!」

 テューラーは酷く怯えた様子で、後ろに下がる。

「おいおい、これだけ色々とやっておいてそれないだろ、テューラーさんよ、そろそろ罪の清算と行こうぜ」

 今度は岩谷が真顔でテューラーににじり寄る。テューラーは必死に逃げ、ピラミッドの外の間際まで行く。


「へへへ、外にさせ出れば、まだ、俺は負けない、部下たちが外にいるんだよ!」

 焦った様子で叫ぶテューラーに岩谷は少し首をかしげて言う。


「俺は外から堂々とぶち破って入ってきたんだぜ、外が安全なわけないだろ」

「は?」

「なんなら、そこから外を見てみろよ」

 テューラーはすぐさま外の様子を見る。


 そこには戦いを止め、敵に投降する砂の国の兵士たちの姿があった。

「な、なぜだ?! なぜ、戦わん! まだ、我が貸したコピーは消えきっておらんぞ!」

「わからないか?」

 岩谷は真顔でテューラーを睨む。

「何がだ!」

 テューラーは眉間に皺を寄せ、岩谷に叫ぶ。



「あいつらはな、自分の命を懸けてまで、戦うつもりはないんだよ」

「な、な、な、これまで、我が、どれだけこの国を憂い、民のため、注力してきたと思う!」

 散々独裁政治をしてきた男は怒りを顕にする。


「……確かにあんたは、この地を国として建て直し、民を豊かにしたのだろう」

「だったら、なぜ、なぜ? この私を助けん!」

「やり方が不味かったんだよ」

「な、なん、だと!」

「あんたはこの国を恐怖で支配した。恐怖政治は一時的なしのぎにはなるだろう。だかな、それは長くは持たない。人は家畜ではない、抑圧された者たちには必ず、反抗心が生まれる。恐怖でずっと押さえているうちは言うことを聞く。しかし、何かの拍子にその権威が失われると、あっという間にその地盤は崩れる」

「ぐ、ぐぎぎ、我は、我は間違っていない! 恐怖で支配して何が悪い? 1人じゃ何もできない、従うしか能がないアホどもを恐怖でまとめて何が悪い!」


 テューラーは怒りの形相で騒ぐ、それでも岩谷は冷静な様子で話す。

「俺はあんたがどういう状況でこんな考えに至ったかは詳しくは知らない。だから、あんたを否定はしない。だが、これは全てあんたが選んだ選択の結末だ」


  岩谷はテューラーのやってきたことの全てを否定しなかった。

  なぜなら、国というものには時として強引に政治を進める者が必要な時代があることを知っていたからだ。

  皆の意見を聞く、これは国の地盤が固まっていて初めて意味を成すからだ。

  だから、テューラーの行動、全てを否定しない。

  だか、その独裁者という者の末路はいずれも孤独に終わる。


「嘘だ、我は間違っていない、なぜ、なぜ、国を救った我が、国を建て直した我が、こんな、最後には1人ぼっち、こんな惨めな目にあうのだ!」


「あんたはこの国を建て直した、これは事実だ。しかし、あんたは民を人としてではなく、家畜として救った。恐怖という檻が壊れた今、なぜ羊が羊飼いを救う?」

 岩谷の言葉にテューラーははっとする。

「は、ははは……そうか、これは俺の選択が故か」

 テューラーは膝を着いて涙を流す。


「もう、終わりだ、テューラー」

「ああ……一思いに殺せ」

「……それはしない、あんたには生きて罪を償ってもらう」

 岩谷は少し突き放すように言う。


「はぁ?! なにぃ! この我にこれ以上の生き恥をさらせと言うか!」

「国の功労者を無闇に殺すのはいただけない」


「……ふざけるなよ、我が正しいと思って行動した結果、死ぬのなら、後悔はない。だが、その敵に情けをかけられ生かされるだと! この、我を、舐めるなよ!」

 すると、テューラーはピラミッドから飛び降りようと足をかける。


「待て! そんなことをして何になる!」

 岩谷は止めようと近づこうとする。

 すると、岩谷の前の床から、槍が生え、その行く手を阻む。


「ふ、ふふふ、我は貴様の言う通りになんざ、ならん。貴様みたいな、ガキに絆されて、生きるくらいなら、死ぬ」

「ば、バカな、やめろ!」

「バカ? そうさ、我はバカだ。だが、我は正しい。我は過去の我を肯定するために、今の我を殺すのさ、じゃあな岩谷、はぁ……この我が最後にみるのが、貴様みたいなガキとは……」

「よ、よせ!」


 そしてテューラーはトンっと背中から、空に飛んだ。

「行け! クリサリスストーンズ!」

 クリサリスストーンズがテューラーを掴まえようとするが、ピラミッドが変形して邪魔をし、クリサリスストーンズはテューラーを掴み損ねる。


「クソォ!」

 岩谷の叫びが響く。

「俺の言葉によって自分が変わるのが嫌で、だから、自殺だと、なんて、愚かなんだ。いくら変わったとしても自分は自分だろ……」



「ははは、最後に我は奴らに勝ったぞ!」

 テューラーは最後に岩谷の思う通りに行かなかったことを笑う。

 しかし、落下するまでには意外と時間がかかる。


「(……結局、我は何が、したかったのだろうか)」

 そんなことを考えながら、テューラーは最後に横目で自分が落ちる地面を見る。

 そこにはこちらに1人走ってくる男がいた。


「(……あいつは? まさか、ルインか? )」

 我はこちらに向かうルインと目が合う。

 ルインは必死に、血眼になってこちらに向かって走る。


「(あぁ、そうか、我が()()()()()()()は……)」



 そして、少し、微笑んだテューラーは静かに地面に落ちた。






「テューラー様が死んだ?」

「ああ、落ちたとこお前も見たろ」

「あぁ、やっと俺たちは自由になるのか?」

「どうだろうな、俺たちは捕虜になるんだろ」

 捕まった砂の国の兵士たちがざわつき始める。

 その騒々しさとは対称的にに静かに立つ男が1人、ルインはテューラーの亡骸を無言で見ていた。



 ふと昔を思い出す、あれは約8年前、当時この国が滅びて久しく、都市と言えるものはなく、小さな村が点々とあるだけだった。


 こんな砂ばかりの国、作物が育つはずもなく皆、明日の食糧のことしか、頭になかった。

 俺も死んだ親父の代わりに、母や兄妹の分を調達するのに必死だった。


 村の近くの獣は全て食い尽くし、他の食べ物になりそうな物もない。

 だから、今回は少し遠出することにした。


 だが、これが甘い考えだった。

 砂漠に慣れているからこそ、砂漠を舐めてしまった。

 砂漠のど真ん中でぶっ倒れる。

「はぁ、こんなとこで死ぬのかよ」

 次第に身体が動かなくなっていき、意識が薄くなる。


 そんなとき誰かが声をかけてくる。

「おいガキ、お前、死んでんのか?」

 顔を上げる元気もない、しかし辛うじて指をピクリと動かす。


「生きてるな、おい、ザック! 水寄越せ!」

「はい、テューラー様」

 テューラーと言われる男は、受け取った水を俺に無理やり飲ませる。

 勢いよく流れ込む水に俺はむせる。


「ごっ、ゴホッゴホ」

「うん、生き返えりやがったな、ガキ」

「うぅ、あ、あなたは?」

 俺はテューラーという男を見る。


 テューラーは偉そうに自分の胸を叩く。

「我の名はテューラー・ナットレー、滅びたこの国を再建させる男だ! 存分に敬えよガキ!」

「お、俺の名はルイン・カッシュです」


「ほう、ではルイン、今、お前は我に命を救われたな、そうだな?」

 テューラーは俺の髪を掴み、顔を覗いてくる。

「えぇ、そうですが?」

 テューラーの覇気に流され、つい肯定してしまう。

「なら、ルイン、今から貴様は我の臣下だ! いいな!」

「え! ちょっまっ!」

「俺はここにデカイ都市を作る、お前にも色々と働いてもらうぞ!」

 テューラー大きく手を広げる。


「いや、まだ、俺は臣下になるなんて」

 強引な話の進め方に俺は困惑する。


「そうだ、お前はここらの出身じゃないな、お前の出身地まで案内しろ! そこの奴らも部下にする!」

「全然、話聞かないじゃないか!」

 俺が呆れていると、ザックと言われる俺と同じくらいの歳の少年が俺の元に来る。

「すいません、彼、あんな感じで自分の町も追い出されたんです。だけど、彼の言う国造りに僕も興味があって、一緒に彼を支えてあげてくれませんか?」


 その場で理想を語る青年テューラーとその臣下を名乗るザック、その2人に俺は圧倒される。

「はぁ、仕方ないな、どうせ、死ぬとこだったんだ、あんたらのその提案に乗ってやるよ」

「これから、よろしくね、ルイン」

 ザックが無理やり握手してくる。

「じゃあ次はルインの町だな、この我に着いてこい!」

 テューラーはいきなり走り出す。


「ちょっ、テューラー、俺の町はそっちじゃねえって」

「ん? だったら先に言うがいい!」

「言う前に動きだしたんだろが! はあ、こんなんでこの先いけるのか?」

 ルインは呆れたポーズをする。


「アハハ、きっと大丈夫だよ、僕たちなら」

 ザックは満面の笑みを浮かべる。

「……仕方ねぇ、心配だし、俺がコイツらについててやるか」



 ーーこれは昔の記憶、今となっては過ちの始点、だけど、俺にとってのかけがえのない夢の系譜。

あぁ、あの時は楽しかった。




「……テューラーあんたは、昔から、自分勝手で、人の話を聞かない、どうしようもない、バカだったよ……だけど、俺は夢を語るあんたの顔が結構好きだったな」


 ルインは下を俯き、顔を隠し、砂を少し濡らす。



 岩谷は遅れてピラミッドを降りて来て、俯くルインに申し訳なさそうに言葉をかける。

「……ルイン、すまん、お前との約束、俺、守れなかった」

「いや、いいんだ、この最期、彼らしい。いつも勝手な……彼らしい」

「ルイン……じゃあ俺は、スティーブの所に戻る」

「あぁ、ありがとう、岩谷」

「……(そっとしておこう)」

 そして俺はその場を後にした。



 テューラーの死を最後に砂の国の兵士たちは全て降参した。

 テューラー亡き今、フラットコピーが消え、キングバックを持つ者はほとんどいない。この事実が、彼らを大人しくさせた。

 そして俺は砂の国の兵士たちをドラゴンたち鋼の国に任せ、スティーブも鋼の国の救護班に任せた。

 外傷はほとんどなかったが、精神的問題が強く、今はそっとしておくしか、出来ない。


 ある程度事態が落ち着いてあることに気が付く

「バルターがいねぇ! あの野郎、どこに行ったんだ?」


 辺りの人に聞いても何処に行ったかわからないと言う。

 砂の国の連中にも聞いたがほとんど情報を得られなかった。


「確実かはわからないが、心当たりはあります」

 その声がする方へ顔を向けると、ザックと言われる兵士たちのリーダーがそこにいた。


「どんな情報でもいい、教えてくれ」

「テューラー様がバルターの国の民たちを住まわせるために与えた村がある。そこに向かった可能性がある」

「なるほど、確かにそっちに行ったかもしれないな」

「俺が案内しよう」

 するとルインが突然、案内役を買って出た。


「だ、だが、お前は少し休んでいた方が……」

 岩谷はテューラーのことで、ルインのことを心配する。

「問題ない、そこは俺の故郷だ」

「いや、そういうことじゃなくてだな」

「……何かをしているほうが気が楽だ」

「……分かった。じゃあ案内をルインに任せる」

「しかし、バルターを見つけてどうする? 落とし前でもつけさせる気か?」

 ルインは手で自分の首を切るような動きする。

「違げぇよ、だけどなこのまま逃げてばっかりのあいつを放っておけない、もちろん自分がやったことのケジメもつけさせるが、殺しはしない」


 そして俺とルインはバルターを追って、ルインの故郷に向かう。



この度はキングバックを読んでいただきありがとうございます。

今回は少し、しっくりこないというか、テューラーの撃破を素直に喜べない最後でしたね。

明日の投稿で砂と月の国編が終わります。最後までお楽しみに。

また、私の今後のモチベーションにつながるのでブックマーク、評価、感想など良ければよろしくお願いいたします。

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