自己暗示
バルターのキングバックの謎が解けたという岩谷、いったいどんなトリックなのだろうか?
キングバック20「自己暗示」
カレンのホワイトブレイドが岩谷のキングバック、クリサリスストーンズを庇い、とうとう岩谷一人だけが残ってしまう。
しかし、岩谷はバルターの能力の謎が解けたと告げる。
「なあに、今、お前の能力の謎が解けたんだよ」
「……何?」
「いろいろ疑問に残ることが多かったんだよ。お前。そもそも大型でも小型でもないだろ?」
「そうだ。だがそれがどうした? 俺は一度もそんなこと言っていないが」
「ああ、言ってねえ。だがよ、それなら単純に小型を拡大しているわけじゃない。だから、身体を変形させたり、材質を変える能力とは別ではない。その一環だ。違うか?」
「それを答える必要が俺にあるか?」
バルターはめんどくさそうに答える。
「いやない、じゃあ勝手に話す。つまり、お前のキングバックは自由自在に大きさを変え、変形し、材質も変わる。そして幻惑術も使う。そんなスーパーハイブリットキングバックってわけだ」
岩谷は一度少し大袈裟にビックリしたような仕草を取る。
「白々しい、さっさと続きを話せ」
バルターはイラっとする。
「はいよ、なんて、そんなキングバックはこの世にない。いやもしかしたら探したらあるのかもしれないが、お前に限ってそれはない」
「……」
バルターは少しムッとした表情をする。
「何故ならそんなバカげた力があったら、そもそもテューラーの手下なんかになる必要がない。俺たちにもあっさり勝てる、もっと強力なキングバックを作ればいいからな。しかし、あんたはこれだけ時間をかけてもまだ俺を倒し損ねた。それに戦闘中、切られた部位をわざわざ回収していた。つまりそこがお前の限界なんだろ。打撃や斬撃は何とか出来ても、燃やしたり、消したりなんかみたいな物理的消失には弱い。そうだろ」
「……そうだ、だが今のお前にその手段があるというのか? お得意のビームは太陽が隠れて今は使えないぞ」
「そうなんだよな。この砂嵐早く消えてくれないかな~」
「それは無理だ。これは人為的に作り出されたものだからな」
「ふーん、じゃあ仕方がないか。まあ太陽圧力なしに考えるしかないな。あっそうそうまだ謎解き終わってないんだけどさ」
「まだあるのか?」
バルターは呆れた様子だ。
「ああ、あんまり俺の能力とは関係ないけど、バルター、お前、スティーブを避けすぎだ」
それまで少し余裕のある表情だったバルターが突然、焦り混じりの顔になった。
「……お前、まさかそこまで」
岩谷は得意そうな顔で答える
「お前ずっと、スティーブに対する警戒が強いすぎる、ここでも、暗夜高山でも、一度もまともに戦おうとしなかったよなあ」
「……俺は幻術が得意なんだ。だから警戒して使った。ただそれだけだ」
バルターは汗をダラダラとかきはじめる。
「いや、それは違う。幻惑術解除が得意なスティーブ相手にそれは有効的ではない」
「スティーブが幻惑術に強いなんて知らなかったんだ」
「もっとマシな嘘をつけ、動揺が見え見えだ」
「くっ」
バルターは悔しそうな顔をする。
「逆に、幻惑術を解く手段を持たない俺たち相手に、お前は一度も幻術を使わなかった。いや、使えなかったが正しいか?」
「クソっ」
「いや、もう少し正確に言うと既に使っていて、俺たちには使うことが出来なかった、ということだろ?」
「もういい、早く言えよ」
「つまりお前は自分自身に幻惑術を使っていたんだろ?」
岩谷は真剣な顔でバルターに言う。するとバルターは手で顔隠し、腹をもう一方の手で抱えて笑う。
「くくく、アハハ! まさか、まさかだ、お前にバレるとはな。確かに俺の能力は二つに一つ、自分自身をも騙すほどの幻惑術、究極の自己暗示それが俺の能力の正体だよ。全く大誤算だ。これを見抜かれたのは初めてだよ。そこまでお前が鋭いとは、はあ……真っ先に消しておくべきだった。だが、どうする? ここにスティーブはいない。お前にこれをどうにか出来る手段があるのか?」
岩谷は少しニヤッとして言う。
「いや、ない」
「はは、答え合わせご苦労様」
バルターは小馬鹿にした態度をとる
「でもよ、お前の幻術を使った、自分のキングバックへの究極の自己暗示、これを突破する方法は今の俺にはない。だけど少しは時間稼ぎになっただろう?」
「お前、始めからそれが目的で」
「ああ、俺自身と向こう。どっちも時間が欲しかったんだ」
岩谷は親指で自分の後ろを指した。それは大部隊の方角だった。
「やられたよ、それで十分な時間稼ぎは出来たのか?」
「うーん、俺の方は調整バッチリだけど、まだ向こうは少しかかりそうだ。もうちょっと待ってくれないか?」
「バカかこれ以上は待たん」
「ですよねー、うん、だったら今、見せてやるよクリサリスストーンズの新たな姿を!」
岩谷の掛け声と共にクリサリスストーンズの内側から光が溢れ、クリサリスストーンズのレンガが剥がれ落ち、中からまだ見たことのないキングバックが現れる。
その姿は白く美しいシルバーの身体を持ち、その身体のあらゆる箇所に新緑のように明るい線や模様があり、さらに胸に大きく一つ美しいオリーブグリーンの宝石のようなものが埋め込まれている。
さらに最も特徴的なのは背中に背負っている二本の剣である。その剣は両刃とはいえ、片側はのこぎりのようにギザギザであった。
そしてギザギザな方を向かい合わせにしており、持ち手ではなく、刃を上に向くように背負っていた。
肩の辺りから大きく刃を見せている。その姿はまさしくクワガタムシのようであった。
「古代エジプト人が愛した太陽の石のように美しい。うん、お前の名はペリドットスタッグだ」
岩谷がそう名付けるとペリドットスタッグは背中に背負った双剣を構える。そしてインフィニティムーン向かってに斬り掛かる。
インフィニティムーンは即座に身体をダイヤモンドのように硬化させた。
そして何度も切りつけたが一向に傷は付かない。
「新しい姿がなんだ! 剣じゃ俺は倒せんぞ」
「だったら、これならどうだ!」
次に片方の剣で切りつけた後にもう片方の剣を手から離し、その胴体に向けて拳を振るう。
インフィニティムーンは勢いよく後退し、膝を着いた。
そしてその殴られた胸部にはヒビが入っていた。
「クソ、だが、こんなんじゃ、決定打にはならんぞ」
「まあ、見てろって」
するとペリドットスタッグは双剣の内側(ギザギザしている刃側)の持ち手の近くに飛び出て、付いている接続用ジョイント同士を接続し、剣同士を合体させる。
そして、ひるんだインフィニティムーンに合体させた剣をクワガタの顎の如く向けた。
その双剣は合体したとき、一瞬少し邪悪さを感じさせる紫色に光った。
そのまま合体した双剣でインフィニティムーンを挟み込もうとペリドットスタッグは近づいて行く。
一瞬光った紫色にバルターは何か悪い物を感じる。
「(⁉ ヤバイ、あの剣、まずいと俺の腹の奥底が告げている、気がする)インフィニティムーン! 奴の腕を攻撃しろ!」
インフィニティムーンは即座に右腕を触手に変化させ、ペリドットスタッグの合体した双剣を叩き落とした。
「く、そう簡単にはやらせてはくれないってか?」
ペリドットスタッグは合体させた双剣を拾った後に合体を解除した。
「(あの剣、概念兵装か、条件は恐らく、あれで挟むこと、それは絶対回避しなくては……)」
そしてペリドットスタッグとインフィニティムーンの攻防がふたたび始まった。
(注)概念兵装とは
特定条件を満たすことで強制的に発動する能力を所有する武器のこと
この度はキングバックを読んでいただきありがとうございます。
バルターのキングバック、インフィニティムーンの正体が分かりましたね、彼の能力は幻惑術ただ1つです。
作中でも岩谷が言っていましたが、自分自身に幻惑術をかけ、強引に変幻自在さを表現していました。
ですが、能力が分かった所で岩谷はこれをどう突破するのでしょうか?
今後をお楽しみに!
今日はあともう1本、間話の方も投稿します。良ければそちらもお読みください。
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