液体であり、金属であり、ダイヤモンドみたいに硬い物ってなーんだ?
セイリスの死により、暴走するスティーブ、彼を止めるために前に進みたい岩谷であったが、その前には月の国のリーダーであるバルターが立ちはだかる。
キングバック17話「液体であり、金属であり、ダイヤモンドみたいに硬い物ってなーんだ?」
テューラーは人質に取ったセイリスを利用し、スティーブを罠にかけようとした。
しかし、セイリスはスティーブを助けるため、罠であることを告げる。
結果スティーブは罠にかかることはなかったが、代わりにセイリスが死ぬ羽目となってしまう。
スティーブは単身テューラーを追いピラミット内部に侵入し、岩谷たち少数部隊はスティーブを追いかけようとしたが、その前に立ちふさがったのは砂の国と同盟を結ぶ、月の国のリーダーであるバルターだった。
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「まあなんだ、ベタな奴を言うとするか、奥の大部隊に行きたければ、この俺を倒していけってな」
岩谷はにっと口角を上げて言った。
「そいつは骨が折れそうだ。はぁ、だが今回は特別だ、お前たち3人同時に特別講習を行ってやる!」
すると、バルターの影から次々と濁った液体が溢れ出て来た。
謎の液体が彼の周りに充満すると、今度は彼の前に液体が集まっていき、どんどん膨張していき、大きい球体状になる。
その球体は突然形が変貌し、人型の大型タイプのサイズに変化した。
その灰色のキングバックはとてもさっきのような液体のようには見えず、まるで筋肉質な人間をそのまま大きくしたような見た目に、三日月の模様が入った、仮面をしたキングバックだった。
「うん、お前たち相手ならこれが一番いいだろう。やるぞインフィニティムーン」
バルターは手を腰に当て、こちらがキングバックを出すのを待っている。
「バルター、お前のその間違いここで俺が正す。行けクリサリスストーンズ!」
岩谷はクリサリスストーンズを出し、向かわせる。
クリサリスストーンズはバルターのインフィニティムーンに向けて、右手のパンチを繰り出す。すると、インフィニティムーンは左腕で受け止めた。
その時ギィーンと激しく、鈍い金属音が鳴り響く。
「この感触、この硬さ、正に鋼の国のキングバックのそれだ。バルター! お前のキングバック、さっきまで液体だったはずだ! いや、とてもその筋肉質な身体から、金属音などなるはずがない!」
「……液体が鉄のように硬くて何が悪い? それともしなやかな筋肉で、金属質で悪いか? ということかな? 否そのどちらでもない」
バルターは煽るように、首を横に振る。
「どちらでもないだと?」
「……もういいだろう。これ以上喋って、敵に塩を送るのは逆に失礼というものだ。さっきの言葉で俺のキングバックの正体を推理することだ。もっともお前のキングバックの能力なら、気づいたとしても意味は成さないと思うが」
「そんなことやってみないと分からない、だろうが!」
クリサリスストーンズは何度もインフィニティムーンに攻撃を仕掛けるが全て金属の身体で防いでしまう。
しかし、インフィニティムーンは何度も攻撃を受けた時点で、一瞬ふらつく。
「うーん、その石人形思いのほかパワーが強いな、これ以上、まともに受けるべきではないとみた」
「カレン、今だ!」
突然フィッシュマンが叫び、カレンのキングバック、ホワイトブレイドが現れるとクリサリスストーンズのわき腹の辺に抱き着き、タックルを行った。
クリサリスストーンズはバランスを崩し、ホワイトブレイドと共に、その場に伏せる形で倒れる。
クリサリスストーンズが倒れた次の瞬間、さっきまでクリサリスストーンズがいた辺りをミサイルのようなものが通り過ぎていき、インフィニティムーンに直撃し、大爆発を起こした。
まだ爆発の煙でどうなったかわからない。
「やったか?」
フィッシュマンは顔をしかめて言った。
「おい! フィー、そのセリフはフラグだぞ」
岩谷がフィッシュマンに指さして注意する。
「ん? 何がだ?」
フィッシュマンは何故そんなことを言われたのか分からない様子だった。
「まあ、見てろって」
爆発の煙か薄くなり、インフィニティムーンがどうなったかと言うと、インフィニティムーンは自身の右腕が変形させ、身体全体を守る盾を作り、爆発を防いでいた。
「あーあ、ほら言わんこっちゃない、フラグを立てるから」
岩谷は呆れた様子で首を横に振る。
「いや、俺の言ったことと防がれたことに因果関係は感じられないと思うのだが!」
フィッシュマンは岩谷の発言に食いつく。
「いーや、お前が「やったか?」なんてベタなことを言ったのが悪い」
「もう! 二人ともくだらないことで言い合ってる場合じゃないでしょ!」
カレンがキレた口調で怒ってきた。
「……はい。すみません」
まるで、決められた台本のセリフであるかのように二人同時に謝る。
するとインフィニティムーンの盾のように変形した右腕は再び液体のような状態になり、さっきまでの普通の右腕の形に戻っていった。
「材質だけでなく、形態も自由に変化出来るみたいだな」
「そうね、でもまだまだ弱点はわからない。練習の成果を見せるわよ治!」
「ああ、いくぜ」
クリサリスストーンズとホワイトブレイドはインフィニティムーンへの連携攻撃を始めた。ホワイトブレイドが素早い斬撃で隙を作り、クリサリスストーンズの強力な一撃を確実に決める作戦である。
この連携は通常のキングバック相手には非常に有効な攻撃手段であった……
ホワイトブレイドの両手に付いた刃でインフィニティムーンを追い詰め、その身体に何度も斬撃を入れる。しかし、その身体には傷一つ付いてはいなかった。
普通、いくら硬い金属といえど、切りつければ少なくとも薄っすらとした切り痕は残るはずである。
「私の攻撃で傷一つ付いていないわ、……まさか、今度は身体の材質をダイヤモンドにでも変えたというの?」
「でもダイヤはハンマーで割れる!」
岩谷がそう叫んだ瞬間、ホワイトブレイドが瞬時にクリサリスストーンズのパンチの軌道線上から離れ、そのパンチは勢いよくインフィニティムーンにヒット。
そのパンチはインフィニティムーンにどんどんめり込んで行った。
しかし、その状態はダイヤを砕いたというよりは、沼に腕を飲み込まれたという状態に近かった。
「少し遅いな、このままその右手いただくぞ」
インフィニティムーンの胸にめり込んだ右手を引き抜こうとクリサリスストーンズは抵抗するが、逃がさまいとインフィニティムーンは右手でクリサリスストーンズの右腕を掴んだ。
「離せ、バルター!」
「そうはさせん、この中でお前が一番厄介だからな。先に潰す」
インフィニティムーンがクリサリスストーンズをより強く引き込もうとした時、ホワイトブレイドが素早く駆け付け、刃の付いた手によるチョップでインフィニティムーンの右腕を切り落とした。
「ぐぅ! ちっ」
バルターはその瞬間自分の右腕を押さえ、痛そうにしている。
クリサリスストーンズはその隙にいっきに沼のような身体から右手を引き抜いた。
そして、一旦クリサリスストーンズとホワイトブレイドはインフィニティムーンから、距離を取る。
「大丈夫? 治」
カレンは岩谷を心配する。
「ああ、助かったぜ、カレン」
インフィニティムーンは切り落とされた右腕を左手で拾い、切断面に合うように右腕を持って行くと、右腕を引っ付けてしまった。
「にしても何でもありだな。あのキングバック」
岩谷は少し困った表情で言う。
「ええ、でもスピードはそこまで速くないわ」
「さっきのバルターの様子を見てみたが、右腕を切り落とされたと同時に右腕を押さえていた。切られたことによる痛覚共有はかなり強めみたいだぞ」
フィッシュマンは遠くから冷静に分析した。
「痛覚共有が強い……つまり元は小型タイプなのかもしれないわね、何かしらの方法で膨張させているのかも?」
「ああ、大型タイプは小型よりは痛覚共有が薄い。だが、痛覚共有が小型並みにあるなら、キングバックの首を飛ばすことで簡単にかたが付く」
ーーだが何故だ? この違和感は? この策で合っているはずなのに、同時に何か、決定的な何かを見落としている気がする
「治? どうしたの?」
カレンが少しボーっとしている俺を心配した様子でこちらを見ている。
「いや、何でもない。やろう!」
「分かったわ、じゃあ、攻撃は私と治、フィーは援護を頼むわ」
「ああ」
「了解だ」
「ちっ、いてて、腕が痛い、実戦は久しぶりで堪えるな、で? 考察タイムはもう終わりか?」
バルターは右腕を軽く回し、顔を少し歪ませて俺たちを見てくる。
「ああ、いつでも来いよ」
「じゃあ、そろそろ、本気を出すとするか、これでも伊達に月の国のリーダーはしてねえ、お前らを一人ずつ確実に潰してやるよ」
何やら、このときのバルターはかなり強気な様子であったが、この理由に岩谷が気付くのはもう少し先の話である。
「その腕、痛くねのかよ、これからもっと飛ばすかもしれねぜ」
「なあに、そろそろ、感覚が戻ってきた頃だ」
すると、急に、バルターの肩から力が失い、両手ともぷらーんとさせている。
「はじめから、こうしておけば、痛みなど問題あるまい」
バルターの余裕な態度は以前変わらない。
このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございました。
今回は初のバルター戦になりました、彼はかなり手ごわい相手になります、岩谷たちがこの困難をどう乗り越えるか楽しみにしていて下さい。
明日もほぼ同じ時間帯に投稿いたしますので、続きが気になったらご覧ください。
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