罠
砂と月の国への進軍を明日に控えた岩谷たちに向こうは先手を打ち、セイリスを人質に取られる。
進軍メンバーが全員揃わない状態での進軍になるが……
キングバック15話「罠」
岩谷たち一行は攫われたセイリスを救出するため、砂の国への出陣を一日早くすることを余儀なくされた。
「なあ、ルイン実際どうやって砂の国へ行くんだ?」
「俺たちが使っている洞窟を改造した秘密の通路を利用する」
ルインは狭い洞窟の入り口を指さす。
「敵の道を使うってのか?」
「ああ、今回は時間の都合上、俺たちが最短ルートを通ると思っている。わざわざこっちに人は割かないだろう」
「だが、いつになっても来ないと分かったらこの通路を使っていることがバレる、ここは洞窟だ、入り口と出口から挟み撃ちになるぞ」
スティーブはルインに疑問点を説いた。
「挟み撃ちになるだろう。しかし俺たちの後ろをつける部隊については大丈夫だ。鋼の国の分隊がセンドウからこちらに向かってきているだろう? ちょうど鉢合わせするだろう、彼らに抑えてもらうといい」
「なるほど、分かった。そのことを分隊に伝えるように連絡係に言っておく」
そしてスティーブは仲間の一人を分隊に向かわせる。
「つまり俺たちは正面の敵を突破すればいいんだな?」
岩谷は張り切った様子で指をポキポキと鳴らす。
「……洞窟内ではお前のキングバックは出すな」
「え?」
「パワーで洞窟が崩れる」
「マジかよ」
「そもそも洞窟内では大型タイプはサイズ的に無理だ」
「……まあ、そりゃそうか。なら仕方ないな」
岩谷は見るからに残念そうな表情をする。
「安心しろ治、敵の小型なら俺一人で大丈夫だ。木端微塵にしてくれる」
スティーブは力の籠った声で言った。
「そ、そうだな、ならそろそろ行こうぜ」
「ああ」
スティーブは真っ先に洞窟に入って行った。
すると洞窟に入ろうとする俺の肩をカレンが軽く叩いてきた。
「ねえねえ、スティーブさんってもしかして」
カレンは少し不安そうな表情でこちらを見てくる。
「ああ、相当切れてる、切れるのはいいが冷静さは無くさないでいて欲しいな……」
「……そうね」
その後俺たちは洞窟の中を進んでいった。すると洞窟の奥の方で話し声が聞こえた。
「砂の国奴らか?」
「おそらくな。皆ここで待っていろ」
スティーブは焦った様子で俺たちを置いて物凄いスピードで一人突っ込んで行った。
そして俺たちが急いでスティーブを追いたどり着いた時には辺り一面にバラバラになったキングバックの残骸で溢れており、その近くにはキングバックを操作していたと思われる人が何人も倒れていた。
「な、何だこれ?」
「遅かったな、治」
スティーブはこちらに振り向く、そのときのスティーブの姿はまるで別人で、修羅のようであった。
「スティーブ、こいつらは」
「自分のキングバックがバラバラになって気絶しているだけだ」
「……スティーブ、焦っているんじゃないか? 焦る気持ちは分かるが……いつもスティーブの冷静さがない、何か失敗をしないといいが……」
「俺は冷静だよ。治」
スティーブは普段と違う鋭い目で俺を睨んで来た。
「あ、ああ分かった」
スティーブの気迫に俺は思わずスティーブから目を背けてしまった。
「(でももし、スティーブに何かあれば俺が止めなければ)」
その後洞窟を抜け、さらに幾度かの敵の待ち伏せに会ったが俺たちは難なくこれを突破し、広い砂漠地帯に出る。
そしてその砂漠の真ん中に立派にそびえ立つピラミットにそっくりな建築物が嫌でも目に入る。
「……あれってピラミットのパクリじゃないか?」
「ピラミットって何? 治」
カレンが不思議そうな顔で聞いて来た。
「いや、何でもない。俺が知ってる建物にあまりにも似ていたからな」
「そうなんだ、見てみたいな」
「……ごめんもうその建物はないんだ(俺が未来から来たとは言えないしな)」
「ふーん、それは残念ね。まあそんなことより、テューラーの指定した時間までに来たけど何も起きないわね」
「一応こちらの使者は送った。あとは向こうがどうでるかだな」
スティーブは少しイライラしている。
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その頃ピラミット内部では
「テューラー様、や、奴らが、鋼の国と太陽の国の連合軍が国境を越え、すぐそこまで来ています!」
「な、何! クソあいつらは一体どこで寝腐ってんだ⁉」
テューラーは手元にあったコップを床に叩きつける。
コップはガラスでできていたため、容易く砕け散る。
「ど、どうやら我らの洞窟を使い待ち伏せを上手く分散させ、突破した模様です」
「ええい、出せる兵は全部出せ。兵にはフラットの行動距離ギリギリで戦ったのちにキングバックが損傷したら、すぐに戻ってくるように伝えろ」
「はい、ですがテューラー様」
「なんだ?」
「連合軍はセイリスの解放を望んでいるようです」
「……なるほど、おいセイリスをここに連れてこい」
「は、ただいま」
「おい、戦士長ザック」
「なんでしょうか?」
ザックと言われる戦士長はさっとテューラーの前に現れる。
「お前は部下を連れて、なるべくバレぬように奴らを包囲しろ」
「……セイリスを解放しないのですか?」
「それはない。奴らはここで全員殺す。それもなるべく絶望させてだ! 分かったら行け、交代しながら奴らを疲弊させるんだぞ」
「……分かりました」
戦士長は少し嫌そうに出て行った。
「それでバルターよ、次はお前の番だ」
「はい」
「貴様は包囲から抜けて来た奴を始末しろ」
「……はい(俺は本当にこれで良かったのだろうか? 人質なんて取る作戦を計画して、それで勝っていいのか?)」
バルターは少し不満げな顔だった。
「おい! バルター、貴様が行かないということはどういう事か、賢いお前ならもちろん分かるよな?」
テューラーは高圧的に言った。
「……分かりました(それでも俺は選んだんだ、仲間のため、これが一番……)」
ルインは何とも言えない表情を浮かべ、深く頷く。
「うん、それでいい、流石は月の国のリーダーだ、頼りにしているよ」
テューラーはニヤリと笑みを浮かべ、ルインの肩を掴むと、耳元でそう呟いた。
テューラーたちがもたもたしている間に、岩谷たち少数部隊は先に大部隊から離れ、辺りを調査していた。
すると大部隊が対峙しているピラミット面の反対の面に突然穴が出現し、そこから次々兵が出てきて、大部隊にバレないように包囲しようとしているのが見えた。
さらにそれと同時に突然、砂嵐が発生し始め、視界が悪くなる。
「まずい、砂漠は奴らのテリトリーだ。大部隊のみんなは気づいてない!」
岩谷はその場から離れようとするとカレンが岩谷の手を掴み止めた。
「ダメよ、私たちの任務は別行動をしてテューラーを叩くこと、ここで見つかっては意味がない。彼らを信じましょう」
ドラゴンたちが危険に晒され、カレンも同じく心配なはずなのに、それでも覚悟を決めたその表情からはそんな感情は一切感じさせない。
「……クソ仕方ない、このまま機会を伺おう(カレンは強いな、俺も見習わないと)」
それから様子を伺っているとピラミットの頂点より少し下の辺りに穴が出現し、そこからセイリスを連れたテューラーが現れた。
「あれはセイリスさんだ! やっぱりあのピラミット内に連れてこられてたのか」
「そうみたいね、テューラーは一体何をするつもりかしら」
するとテューラーは少し笑みを浮かべ右手を胸に当て軽くお辞儀をした後、白々しい態度で話始める。
「連合軍の皆さまわざわざこんな辺境の地までお越しいただきありがとうございます」
これにスティーブはイラっとした様子で返す
「誰のせいでここに来る羽目になったと思っている?」
「いやはや、部下が先走った真似をしてしまい、申し訳ございません」
「……あくまで自分は関係ないと言い張るつもりか?」
スティーブは鋭くテューラーを睨む。
「ええまあ、私としても今回の事態は把握していなかったことですのでセイリス様をお返ししますので、ここは引いていただけませんかね」
「……ここに来る道中かなりの待ち伏せに会った。これでもまだ自分のせいではないと言うつもりか?」
「はい。多くの部下がいるので私の監視が行き届いていませんでした。もし、気になるのならその待ち伏せをしていた部下たち全員ここで殺してもらっても構いません」
「自分の部下などどうでもいいと言うことか!」
「ええ、言うことを聞かない部下などいない方がましですから」
「ふん、自分が立てた待ち伏せ作戦が上手く行かなかったから、部下の責任にするというわけか、ゲスめ」
「……想像はご勝手にどうぞ」
テューラーの白々しい笑みは相変らず変わらない。
「もういい、貴様の顔など見たくもない。さっさとセイリスさんを返せ」
「分かりました。すぐ返しますのでこちらにいらしてください」
そのとき一瞬、テューラーはさっきの白々しい笑みはなりを潜め、不気味な笑みをニヤリと浮かべる。
だが、スティーブは焦りからかその一瞬の表情を見逃し、駆け足でピラミットに向かって行った。
しかし岩谷たちの角度からはスティーブの向かう先にある、砂山に敵が潜んでいる所が見えた。
「まずい、あんな奴の招きなんか乗ってはダメだ! スティーブ!」
このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございました。
新年あけましておめでとうございます。
今年もキングバックを書いて行くので今後ともよろしくお願いいたします。
また、今後は読みやすさや、多くの方に見てもらう機会を増やすため、一話を短くし、投稿頻度を増やしていこうと思います。
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