バルターの覚悟Part3
これは分割編集版です。
表現が多少変化していますが内容に変更はありません。
キングバック14話バルターの覚悟Part3
次の日岩谷たちは中心地に向かいそこで、今後の作戦を立てていた。
そして作戦を立て始めて三日目経った。
「とりあえず、情報交換も終え、大まかな指針は決まったな」
スティーブは疲れた顔で言った。
「はい、テューラーの能力は自分のキングバックのコピーを他人に貸し付ける能力です。一度にどれだけコピーできるのかは不明ですが、無尽蔵となると、我々に長期戦は不利。よって短期決戦で決めるしかありませんね」
あまり作戦会議に参加せず、カレンと修行していた俺にアレンが分かりやすく説明してくれた。
「なるほど、短期決戦か」
「岩谷君は訓練で作戦会議には参加していなかったので、今聞きますけど、あなたは少数部隊でいいですね?」
「少数部隊?」
「ええ、大部隊でテューラーのメイン部隊を抑えて、その隙に少数部隊がテューラー本体を叩く作戦です。おそらく彼はコピーに力を割かれてそれほど強くないと思われるので」
「いいぜ、任せろ」
「ですが、一番のダークホースはバルターでしょうね、どういった行動をしてくるか、正直彼の仕掛ける幻惑術は我々鋼の国は太刀打ち出来ません」
「そこは俺に任せろ、サーセイバーで幻惑術を解きに回る」
「ええ、というわけで作戦ではテューラーの部隊を抑える大部隊、テューラー本体を叩く少数部隊、幻惑術を解くために動くスティーブさんの部隊の三つで行動します」
「ああ、侵入ルートは慎重を期して最も発見がされにくいルートで行く、作戦開始は明日の明朝だ。各員それまで英気を養っておくように」
スティーブが作戦会議を終わらせようとすると、突然作戦会議室に焦った様子のティッカロが入って来た。
「た、大変なことになりました!」
「どうした、ティッカロ!」
「はあはあ、ついさっき入った連絡です。セイリスさんが入院している病院が襲撃されました。そして人質に取られた模様です、怪我人多数、抵抗した医者などを含めた数名は死亡いたしました!」
「な、なんだと!」
スティーブは机を叩き、勢いよく立ち上がる。
スティーブが勢いよく立ったことで、椅子が倒れる。
「現地に残された置手紙によると今日の午後1時までに彼の構える城に来ないとセイリスさんの命はないとの事です」
「こ、これは先手を打たれましたね。リミットはあと4時間、最短ルートに変えて今から向かってギリギリの時間です。ですが作戦が明日のため、我が国の兵の半数はまだセンドウに滞在中、すぐに招集をかけても間に合いません」
アレンは苦い顔で言った。
「ああ、これは確実に罠だ。奴らは兵を分断させて始末する気だ」
スティーブ下を向き、握った拳を机にぶつけた。
半ば諦めムードになっている中ドラゴンが口を開く。
「行こう。スティーブの大切な人なんだろ、だったら救出に行くべきだ」
「だ、だが多くの仲間を私の私情で勝ち目のない戦いに巻き込むわけには……」
スティーブは辛そうな声で言う。
「大丈夫だ、俺たちの仲間にはこれをお前だけの私情だなんて言う奴はいねえ、だから行くぞ」
ドラゴンは笑顔で言った。
「あ、ありがとう、ドラゴンさん」
そして皆急ぎ足で出撃準備を始めるなか岩谷はその場から走り出した。
「おい、どこに行くんだ治!」
「ちょっと待っててくれ、説得したい奴がいるんだ!」
そういうと岩谷は走っていきたどり着いた先は牢獄だった。
ここ数日岩谷はある男を説得しようとここに足を運んでいた。
その男はルイン・カッシュ、以前の砂の国の襲撃の際に岩谷と激しい死闘を繰り広げた男だ。
「なあ、ルインお願いがあるんだ」
「……岩谷またか、今日で一体何日目だ? 俺はアンタらの国の仲間にはならないといったはずだが」
ルインは背中を見せ、こちらを向こうとしない。
「……なんでだ? あんたの国のテューラーって奴、いい噂なんか聞かねえじゃねえか」
「確かに、テューラーは見た目こそ威厳があるように見えるが、実はそこまで先のことを考えていない、無計画な男だ。尊敬はしていない」
「だったら……」
「だとしてもだ! 俺は、俺たちの村は奴よって助けられた、事実奴は国を立て直したんだ。尊敬はしていないが、感謝はしている。裏切ることは出来ない」
「……奴は病院を襲撃したんだ、それで前リーダーだったセイリスさんを人質に取った。戦士じゃない者の死人も出た。こんな奴がお前らの国のトップでいいのかよ! お前は!」
「…………」
ルインは無言は無言を貫く。
「もういい、お前に頼んだ俺がバカだったよ。じゃあな」
岩谷はルインに背中に軽蔑の目を向けるとその場から去ろうとした。
するとルインは岩谷を呼び止める。
「待て、仲間にはならないが、案内くらいはしてやる」
すると岩谷は驚き、勢いよく振り返った。
「本当か?」
岩谷は目を輝かせる。
「ああ、国の王の失態は部下である俺が拭ってやらねばな、お前たちへの貸しは返す(テューラー、あんたを止めるのは俺の役目だ)」
ルインは心の底で強く決意する。
「ありがとう、これで少しは希望が出て来たぞ」
看守から鍵を貰い、ルインを牢から出したとき、別の牢屋から誰かが岩谷に向け話しかける。
「なあ、俺も出してくれよ」
岩谷は声のする方に向くとそこには白髪で短髪の男がいた。
「……お前は確か……(こいつ誰だっけ?)」
岩谷は首を傾げ、記憶の中を探ろうとする。
「センドウであんたらに捕まった、クラスチェだよぉ。俺、実は月の国出身なんだ。今出してくれたら、バルター様を説得して見せるぜ。だから出してくれよぉ」
クラスチェはすがりつくような態度で言う。
「お前、月の国出身だったのか……いやないな、お前はダメだ。もう少しそこに入ってろ」
岩谷は冷たくクラスチェを突き放す。
「えええぇ、なんでぇえ?」
「なんとなく、……少しむかつくから」
「雑だな!」
「まあ、どうせお前を出してもバルターを説得するのは無理だろうしな、じゃあな」
「そ、そんなぁ~」
そして岩谷はルインを連れてスティーブたちと合流した。
「治、まさかそいつは」
スティーブは岩谷が連れて来た人物を見て目を丸くする。
「ああ、砂の国出身のルインだ。戦いには参加しないけど、道案内は頼めた」
「ですが、敵国の人間に道案内を頼むのは少しリスキーなのでは?」
アレンが少し不安そうな表情で言う。
「大丈夫だ。こいつ凄く義理堅い奴で前から声をかけても全然協力してくれる素振りもなかったんだが、病院襲撃のことを話したら、貸しを返すってことで道案内なら協力してくれることになったんだ」
「本当なのか、ルイン」
「ああ、道案内は貸しを返すためだ、だから戦闘には参加しない」
「そうか、そういうことなら俺からは何もない」
スティーブはルインのことを以前の戦いで知っていることから作戦に参加することを認める。
「スティーブさんはああ言ってますが、どうしますか? ドラゴン」
アレンがドラゴンに尋ねると怖い顔をしたドラゴンはルインに詰め寄った。
「貸しを返すだと? スティーブの国には死人が出ているんだ。貸しの返し方が違うだろうが!」
ドラゴンは突然、鉄の鎧に包まれたキングバックを出し、持っていたハンマーをルインに向かって振りかざした。
だが、身の危険が迫っているというのにルインは何の抵抗もしなかった。すると、ドラゴンはルインに当たる寸前で動きを止めさせた。
そしてルインは涼しい顔でドラゴンを睨む、その顔を見たドラゴンはキングバックを引っ込め、大笑いをする。
「はっはっは、なんて玉だ。一切抵抗しようとしなかったな。つまり、それだけ今回の病院襲撃による貸しを重く見ているってことだ。うん、こいつは信用できる」
「ふぅ、冷や冷やしたぜ、ドラゴンがマジでやるのかと思ったぜ」
岩谷は胸をなでおろす。
「いやいや、マジではやらんよ。まあ抵抗してきたら殺ってたかもしれないが」
ドラゴンは笑顔で答える。
「そ、そうか(ここで笑顔なのが逆に怖えよ)」
「よし、方針が決まったな、これよりセイリス救出作戦を決行する!」
スティーブは大きな声でそう言った。
付近にいた、兵を集めるだけ集めた、在り合わせの部隊だが、皆、戦いに向け心を一つにする。
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