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キングバック   作者: 君子な在る虎
月下砂漠編 ~砂城の独裁王と月の迷走者~
45/205

バルターの覚悟Part2

これは分割編集版です。

表現が多少変化していますが内容に変更はありません。

 キングバック14話バルターの覚悟Part2



 スティーブたちは引っかかったトラップによって三日の間、幻覚を見せられ、暗夜高山に取り残されていた。


 そして幻を晴らす能力を持つスティーブさえもなかなか抜け出せずにいた。


 俺は自分が幻覚を見せられていることには薄々気が付いていた。だが、すぐにサーセイバーで幻覚を解除しなかった。


 なぜなら三日間俺にとって都合のいい夢を見ていたからだ。


 かつてのように父と母は仲が良く、そして俺は父と同じ医者になり、セイリスさんの元で彼の政治の手助けをする夢。


 実際は父と母は価値観の違いで永遠に続くことはなく、セイリスも長きにわたった政治はできない。


 しかし、あり得るはずのない現実に俺は酔った。


 全てが幻と知りながら、目を覚まそうと何度も試みたが、目を覚ますことが出来なかった。


 それは心が拒んでいたからだ。真実をもう一度、受け入れることが怖かった。


 だが、三日も経ってふとあることに気が付く、その都合のいい世界には治は存在していなかったことだ。


 俺は治という存在がイレギュラーな存在であることを思いだした。


 治はこの国を助けるためによこされた援者、もし、今の自分にとって都合のいい世界だったならばそのイレギュラーは存在することを許されない。


 つまりこの幻の世界に治は永遠に存在できない。

 そのことに気が付いたとき、俺は目を覚ました。


「この世界には絶望が多い、だがその絶望の分だけ、希望が俺の元に来ているということか」

 目が覚めた後、辺りを見渡したが、ドラゴンとアレンの二人の姿はなかった。


「幻を見ながらどこかに行ってしまったか、幻覚の対処は俺の役目だと言うのに。我ながら情けない。急いで探さないとな」



 俺は辺りを一時間ほど捜索した。


 すると草むらで気持ち良さそうに寝るアレンを見かけた。


「むにゃむにゃ、私が、いや、俺が、最強だぁ……ぐぅ」

「物凄く気持ち良さそうだな……起こすのはちょっと気が引けるが……いや起こすんだが」

 サーセイバーの剣をかざした、するとアレンは目を覚ました。


「おい、大丈夫か?」

「はれ? えっとここは……」

「暗夜高山の麓だ、お前は幻覚と言う名の夢を見させられていたんだ」

「そうですか、あれは夢だったのですね」

 アレンは少し残念そうな表情をする。


「一体どんな夢を見ていたんだ? すごく気持ち良さそうにしていたが」

「……突然知らない世界に行って、そこで悪い奴をボコボコにして、モテモテハーレムを築く夢です」

「……どうやら、人によって見る夢は違うようだ」

 スティーブは苦笑いで言った。


「(こいつ意外に欲望が凄いんだな)」

 スティーブはアレンを可哀そうな目で見る。


「え? どうかしたんですか?」

「いや、何でもない、それよりもドラゴンを探そう」

「ええ、分かりました」


 それから、約三時間捜索を続けていたが、ドラゴンを見つけられなかった。



「一体どこに行ったんだ」

「日が暮れてきました、どうします?」


「俺たち三日も何も食べていない。今日はとりあえずここで切り上げよう」

「……分かりました」



 俺たちは休むために近くにあった洞窟に入った。

 しかし、洞窟の奥の方で何かうめき声のようなものが聞こえた。


「スティーブさん、何か聞こえませんか?」

「ああ、確かに、だが一体の音だ」


 二人は顔を見合わせ、頷くと洞窟の奥に進んだ。進むごとに声は大きくなり、どこか聞いたことのある声だった。


「この声まさか!」

「ドラゴンです! こんな洞窟に迷い込んでいたんですね」



 スティーブとアレンは洞窟の一番奥でうずくまったドラゴンを見つける。そしてそのうめき声の正体は謝罪の言葉であった。


「なんだ、これは?」

「すまない、許して欲しいジーノ、あの時、私がいればこんなことには……ダストお前は俺を恨んでいるだろう? そうだ俺はあの時……」

 ドラゴンはスティーブにとって聞き覚えのない名に謝罪続けていた。そして次々と名前を呼び、その全てに謝罪していた。


「こ、これは一体?」

「全て戦争で散っていった我が国の戦士の名です」

 アレンはドラゴン目をそらして言った。


「ドラゴンはどんな夢を見ているというのだ?」

「分かりません、ですがついさっき私の両親の名前を言っていました。もしかしたらかつての仲間に責められている夢でも見ているのかもしれません」


「……それが、彼が望む夢だというのか?」

 スティーブ顔を歪ませる。

 

「……分かりません、ですがドラゴンは昔の出来事が相当の重みになっているのだと思います」

「……もういい、これ以上彼を苦しませることは俺が許さん、例えそれが望んだ苦しみだとしてもだ」

「はい、お願いします」

 俺はドラゴンを仰向けに寝かせサーセイバーの剣をかざした。するとドラゴンは飛び起きた。


「ハアハア、ここは? ぐっ頭が、頭痛がひどい」


「何も思い出せませんか?」

「ああ、一体何があったんだ?」


「幻覚を見させられていたんです」

「そうなのか、すまない世話をかけたな。だが、どんな幻覚を見たのかさっぱり思い出せん」


「思い出せないのなら、それでいい。俺たちも詳しく覚えていないからな。そうだよなアレン」

 スティーブはアレンを見つめ、目で意図を分からせた。


「ええ、何も覚えてないんですよ。俺たち」

「そ、そうか皆覚えていないのか」


「ああ、だがかなり日数が経っている」

「何! 今はいつだ?」


「バルターを追ってから三日だ」

「そんなにか」


「相当強力な幻惑術トラップだったようだ。おかげでバルターを逃がした」

「じゃあ、もう目当てはもうここにはないということだな?」

「はい、そういうことになります」

「では速やかに戻るべきだな」


「ですが、見て下さい。もう夜です。それに三日間何も食べていないのでこのまますぐに帰ることは難しいと思います」

「仕方ない、今日はここで野宿だな」


 俺たちは洞窟で夜を過ごした。

 そして次の日、丸一日かけてセンドウに帰って来た。



 帰って来たスティーブたちを岩谷とカレンが出迎えた。

「お帰り、スティーブ約一週間ぶりか」

 疲れ切ったスティーブに岩谷は元気で話し掛ける。


「ああ、だが少しまずいことになった」

 スティーブは苦い顔をする。


「向こうで何があったんだ?」

「暗夜高山、確かにそこに月の国の民はいた。しかし、どうやら我々の接近にいち早く気づいたようでな、到着したときは既に物家の空だった」


 その後バルターに幻惑術をかけられ、三日間も遅延してしまったことを話した。


「じゃあバルターたちはどこに逃げたんだ?」

「おそらく砂の国だ」

「砂の国ってまさかあの国に協力を求めたってこと? そんなことあり得ないわ」

 カレンは驚いた様子で否定する。


「どういうことだ?」

 岩谷はカレンの否定に疑問を抱く。


「砂の国の王テューラーは独裁者で傲慢な男、とても彼らを保護するとは思えない」

「なるほど、そんな男の側に月の国が、バルターが行ってしまったということか」

  岩谷は少し悲しそうな顔をする。


「月の国は戦力こそ多くはないですが、搦め手が得意な一族、手を組まれるのは厄介ですね」

「さてならば次は砂の国と争うことになる、作戦などいろいろ考えねばならんな」

 ドラゴンは仕切って言う。


「情報交換も重要だがまず、場所を変えよう、ここセンドウでは砂の国から遠い、我が国の中心地まで行こう」

 とスティーブは言った。



このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございます。

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