バルターの覚悟Part1
鋼の国と同盟を組んだ岩谷たちはそれぞれの行動をする。
岩谷は鋼の国の手練れのキングバック能力者、カレンと修行。
スティーブは鋼の国のリーダードラゴンと、鋼の国の参謀アレンと共に月の国の居場所を突き止める。
しかし、そのときには一足遅く、月の国の民は既に移動した後だった。
調査を続けるスティーブたちの傍にかつてセンドウにて関わった情報屋バルターが現れる。
スティーブはバルターの会話を影から盗み聞きすると、どうやら、バルターは月の国のリーダーであったことが判明する。
月の国が何故こんなことになっているのか、はたまた、バルターが何故情報屋をやっているか?
その事実が明らかになる。
キングバック14話バルターの覚悟Part1
俺の名はバルター・レソッツ、月の国のリーダーだ。
月の国と言っても国と言えるだけの人口は今は存在しない。
火の国と水の国の間に位置する私たちの国は三陸戦争のど真ん中に放り込まれた。
大半の人間が死んだ。
生き残った者は、臆病だった者、頭が良かった者、勇敢だった者、だがその全てにおいて共通した特徴がある、それは運が良かったということだ。
私は幼い子供数人を逃がすために必死に戦った、共に戦った仲間には幼い頃から共に研鑽を積んできた者もいた。
しかし人間死ぬときは意外とあっさりと死ぬものだ。
一瞬だった。
私が必死に戦って目を離している間に友はただの肉塊になった。
誰がやったのか、わからないほどの乱戦だった。
だから、私は殺して、殺して、ころして、目に映る敵を殺し続けた。
周りに誰もいなくなって、私は生き残ったことを実感した。
見渡す限り仲間を探したが、見つかるのは死体のみ、死体が見つかるたび、まだあいつは生きているかもしれないという望みが打ち砕かれていく。
そして私たちが必死になって逃がした子供たちも全員死体として再開を果たした。
一体自分は何のために戦ったのか分からなくなった。
ひたすら自分の行動に後悔する日々を過ごす。
何かを一番にしていれば誰かは助かったのかもしれないと、友を囮にして私が子供たちについていれば子供たちは助かったのかもしれない、もしくは友の力を過信せず、守りに徹していれば、友は今私の傍で子供が死んだのは仕方がなかったと慰めの言葉をかけてくれただろうか?
そんな考えが何回も何回も頭の中を駆け巡る。
不思議と涙は流れなかった、それはきっとまだ現実を受け止め切れていなかったからなのか、それともまだこの現状がどうにかなるとありもしない望みを抱いていたのか、はたまた何よりも自分の無力さを信じたくなかったからなのか、だが今となってはもうあの時の感情ですら、風化し過去の物になってしまった。
一体何が原因で泣けなかったのか、今の私にもわからない。
だが、もう二度と仲間を死なせるわけにはいかない。
私はもう欲張らない。
もう後悔したくない、私の一番だけは必ず叶える。二番三番は捨てる。なぜなら自分の無力さは誰よりも知っているから……。
だから、俺は仲間のために外道と手を組む。
砂の国王宮に俺は向かった。意外にも砂の国のリーダーは私の謁見を容易く許可した。
「お初にお目にかかります、砂の国の王テューラー殿」
テューラーは黒髪長髪で王座にどっしりと座っており、動く気配はない、尊大な態度で私を見下す。
「月の国のリーダーだったな、お前、名は確か……」
「バルターです」
「そう、バルターだったな、で貴様は我に何ようかな?」
テューラーは鋭い眼光で私を見つめる。まるで重力が何倍にもなったかのようなプレッシャーが俺にのしかかる。
「単刀直入に言います。我々月の国と同盟を組みましょう。我らが敵、太陽の国と鋼の国は同盟を組みました。ここは私たちで奴らを打倒しま……」
私が話終える前にテューラーは大笑いをして話を遮った。
「はっはっは、我が貴様と同盟だと? 同盟とは上手く言ったものよ。貴様の場合、居場所が欲しいだけ、我に保護して欲しいだけではないのか?」
「……そ、それは」
痛い所を突かれた。テューラーは俺の考えなどお見通しと言うわけか。
「貴様と組んで我に何の得がある。申してみよ。返答次第で貴様の命は今ここで潰えると心得よ」
俺は緊張で頭が真っ白になり、口が開けなかった。
「……」
「どうした? 何か言え! 貴様より先に国の者どもを先に殺してもよいのだぞ。自惚れるなよウサギ風情が、貴様共々の処遇は我の手のひらの上であると言うことを努々忘れるな! 同盟とは対等であるものだ。今の貴様に我と渡り合う物があるというのか?」
ーーバルター言え、言うんだ、口を開け、言わなければ、明日はない!
そうして俺は自分を鼓舞した。
「……私たちには各地を渡ってきたことで得た情報があります! 戦争において情報は万の兵に匹敵するものがある! 私と組むことであなたは万の兵を得ることになるとここに保証します」
見栄を張った俺の言葉を聞いたテューラーは右手で顔を隠して笑い始めた。
そして手を離すと不気味な笑みを浮かべこちらを見た。
「よく吠えた! 我の手に収まる貴様らが万の兵になると申すか、いいだろうそのはったり乗ってやる。ではせいぜい我のために働いてもらうぞ、バルター」
「は、はい了解しました」
俺はテューラーに圧倒された。
しばらく後、砂の国末端の小さな集落にて
「バルター様、ほんとにこれで良かったのですか? テューラーの奴完全にバルター様を使い潰す気満々に見えます」
「いいんだ、そのおかげでお前たちの新たな居場所を確保できたじゃないか」
「で、でも」
「ごめんな、俺はお前たちより先に死にたいんだ」
「……バルター様」
「じゃあテューラーの元に行ってくる」
「いってらっしゃいバルター様(もしかしたら、バルター様にとってここで死ねるのは一番幸せなのかもしれない。あの人は今まで俺たちのために苦しみ過ぎたから)」
この度はキングバックを読んでいただきありがとうございます。
今回は少し暗い話しになったかと思いますが、すみません、もう少し続きます。
あと今回から本格的に岩谷たちの国とり合戦が始まりとなります。
これから、砂と月の国編が大きく展開されていくのでこれからも読んでくださると嬉しいです。
あと、これからの私のモチベーションに繋がるので、ブックマークや評価、感想など良ければお願いいたします。
今年の投稿おそらくこれで最後になります。
11月から書き始めまだ1ヶ月とちょっとですが、ここまで読んでくれた皆様には感謝しております。これからもほそぼそと続けて行くのでよろしくお願いいたします。
また、昨日27日にタイトル、あらすじが少し変更しました。個人的な変更なので突然変わり驚く人には申し訳ないです。
次回投稿は通常どうり来週の木曜日になる予定ですが、場合よっては前倒し、又はプラスで投稿するかもしれません。
投稿する際はtwitterにて事前に告知いたしますので、よければそちらもご確認ください。
今日のキングバックのコーナーはお休みです。
来年もキングバックをよろしくお願いいたします。




