[間話] 可憐なる? 三日間 後編
これは岩谷とカレンが訓練を行っていた間の二人に何があったのか、それを語る話。
キングバック13.5話可憐なる? 三日間 後編
岩谷とレナが夜遅くに話をする。
それはレナの告白のようなものだった。
レナが岩谷に迫り、椅子が倒れた。
そのとき、外の、椅子の倒れた音と二人の話し声が寝ていたカレンを起こした。
「んん? 何か騒がしいわね」
そして、窓から、庭の方を見る。
すると、岩谷に倒れ込んでいる親友の姿を見る。
「え? 何? どういうこと?」
頭が混乱する、二人は何かを喋っているけど、ここからは聞こえない、何か嫌な予感がして、すぐさま部屋を出る。
そして、庭の近くまで、出て来た。
だけど、怖くて、ここから先に出れない、だから、隠れて二人の話を盗み聞きする。
「ねえ、カレンじゃなくて、私を選んでくれますか?」
レナは岩谷に迫っていた。
「(え? レナも岩谷のことが好きなの?)」
頭の中が混乱する、でもいま“も”って自分で言った、やっぱり、私は岩谷が好きなのかもしれない。
「ねえ、答えて?」
普段とは想像できないレナの態度に混乱する、でもこのままでは岩谷が盗られる、まだ、自分の物でもないのに私はそんなことを考える。
でも、今行動しないと、ダメ、そう思って口を開くけど、喉から声が出ない。
「(口を開いて私は何を言うつもりなの? 分からない、それにもしかしたら、岩谷は私みたいなガサツな女より、レナの方がいいかも)」
そうして、情けない自分への言い訳ばかりを考えてしまう。
「ちょっと、俺、あなたと今日あったばかりですよ!」
「でも、カレンだって出会って1週間そこらでしょ」
「そ、それはそうですけど」
「(そうよ、まだ出会って1週間、まだ、好きかなんて私は分からない)」
また、情けない自分が出て来る。
「嫌なら、拒否して」
そういうと、レナは岩谷へキスしようと、顔を近づける。
「(ダメ、ダメダメだめぇ!)」
私が出て行こうとした瞬間、岩谷は手でレナの口を押えた。
「ご、ごめんなさい、気持ちは嬉しいんですけど」
ここからはまだ岩谷の表情が見えない。
「やっぱり、カレンが好きなのね?」
レナは残念そうな顔をする。
「俺も、正直、今まで、まともに恋愛なんてしてこなかったから、よくわからないです。でも貴方は素敵な人です、貴方と一緒になれたら、とても幸せなんだと、思います、だけど、カレンの顔を想像したら、手が勝ってに動いていました」
そのとき、月の光が岩谷を照らし、岩谷の真剣な横顔が見える。
すると、レナが岩谷から離れる。
「あらあら、振られちゃいましたね、ってなんちゃって」
レナさんはペロッと舌を出す。そしていつもの調子のレナさんに戻る。
「え? まさか」
「ええ、親友のカレンを任してもいいか試していました♪」
「もう、人が悪いですよぉ」
岩谷はホッとした様子だ。
「ごめんなさい、あの子今まで浮ついた話がなかったから、そんなあの子が連れてきた男がどんな人か気になりまして」
「それで、合格ですか?」
「ええ、合格です」
「はぁ、良かった」
するとレナは少し真剣な表情になる。
「あの子、今まで、ドラゴンさんのため、兄のアレンに追いつくためにずっと努力して、凄く強くなったの、そのおかげで、みんなに認められるようになりました。だけど、そのせいか、逆に皆から距離を取られるようになって、もちろんいい意味ですけど」
「ああ、なんか変なファンクラブなんてできちまって」
「ええ、男たちどころか、一部の女までも、カレンに対して不可侵条約のようなもの出来てしまって、だから、あの子結局、仲良くしてきたのは私たち孤児院のみんなだけ、だから、貴方ように、真正面からあの子を受けて止めくれる人が珍しいんです」
「そうか、でも俺だってこの戦争に参加するまでは、変な理屈をつけて、逃げた日々を過ごしてきた。だからかな、カレンがとても輝いて見えたんだ」
「うふふ、もうぞっこんですね」
レナは嬉しそうに笑う。
「ちょっ、まだ言わないでくれよ、心の準備が出来てないんだ(俺はこの世界の異分子だから、この自分の気持ちの通り動いていいか決心が出来ていないから)」
「ええ、そんな野暮なこと、しませんよ」
「ああ、ありがとう」
「あの子ああ見えて傷付きやすいから、大事にしてくださいね」
「は、はい」
すると、レナさんは急に近づいて来て、俺の頬っぺたに軽くキスをする。
「え⁉ レナさん?」
「うふふ、カレンが羨ましいです」
そう言うと、レナさんは岩谷から、離れ、小悪魔のようにニコッと笑う。
「レナさん……」
そして岩谷は自分のキスされた、頬っぺたを触る。
その時、突然、岩谷の背後に昼間に現れた男が出現する。
「き、貴様、カレンだけに飽き足らず、レナさんまで、たぶらかしやがって、これは極刑だ!」
そう男が叫ぶと、岩谷を高速で岩谷を縄で縛り、連れ去って行く。
連れ去れながらも俺は男に物申す。
「この、イカレファンクラブめ、レナさんも守備範囲なのか?」
「当たり前だ、尊い物を守って何が悪い!」
「それがカレンを傷つけているって、分からねえのか、お前らの行為は独りよがりなただの理由付けなんだよ!」
「うるせえ! 黙れ、女たらし!」
男の拳が岩谷の溝内にクリーンヒットし、岩谷は一時的に気を失う。
それをレナは困った表情で見ている。
「あらあら、暴走しちゃってるわね、っていつまでそこにいるのカレン?」
覗いていたことがバレたことにビクッとしたカレンが出て来る。
「ご、ごめん、レナ」
「……何が?」
「えっと、いろいろありがとう」
「いいのよ、私とあなたの間じゃない? それより、追いかけなくていいの? 岩谷君、連れ去られちゃったわよ」
「そうだった! もう、どうしてこんなことに……待っててね、今助けに行くから」
カレンは孤児院を走って出て行く。
「うふふ、本当に羨ましいな、もしあの時、岩谷君が私を選んでくれたら、私本気になっちゃったかもしれないわね」
レナは少し残念そうな表情のまま、自分の部屋に戻る。
そして、レナは自室の写真立てを手に取り、孤児院のみんなの集合写真に写る、アレンを見つめる。
「もう、あなたが、うかうかしていたら、私、他の人の物になっちゃいますからね」
レナはそのまま写真立てを持ったまま、ベットに飛び込んだ。
鋼の国はずれ、廃棄された、巨大ホールで岩谷は水をかけられ目を覚ます。
「おい、起きろ、女たらしのゲス野郎」
俺をさらった男が俺に水をぶっかける。
「随分な道案内じゃないか、気を失いかけたぜ」
「嘘をつくな、気絶してただろうが」
「まあ、そういうことにしておいてやるよ、それでここはどこだ?」
「町外れだ、ここなら、叫んでも誰も来ないぞ」
「おまえら、本当にヤバいな」
俺をさらった奴を除いてもドームには軽く見ただけで二十人以上はいる。
「ふん、カレンに手を出したのが悪い」
「そうかい、堂々と空いていたから行かせて貰ったぜ」
「き、貴様ぁ!」
俺をさらった男はナイフで俺に斬り掛かる。
すると、中でも一番ガタイがいい男が俺をさらった男を止める。
「まあ、よせ八百屋、この状況で虚勢を張れるたぁ、大した玉だ、もう少し生かしておいてやろうじゃないか」
「う、分かった」
「ん? 八百屋?」
岩谷はこの場で出て来るはずのないような単語に首を捻った。
「ああ、こいつ本職八百屋なんだ」
ガタイいい男は俺をさらった男を指さす。
「もっとその才能生かそうよ!」
「うるさい、俺はこの力をカレンのためだけに使うと決めたんだ」
「その情熱をもっと違う方向に向けたらこいつ大成功しそうだな……」
岩谷は呆れた表情をする。
「そろそろ、お前をそうしようか決めようじゃないか、お前、コンクリか、硫酸、どっちがいい?」
ガタイのいい男は真剣な怖い顔でこちらを見る、凄い迫力だった。
「思ったよりガチな奴じゃないか!」
「選べ」
「ちょっと待て、お前らこれでいいのか?」
「何ぃ?」
ガタイのいい男は眉をひそめる。
「お前たちはぽっと出に俺にカレンをかっさらわれてムカついてんだろ? けどよ、それって今までカレンを見て来たお前たちの誰よりも、俺の方が魅力的ってわけだ、違うか?」
「こ、こいつ」
ドーム内の連中が騒ぎ始める。上手く食いついた、あとは奴らのプライドに火をつけるだけだ
「もし、不意打ちで連れ去って、数で囲んで、ここで俺を殺っても、それでお前らの勝利になるのかねぇ」
「な、なんだと」
ガタイのいい男が俺の話に食いつく。
「よせ、服屋、挑発に乗るな!」
服屋がガタイの男を止める。
「黙れ、八百屋、岩谷続きを話せ」
「(こいつ服屋なのかよ、絶対カタギじゃないだろ)俺はこう見えてもキングバック使いなんだ、この俺の実力を上から叩き潰してこそじゃないか? このまま俺を殺すと何とも言えない敗北感が一生付いて回るぜ、カレンはそんな卑怯なお前たちなんて嫌うと思うね」
「ぐ、ぐぬぬ、ぐぬぬぬぬぬ」
「挑発だ! このままだと、乗せられるぞ」
「(いける!)まあ、こんなところに連れて来て、仲間で群れている地点で情けないことこの上ないがなぁ!」
「こ、この野郎ぅ! いいぞ、その挑発乗ってやる!」
「(ははは、やったぞ)いいぜ、俺のキングバックはパワーが自慢なんだ、だから腕相撲はどうだ?」
「いいだろう、俺のキングバックもパワーがピカイチだ」
俺はそれでも拘束されていたが、クリサリスストーンズを出す。
「ふん、ゴーレム風情が、俺のブラッシュマンに勝てるかぁ!」
ガタイのいい男も自分のキングバックを出す。
そのキングバックは筋肉質で頭に巨大な甲冑兜を被っている。
そして互いのキングバックは右手を合わせ、地面に肘を着ける。
「おい、八百屋、スリーカウントだ」
「分かった、いくぞ、3・2・1・0ゴー」
単純な力と力がぶつかる腕相撲、力が互角ならば全く動かない、しばらく動かない試合が続く。
「おら、こんなもんか、パワーが自慢なんじゃないのか?」
ガタイのいい男はにやける。
「ああ? いいのかよ、俺まだ、本気だしてないぜ」
「何⁉」
「いけ、クリサリスストーンズ!」
突然クリサリスストーンズが押し始める。
「ぐぬぬ、まさかこれほどとは、だが、こんなところでは諦めぬ、うおぉぉぉぉ!」
「く、まだまだぁ!」
クリサリスストーンズは僅かに、勝っている。しかしそんなとき、クリサリスストーンズの右肩にビシッとヒビが入る。
「な、しまった!(右肩、この前カレンによってヒビが入っていたのを忘れていた)」
「ははは、急に、力が弱くなったぞ、今の内にリタイアしておくかぁ!」
「な、何を、踏ん張れクリサリスストーンズ!」
しかし、ヒビが入ったことによるパワーダウンは顕著であり、みるみるうちに巻き返されていく。
「ははは、勝った! 俺はこの俺に勝ったぞ、カレンンンンんン!」
「まだだ」
「はあ?」
「まだだ、限界を越えろ、クリサリスストーンズ! その先へ、ダイヤモンドビートル!」
クリサリスストーンズは腕相撲をしながら、身体中のレンガ剥がれ落ち、中からダイヤモンドビートルが現れる。
そして、その圧倒的パワーを発揮し、負け寸前だった、状況を一気に巻き返し、ブラッシュマンの手を地に着ける。
「な、服屋のブラッシュマンが負けた」
「な、何かあいつのキングバック、姿が変わったぞ、卑怯だ、ズルだ!」
ドーム内の連中が再び騒ぎ始める。
だが、肝心のガタイのいい服屋は満足そうな表情だった。
「貴様、名は?」
「岩谷治だ」
「ふっ、その名覚えておく、カレンを頼む」
その瞬間ヤジが大きくなる
「おい、服屋、それでいいのか!」
八百屋がキレる
「ああ、戦って分かったあれも奴の実力の内、奴は誠の戦士だ、どうりでカレンが惚れるわけだ」
ガタイのいい服屋は憑き物が取れたような安らかな顔をしている。
「はあ? 服屋が何が誠の戦士だ! ふざけんな! もういい、服屋は放っておいて、こいつはやっちまえ!」
八百屋がそう叫ぶと、ドーム内の連中が殺意剥き出しでこちらにじりじりと迫ってくる。
「はっ、ファンクラブがなんぼのもんじゃい! 全員かかってこいや!(ちょっとキツイかな)」
岩谷がそう叫ぶとドーム内の連中が一斉に襲ってくる。そのとき、ドームの閉じられていた、巨大な扉が斬り倒される。
「な、なんだぁ!」
「どこの手の者だぁ!」
すると外からはカンカンに怒ったカレンがホワイトブレイド共に現れた。
一気に場が静まり返る。
「ここで何をしているのあなたちは?」
「カレンさん、えっとこれは……」
みんな焦り出す。
「何をしているか答えろ!」
カレンの気迫はその場にいたファンクラブたちを圧倒する。
「ひぃっ」
「そ、それは」
みんな言葉に詰まる。
「この際言わせてもらうけど、そうやって私の周りを嗅ぎまわるの迷惑、うざい、私のファンなら、私の道の邪魔をするなぁ!」
過激なカレンのファンたちはその場に崩れ去る。
「行こ、岩谷」
「あ、ああ、でも結構バッサリいったな」
「もういいの、本当に大事な物が分かったから」
「カレン……」
そして、俺たちはカレンのファンを置き去りにし、二人で、孤児院に帰った。
帰った頃には夜が明けようとしていた。
このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございます。
今回はレナさんのカマに岩谷が引っ掛からなかった話でしたね、また、ファンクラブも見事やられました。これは後編ですが、最後にまだ、一話分、続きます。この続きは明日か、明後日には投稿する予定です。
本篇は引き続き明日投稿する予定ですので、よければ見て下さい。
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