[間話] 可憐なる? 三日間 前編
これは岩谷とカレンが訓練を行っていた間の二人に何があったのか、それを語る話。
キングバック13.5話「可憐なる? 三日間 前編」
これはスティーブとドラゴン、そしてアレンが暗夜高山に行っているとき、岩谷とカレンが訓練していた間のたわいもない話。
「うっべぇあああ!」
クリサリスストーンズは勢いよく、派手に投げ飛ばされた。
カレンとの訓練中にホワイトブレイドにボコボコにしごかれた挙句、本気で倒しにいったらぶん投げられてしまった。
そして上手く受け身を取れなかった俺のクリサリスストーンズはバキッと嫌な音を立てる。
「あ、ごめん! つい本気で投げちゃった、大丈夫? 凄い声出してたけど?」
カレンが苦笑いでこちらにやって来る。
「あ、ああ、何とか、大丈夫だ、っ痛って」
岩谷は右肩を押さえ、痛そうな素振りをする。
二人してクリサリスストーンズを見ると右肩の辺りに大きくヒビが入り、中から、若干液体が漏れ出している。
「ご、ごめんね、岩谷、あなたが粋がいいから、つい……」
「いや、俺もついムキになってた、俺にはいい薬だ」
「かなり痛む?」
「そうだな、重い物を持ったりとかは無理かも」
「そう……そうだ! 今日あなたの家に行ってもいい?」
カレンが笑顔で急接近してくる。
「え! いや、いいかどうかと言われと……」
岩谷は少し目線を外す。
「ん? さては何か家に変な物隠してるんじゃない?」
カレンはこちらを見透かすような表情でこちらを見てくる。
「はあ⁉ そんなもんねえよ!」
岩谷は咄嗟に答えるが、それは逆に怪しまれる結果となる。
「……これはお姉さんがお掃除してあげないとねえ」
「いや、大丈夫だから!」
「いや、もう決定事項です。さあ、行こう、今すぐにね!」
そう調子よくカレンは言うと俺の左手を掴み引っ張って行く。
「(……はあ、こうなったら、行くしかないよなあ)」
こうして、クリサリスストーンズの故障により、肩の調子が悪くなったことを理由に岩谷はカレンを部屋に上げることとなる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なーんだ、大したもの置いてないわねえ」
部屋にやって来たカレンは掃除と評して、俺の部屋を漁る。
だが、お目当ての物は見つからなかったらしく、少しつまらなさそうにしている。
「お望みの物がなくて、残念だったな、そもそもここはセンドウで一時的に借りている部屋だから、大した物なんてないんだよ」
「ふーん、だったら、中央の方だったら、何かあるんだ?」
「い、いや、そこも借家って言うか……」
俺は言葉を濁す。
「ふーん、じゃあ、いつか、岩谷の故郷に私を連れて行ってくれる?」
カレンは無邪気に笑いかけてくる。
「ああ、いつかきっと案内するよ……(ごめん、カレン、俺の故郷は日本だ、この戦いが終わったとしても、元の世界で君は俺のことを覚えてはいないだろう……)」
俺は少し、暗い気持ちになり、俯いていると、何やら、キッチンの方から、音がし始める。
「まさか」
俺が素早く、キッチン行くとカレンがキッチンで料理を始めていた。
「カレン、今日はお客さんなんだから、料理は俺がやるよ」
俺はキッチンにいるカレンの傍に近づく。
「何言ってるのよ、あなたは今怪我人でしょ? だから私が来たのに、いいから、座ってて」
「でも、キングバックがダメージを受けただけで大袈裟な」
「甘いわね、早く治すには本体である貴方も安静にしているべきなの!」
カレンはどうやら、全く譲る気はなさそうである。そして岩谷は折れる。
「わかった、じゃあもう任せるよ」
「うふふ、それでよろしい♪ 孤児院で鍛えられた私の料理テクを見せてあげるわ」
カレンは少し嬉しそうである。
キッチンからの音が小さくなる。どうやら、料理は完成したようだ。
「出来たわ!」
そしてカレンが皿を二つ俺が座る机の上にドンと置く。
皿の上にはただ1種類、たくさんの焼いた肉が無造作に占領している。
「とりあえず、肉食ってれば治るわよ」
カレンは胸を張って、親指を立てる。
「……うん、そうだね」
俺はこれ以上考えるのを止め、ただひたすらに目の前の肉を食らった。
俺たちは肉を平らげた。
「さて、カレン、今日はもう遅い、送っていくよ」
「もう、めんどくさいし、私今日ここに泊まるわ」
「⁉ いや、それは……ベットも一つしかないし、そもそも……」
「私、その辺で寝れるわよ、訓練で外で野宿することもあるし、大丈夫大丈夫」
「お客さんにそれはダメだ、ベットでお休みください!」
「ダメよ、あなた、怪我人なんだから、ベットを使わないと、そうだ!」
カレンが何か閃いたような顔になる。非常に嫌な予感がする。
「一緒に寝ましょ」
「やっぱりそう来たか! いや、ダメだろ!」
俺は焦り、冷や汗が溢れ出始める。
「でも、私仲間たちと普通に一緒に雑魚寝してるわよ」
「いや、それとこれとは、というか、知らない内に泊まることになっているのはどうなんでしょうね!」
しかし、時すでに遅し、岩谷がカレンの方を見たとき、カレンは既にベットの中に入っていた。
「もう、我儘言わないの、ほら、おいで」
カレンが布団を軽く持ち上げ、微笑んでいる。
俺はまるで引力に引かれるように、ベットの中に吸い込まれて行った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次の日の朝
「うーん、おはよう、岩谷」
「あ、ああ、おはよう(気になって全然眠れなかった)」
昨日の夜、カレンは俺がベットに入ったのを確認すると、すぐに深い眠りに入ってしまった。
俺はベットの中でただ、ひたすらにフリーズしていただけだった。
「そうそう、昨日いつか岩谷の故郷に連れてくれるって約束したわよね?」
「ああ」
「だから、私も連れて行かないと不公平かなって思うの」
「あ? ああ」
「だから、今日、お休みも兼ねて、私の国、鋼の国を案内するわ」
「だ、だけど、訓練はいいのか?」
「一日くらいいいじゃない、それとも私とじゃ嫌?」
カレンは少しあざとくそして寂しそうにこちらを見る。
「行かせてもらいます!」
俺は瞬時にそして勢いよく返事をした。
「ええ、行きましょ(ふふ、チョロいわ)」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして、俺はカレンに連れられるままに、鋼の国までやって来ていた。
街の様相は太陽の国とは違っていたが、それでも栄えており、温かい印象を感じさせる所は変わらないように感じた。
カレンと街を歩く、その度に街の人はカレンに声を掛けてくる。
カレンにパン屋の店員である、中年の女性がカレンに絡んできた。
「あら、カレンちゃん帰って来てたのね、もしかして隣のは彼氏かしら? やるじゃない!」
「か、彼とはそんな関係じゃあないですよ」
カレンはやんわりとした口調で否定し、そのとき、少し赤面する。
俺はそのときのカレンの表情を見逃さなかった。
しかし、このときの俺はカレンの顔を見逃さなかったのが、俺一人であるということをまだ知らない。
「そう? あなたたち歳も近いし、とてもお似合いだと思うけど、カレン、あなた、浮いた話も聞かないし、ここで決めておきなさい」
「も、もう、私の恋愛事情なんて放って置いてください! ほら、岩谷行こ?」
「あ、ああ」
俺は赤面したカレンに連れられその場を離れようとする。そのとき、パン屋の中年の女性に耳元でぼそりと一声言われる。
「気を付けてね」
「え?」
俺は突然の言葉に驚き、女性を見るが、何事なかったように、去って行く。
「何してるのほら行くわよ!」
「そ、そうだな(何だか、嫌な予感がするが、気のせいだよな?)」
「もう、お節介な人が多いんだから」
カレンは赤面し、少しプンプンしている。
「ははは、それでも、みんな温かいじゃないか、いい街だ」
「う、うん、ありがとう」
カレンが一番案内したいと言う場所まで、連れられ街中を歩くが、何故かさっきから街中の男たちから憎しみの目線をビンビンと感じる岩谷。
「(うん、いい街だ、うん、いい街のはずだ、だが、なんでだ? 俺には何故か世紀末に見える)」
さっきから、すれ違う男の人たちにメンチを切られている。
「(一体俺が何をしたって言うんだ?)」
「ここよ」
憎しみの目線に晒されながら、とうとう目的地に到着する。
そこには少し、大きいだけで何の変哲もない家があった。
「ここは?」
「私が育った孤児院よ」
「ここが、カレンの……」
「うん、ここが、私の実家に当たるのかな? 一度見せたくて、じゃあ、中にここの院長をしている人がいるから呼んでくるわね」
そうして、カレンは足早に孤児院に入って行った。
「そうか、孤児か……親か」
そして自分の親のことを思い出す。
「(俺は嫌いじゃないが、あんまり、関係が良くないからな)」
そんなことを考えていると突然、背後に誰かが立ち、背中に刃物を突き立てられる。
「⁉ お前は一体?」
俺は振り向こうとすると
「振り向くな! 振り向いてみろ、お前を殺す」
「(迂闊だった、こんなところに敵が潜んでいるとは! こいつなんて手際の良さだ!)」
ただ、呑気に鋼の国に来た岩谷に待ち受ける新たなる困難、岩谷は無事に乗り越えることが出来るのだろうか?
このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございます。
今回はカレンを掘り下げるお話です、まだ前編ですので、続きを楽しみにしていてください。
次回投稿は月曜日になります。
また、ブックマーク、評価、感想など良ければよろしくお願いいたします。




