蛹岩と金剛兜Part3
これは分割編集版です。
多少表現が変化していますが内容に差はありません。
蛹岩と金剛兜Part3
「おい! 治、大丈夫か」
スティーブの声で俺ははっとする。
「いや、大丈夫だ、なんでもねえよ」
「そうか……なら、いいんだが」
「だが、スティーブ、いきなり聞くが本当にこのまま町を見捨てることが正しいことなのか?」
岩谷は真剣な顔でスティーブを見る。
「そ、それは……だが、俺たち二人はこんな所で死んではいけない。まだ、やらなければならないことがたくさんある」
スティーブは悔しそうな表情で言う。
「……スティーブ、この町を脅威から守ることはやらなければならないことではないのか?」
「……」
「確かにこの状況を突破するのは難しい。しかし、俺たちが目指すものはなんだ? ……それは他の国を倒して一番になることだろう? そんなことを俺たち二人でやらなきゃならねぇ。こんなバカげたことをするのに目の前の町も救えねえようじゃ、とても一番なんて到達できない頂だ」
この岩谷の言葉を聞いた瞬間、スティーブははっとした様子だった。
「そうだな、俺としたことが弱気になっていたようだ」
「いや、これはスティーブにだけ言った言葉じゃねえ。俺自身にも言った言葉だ。俺もできないんじゃないか、勝てないんじゃないかと思ってしまっていた。だが俺は諦めねえ、ここで逃げては成長という可能性を無くす、いつまでも蛹のままだぜ」
「治それはどういう意味だ?」
すると岩谷は少し得意げな表情で笑う。
「この、俺のキングバックはまだ蛹だったってことだ。今、この場で正式に名前を付ける、お前の名は蛹岩だ。そしてその名と俺の諦めない心と共に羽化せよ」
岩谷の呼びかけと同時にクリサリスストーンズの内から光が漏れ、岩が崩れ落ち、中からはダイヤモンドのように美しく輝く身体で頭に鋭く立派な角があるキングバックが現れた。
「なるほどこれがクリサリスストーンズの成長の証、このダイヤモンドのような身体と手足を持ち、そしてこの立派な角、蛹が羽化してカブトムシが出てきたわけか。よしお前の名は金剛兜に決まりだ」
スティーブは岩谷のキングバックが脱皮したことに非常に驚いていた。
「ま、まさか稀に姿の変わるキングバックがあると聞いたことがあるが、まさか治のキングバックがそれだとは!」
「詳しくはわかんねえがこのまま根っこたちを根絶させる」
すると太陽(疑似太陽)が強く光りそして光の柱が落ちてきた。その光を浴びたダイヤモンドビートルは強い光を放ち出す。
「うわっダメージを受けてないぞ、そうかこれは太陽圧力ではない、疑似太陽のエネルギーを供給しているのか。光の一閃、これがダイヤモンドビートルの能力。この状態なら、以前とは比べ物にならないほどのスピードを出せそうだ、やれダイヤモンドビートル、根っこをぶっ飛ばせ」
すると、ダイヤモンドビートルは約10メートルもある巨体とは思えないほどのスピードで動き、そして根っこを引きちぎり、ダイヤモンドビートルに襲い掛かる根っこを次々と殴っていった。殴られた根っこはちぎれて吹き飛んで行く。
ダイヤモンドビートルの高速かつ連続パンチであっという間に根っこたちをせん滅してしまった。
「な、何、あのキングバックは悪魔なの、私のリビングウッドをこんな短時間で」
チイラは突然の出来事に激しく狼狽している。
「お嬢、もう限界です。逃げましょう」
「ダメ、まだヨプとヤチェ、それにカムラがあそこにいるのよ」
「あいつらは覚悟を決めて行ったんです。逃げますよ」
「ダメ、必ず助ける。行けリビングウッド」
そして新たに生えた根っこは岩谷たちに向かうのでなく気絶したヨプとヤチェそしてカムラの遺体の回収に向かった。
「根っこが来やがった! い、いや、あの根っこが向かう先は……そうか仲間か……俺はこの根を断つほど落ちぶれちゃいない」
そうして岩谷は根っこ見逃し、チイラたちは仲間を連れ戻した後、逃げて行った。
「……終わった。これでいい」
「そうだ治、確かに奴らは敵だ。しかしだからといって、無抵抗の者に手を出すようではきっと俺たちは勝てない。そんな奴らでは運命は味方しない」
「そうだな」
俺たち二人がしんみりしていたそのとき町の方から人々が出てきた。
「助かったぜ。あんた、あいつら、勝手に森なんか作って迷惑してたんだ」
「あんたたちは一体誰だい? 町を守ってくれてありがとうねえ、是非ともお礼がしたいわ」
俺たちは町の人たちに囲まれ、次々と質問される。
町の人たちは笑顔で俺たちを迎え入れてくれた。
「俺はスティーブ・ロイヤー、こっちは相棒の岩谷治です」
スティーブと岩谷は町のみんなが無事だったことに安堵した。そして次の瞬間岩谷は糸が切れたようにスティーブに倒れこんでしまった。
「おい、大丈夫か治!」
「すまん、お前も怪我をしてるのに」
「気にするな」
「なんか、あの新しい力すごく疲れるんだ」
「まだ、そんなに使いこなせるものでもないのかもな」
「そうみたいだ」
そして、共にボロボロだった二人は町の英雄として手厚く町に迎えられた。
このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク、評価、感想などよろしくお願いいたします。




