蛹岩と金剛兜Part2
これは分割編集版です。
多少表現が変化していますが内容に差はありません。
蛹岩と金剛兜Part2
少し前に遡る。岩谷がチイラとタラプを追いかけていると岩谷の前に気絶していた、ヨプとヤチェが意識を取り戻し現れる。
「お嬢は俺たちが守る、タラプ! 絶対お嬢を安全なとこまで連れて行けよ」
ヨプとヤチェの二人は大型の木で出来た鬼のようなキングバックを出し、岩谷のキングバックを連携攻撃で岩谷に攻撃の機会を与えない。
「クッソこいつら連携してきて、ウザい。だが、圧倒的パワーの前に小手先の連携なんて無意味だ」
敵の攻撃を無視した、タックルでヤチェのキングバックを打ち負かし、すぐにヨプのキングバックにも殴り勝つ。
しかし、少し、手こずったためチイラを逃がすには十分過ぎる時間稼ぎをした。
チイラを逃がした岩谷を遠くから、スティーブとカムラは見ていた。
「見ろ、スティーブ、俺たちの勝ちだ」
カムラはぐったりとしていたが、その声は何故か力強く感じさせる。
「もうしゃべるな、その血の量もう助からん、話すだけ苦しいだけだ」
「甘い男だ、その甘さが足を引っ張るときがすぐにも来る。死にたくないなら、その……甘さを……」
そう言うとカムラの口は硬く閉じた。
「俺はアンタほど辛くはなれしないよ」
スティーブはカムラの瞼を閉じた。
そのころ岩谷から逃げ切ったチイラとタラプは
「タラプ、ここで降ろして。もう自分で動けるようになったから」
「は、はいお嬢」
そして降りたチイラは岩谷の方へ歩き始める。
「お、お嬢ダメです。そっちは敵のいる方ですよ」
「分かってるわよそんなこと。でも私はこのまま逃げるなんて嫌よ」
チイラは涙目で振り向く。
「ダメっす。カムラさんたちが稼いでくれた時間を無駄にすることになります!」
「うるさい! 無駄じゃない、私のキングバックが使えるようになる時間を稼いだんだもん!」
「お嬢……ダメです。カムラさんの命令です。もし自分に何かあったらあなたの命を最優先にすること。それが事前に言われていた命令です」
「何よ、カムラの奴、いつも偉そうに、私の事、子ども扱いしてたくせに……私のために頼んでもないことして……勝手に死んで、いっつも迷惑なのよ!」
チイラは涙目で怒る。
「……お嬢、本当は俺だってこのまま逃げるのは本当は嫌なんすよ」
「ふん、今から行ってカムラをたたき起こして説教してやる」
「お嬢、お供します。だけどこれだけは約束してください」
「何よ」
「まずいと思ったら、すぐに逃げること、いいですね」
「分かったわ、死なない程度でガンガン行こうぜ、だね」
「……本当に分かってるんすかね?」
そしてこのやり取りを遠くで見ていた岩谷は
「あれに手を出すのは気が引けるというか、もしかして、今回俺たちは悪役ですかぁ?」
「何ふざけたこと言ってるんだ治」
スティーブは岩谷に追いついていた。
「スティーブ、その背中大丈夫か?」
スティーブの背中からは少量の血が流れていた。
「カムラがかなり、弱っていたからな、致命傷ではない。少し痛いが」
そこへプンプンに怒ったチイラたちが戻ってきた。
「お前ら! 覚悟せいや、この町諸共押しつぶしてくれる」
そうしてチイラが地面に手を着くと地面から巨大な木の太い根っこがどんどんと生えてきて岩谷たちに向かって津波のように襲い掛かってきた。
「おいおい、これヤバイんじゃねえか。俺のキングバック行け! 根っこどもが町に行かないように抑え込め!」
岩谷のキングバックが襲い来る根っこたちを抑え込もうとするが根っこの圧倒的物量を一体のキングバックが抑えられるわけではなく、じりじりとゴーレムは後退させられ、町諸共押しつぶすというチイラの言葉は事実に変わりつつあった。
スティーブはゴーレムが抑え漏らした分の根っこをサーセイバーで切り落とし続けた。しかし、根っこの生える勢いは止まることを知らない。
「切っても切っても生えてくる!」
「クッソ、俺のキングバックでも止められないのか、このままだと、町にまで被害が出ちまうぞ!」
「そんなこと分かっている! だがどうすれば……」
スティーブはついさっきのカムラの甘いという言葉が脳裏に蘇り、何かを犠牲すべきなのか、考えてしまう。
「このままでは町も俺たちも……全てを救おうとするのは甘い考えなのか? ならば、せめて俺たちだけでも……」
弱音を吐くスティーブにつられて俺もつい弱気になってしまう。
「(ぐ、このままだと共倒れだと言うのか? 守れないのか? この町を……)」
俺の心が諦めを覚え始めたそのとき、気付いたら俺は暗闇に包まれた部屋にいた。
「諦めるのか? 貴様らしくない、このままだと、スティーブとの約束も破ることになる、それでも貴様は満足か?」
そして謎の男の声が部屋中に響く。
「だ、誰だ⁉」
辺りをキョロキョロと見渡すが何も見えない。
「誰か、だと? 名乗る名は持ち合わせていない、貴様が付けてくれなかったからな」
俺が名前を付けなかった、その言葉に思い当たる存在が一つだけあった。
「ま、まさか、お前は、俺のキングバック、か?」
「……今はそういうことにしておこう、そうだ、私は貴様のキングバックだ」
さっきまでは声だけだったというのに、俺の目の前にはゴーレムが現れる。
「おい、さっきのスティーブとの約束を破ることになると言うのはどういうことだ?」
「貴様はスティーブがもし、道を間違えそうになったら、牙を剥いてでも止める。そう約束したはずだ。ならば、今、この状況がその時ではないのか?」
「そ、それは、そうだが……」
俺は少し下に俯き言葉を濁す。
「まだ、出来ることがあるはずだ」
「出来ること、だと?」
「そうだ、貴様も私も半端者だ。故にまだ、ここが頂上ではない。今のこの私を見て何か思うことはないか?」
「お前を見て思うこと……そうか! そういうことか」
岩谷は何かに気付いた様子だった。
「ふん、やっと分かったか、世話のかかる奴だ」
「ああ、お前の言いたいこと分かったぜ」
「よろしい、ならば貴様とはここまでだ。この私を上手く使ってくれよ、我が主」
「ああ、お前のおかげで大切なことに気が付けた、俺はもう迷わねえぜ」
「そうか、ならばそれでいい」
俺のキングバックは少しそっけなく感じたが、それでもこの短時間で俺は確かな絆を感じた。
「ありがとう」
「……もう、私をこんな風に出させないでくれよ、貴様とはこの精神世界ではおさらばだ……もし、数多の絆を結び、この戦争を登り終え、さらに真の自分を受け入れ、その果てに、乗り越えられぬ障害に立ち向かおうと、神に抗うのならその時、再び会うことになろう」
俺のキングバックは今の俺にはわからないことを言っていたが、心の淵でなんとなくだが、言っていることを理解した。
「とりあえず分かった……そうだ、お前にも名前、付けておくから!」
俺はそう言って、手を振ると一瞬で現実世界に戻って行った。
俺がいなくなった部屋の中でゴーレムは一人呟く。
「……貴様のような半端者、いや、歪み者がこの先どう転ぶか、せいぜい貴様の中で見ていてやるとするか」
そしてゴーレムは精神世界で再び静かに沈黙する。
このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございます。
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