蛹岩と金剛兜Part1
太陽の国の最も北に位置する町、センドウに来た一番の理由、それは謎に現れた森を調査すること。
この森の情報を情報屋のバルターから聞き出した岩谷たちは早速調査に向かう。
しかし二手に分かれて侵入したものの、二人の行動は森を作り出した木の国に筒抜けであった。
二人は敵の襲撃に会う所だったが、スティーブは事前に察知し、これを退ける。
そして岩谷はというと、自分が目立つ行動をして敵を引き付けるため、自分のキングバックを暴れさせる。
だが、岩谷は敵の幻術により、偽の木に攻撃を繰り返し、陽動は失敗に終わるはずだった、しかしなぜか、森の木たちが突然倒れ始め、誰もが驚きを隠せないまま、対面することとなる。
蛹岩と金剛兜Part1
スティーブは自分の周りの木が突然倒れ始めたことに驚きを隠せないでいた。
「な、なんだ? 木が倒れてくる。おっと、しかも、無作為にだ」
スティーブは倒れて来た木をすっと避ける。
「木の国の攻撃か? いや、この木は奴らにとっての拠点のはずだ。自ら倒すなんて考えられん。まさか、治か? これは治がやっているのかこの怪奇現象を!」
ついにすべての木が倒れ、森にいたすべての人間が顔を合わせることとなる。
「あれ? なかなか木が倒れないと思ったら、全部倒れてるじゃねえか。一体何が起きたんだ?」
岩谷は首を傾げていた。
「治! お前がやったんじゃないのか」
スティーブが岩谷の所までやってくる。
「スティーブか、俺もよくわからねえんだ、木をひたすら攻撃したとは思うんだが、森全体をこんな風にした覚えはないんだよなぁ」
岩谷は腕を組んで考え込む。
「……とりあえず、今は目の前の敵を対処しないといけないな」
「ああ、そうだな、スティーブ」
「(治は明らかに他と違う、この森を潰したのもおそらく、治だ。治が認知していない能力があるというのか?)……ん?」
スティーブが少しボーっとして前を見ているとあることに気付く、敵の中にはいるはずの男が一人足りなかった。
「ん? おかしいカムラがいない。まさか!」
そのときスティーブが岩谷の方を向くと岩谷の後ろにカムラが姿を現し、その首にナイフを向けていた。
「間に合え!」
スティーブはカムラに向けサーセイバーの剣を投げていた。そしてその投げられた剣に気づいたカムラは咄嗟に背中を向ける。
そのカムラの背中にはキングバックがくっついていた。
背中に引っ付くキングバックはカムラよりも小柄で、黒い霧に包まれたような見た目をしており、背中同士を合わせているというよりも、カムラの背中から生えているという表現の方が正しいものだった。
そして腕を交差させ、サーセイバーの投げた剣をなんとか防ぐ。
「ぐ、クソ、スティーブめ」
「くらえ、カムラ!」
治はゴーレムでカムラに握った拳で勢い良く押しつぶそうと拳を下した。
だが、ゴーレムがカムラに当たるよりも早くカムラは素早くその場から離れていた。
「木が倒れるあの原理はさっぱりわからないが、貴様のキングバック、スピードに関しては遅すぎて欠伸が出ちまうな」
「クソ、このやろ」
その後ゴーレムは何度も拳を振るがカムラに当たることはない。
「不意打ちでもない限り当たらんよ、そんな速さではな」
そして、カムラはポケットから玉のような物を取り出し、地面にたたきつけた。するとその玉が砕け、そして白い煙がモクモクと発生した。
「クソ、見えねえ、ああまずい、見失った!」
そして再び治の首にナイフを突き立てようとカムラが治に忍び寄ると、剣を拾ったスティーブがその間に割って入る。
「スティーブに相手はまずい!」
カムラは再び距離を取る。
「治、大丈夫か?」
「大丈夫だ、だがこの煙の中で奴がみえるのか?」
「いいや、見えるどこか、聞こえもしない。だが、匂いで追ったまでだ。だが、いつもより煙のせいで匂いが混じる。探すのに苦労してしまった」
そして、次第に白い煙は風の流れにより、消えカムラの姿が見えてきた。
「治、お前は奥にいる連中を頼む、カムラは俺が何とかする。行け!」
「わかった。後は頼んだぜ。スティーブ」
岩谷はカムラを無視して、先に進もうとする。
「貴様、行かせるか」
カムラは治を追いかけようとしていたが、スティーブが再び割って入ってきてしまう。
「まあ、やはりこうなるか、ならここでけりをつけてやる。スティーブ、泣いて許しを請えよ、今なら、見逃してやってもいい」
カムラは相変わらず偉そうな態度だ。
「そいつはありがたい申し出だな、ただし俺たち以外に限った場合だが、俺たちの国は常に崖っぷち、あんたらと違って身の保身なんてするより、突っ込んだほうが逆に安全なのさ」
「なるほど、逃げる余裕なんてないから、突っ込むってか、人はそれを蛮勇って言うんだよ」
「……むしろ、逃げるメリットはそっちだぞ、あんたは逃げる場所がある」
「俺が負けると?」
「そうだ、お前のキングバックは貧弱で実は接近戦なんて、得意じゃないだろ」
「ふ、ふふふ、アハハ!」
カムラは大声でバカにしたように笑う。
「何が可笑しい?」
スティーブは少し、低い声で睨む。
「国をまとめるやり手と聞いたが、まだまだガキだなぁ」
「なに?」
「大人にとっての勝利が何たるか講義してやる」
「その授業料はおいくらかな」
「敗北の味だ」
そしてスティーブのサーセイバーとカムラのキングバックが刃同士の戦いが始まった。
カムラの素早いナイフ捌きが次々とスティーブを襲う。
しかし、サーセイバーはそれ以上のスピードでナイフを剣ではじきサーセイバーは無傷だった。
「こんなものかカムラ!」
「く、ならば!」
カムラは懐からまた玉を出して地面に投げようとしていた。
「させるか!」
サーセイバーがカムラの手の平を切りつけ、カムラはその手の負傷から玉を手放してしまった。その玉をスティーブは空中でキャッチし、煙は出なかった。
「カムラ、暗殺が成功しなかった地点でお前は負けていたんだよ」
だが息が上がったカムラはまだまだ余裕な態度で
「はあはあ、お前はまだ勝ちがなんたるかを理解していない。くらえ!」
カムラは手から流れる血をスティーブの目にめがけて飛ばした。スティーブは思わず目を閉じてしまった。
すぐに血を手で拭い目を開ける頃にはカムラは消えていた。
「しまった、いない! 奴はどこだ!」
スティーブは目を閉じ、他の五感を高める。
「音すら聞えない。そうか、道理で見失うわけだ。奴は暗殺得意なキングバックというわけではない。奴のキングバックの能力によって暗殺を成し遂げているというのか! 奴のキングバックの能力は視認されない限り、音も気配も他人に察知されなくなる能力。だから、治は近づかれても全く気づかなかった。だが、匂いに関しては全て遮断できているわけではないみたいだ。ならば! そのわずかな情報で奴を倒す!」
スティーブは目を閉じたまま嗅覚を研ぎ澄ませ、カムラが近づいてくるのを静かに待った、時間にしてわずか数秒。
しかし突然異変が起き、スティーブは思わず目を開けてしまう。
そこには辺り一面、血の池があった。
「な、このキツイ鉄分の匂い、血か⁉ 何故に大量の血が? 俺はここまで奴の手は切っていない……ま、まさか!」
「そのまさかだ」
そのときスティーブの背中にはカムラのナイフが刺さっていた。スティーブは振り向き反射的に、スティーブの後ろにいた、カムラの左肩から右脇腹まで切りつけてしまう。
カムラはそのまま後ろに倒れた。
「はは、スティーブよ、俺を切っても出る血なんぞもうない。切り損だな」
カムラは血の気の薄い顔でニヤッと笑う。
「……カムラ、大量の血での匂いで俺の鼻を潰したのには驚いた。だが弱ったお前ではこの俺を殺すほどの力は残っていない。そこの計算ミスがお前の敗因だ」
スティーブは少し憐れそうにカムラを見る。
「これだから、まだガキなんだ」
「な、なに⁉」
「俺たちにとっての勝利とは貴様らの国に勝つこと。さらにその上はこの戦争で全ての国に勝つことだ。目の前のお前に勝つことでは断じてない。目先の勝利は本当の勝利ではない……」
カムラの顔は青く血の気のないものだが、勝ち誇ったものだった。
「……お前、自分の命も一つの駒というわけか」
「そう、だ、俺のような若くもなく、それでいて強くない者は若くて強い者の踏み台にならねばならん」
「仲間を逃がす時間稼ぎ、だがそれなら岩谷が既に向かっている」
「果たしてそう簡単にいくかな?」
「何どういうことだ?」
この度はキングバックを読んでいただきありがとうございました。
今回は岩谷のキングバック、クリサリスストーンズが脱皮し、ダイヤモンドビートルになるなど、少し熱い展開になったと思います。
しかし、主人公である、岩谷治は一体何者なのでしょうか? 今後も読んでいただければ幸いです。
次回もまだ、木の国と関わって行きます。
今日のキングバック
ステータスA+~E-
クリサリスストーンズ
パワーA スピードC 特殊エネルギー性A 行動距離B 耐久性A 精密性C
岩谷治のキングバック、全身レンガで出来た、ゴーレムのようなキングバック。
パワー、特殊エネルギー性、耐久性が高い、鈍足パワータイプのキングバック、攻撃力は非常に高いため、大半のキングバックはまともに攻撃をくらうと一撃でやられてしまう。
その反面動きが遅いため、いかに攻撃を当てるかがキーのキングバック。
また、太陽圧力と言われる、疑似太陽(この世界には太陽がないため、その代わり)から、エネルギーをそのまま射出する技を使える。
これも攻撃力が非常に高く、当たれば一撃級の技だが、発射するためには、着地点である、座標を決める必要があり、動く相手に非常に当てるのは難しい。
また、連発も難しく、無理に連続使用すると、キングバックの維持が難しくなるなど、デメリットも多い。




