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キングバック   作者: 君子な在る虎
森林浴 デットチェイサー編 ~森の中を探検しよう! 命は保証しないけど~
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乱雑に倒れる木Part1

岩谷とスティーブ、疲れた二人を待っていたのは宿での罠だった。魂を入れ替え、少し記憶を改ざん出来るキングバック、ハートシャッフルによって二人は魂を交換され、お互いの人生を追体験する。

岩谷が見たスティーブのこれまでの人生は悲惨であったが、かけがえのないものでもあった。

魂が入れ替わったことにより、キングバックのステータスに大きな変化が起きたことから、記憶改ざん前に部屋から脱出することに成功する。

二人は部屋の外にいた宿屋のダンナを追い詰めるが……

 乱雑に倒れる木Part1



 扉を吹っ飛ばした後、密室が解除され入れ替わった俺たちの魂は元に戻った。


「ふぅ、まだ頭がしっかりしないがやっぱり、この体が一番だ」

「ああ、人は魂と身体その二つが正しきピースとして合わさってこそだ。さて、宿屋のダンナ、お前についてだが大人しく捕虜になる気はないか? 殺すのは本意ではない。拷問の趣味もない。待遇としては君の国よりましだとは思うが」

「そ、それでも私には故郷なんだ。そして残してきた家族がいるんだ」

 宿屋のダンナは立ち上がり、俯く。


「例え、その能力のせいで国を追放されてたとしてもか」

「なぜそれを」

 スティーブの言葉に宿屋のダンナは驚き、顔を上げる。


「……わかりやすい話だ、本人にその気がなくとも、自分の地位を脅かす可能性がある存在は近くに置いておきたくないものだ。君の能力は条件がそろえば非常に危険だ」

「ああ、俺はこの能力のせいで何もかも……」

 宿屋のダンナは涙目になる。 


「そういった考えは分からなくはないが、俺は目の届くところに置いておきたい派だな」

 スティーブは険しい顔をする。


「だから、あんたらを捕まえたら、国に帰してもらえる話だったのに、その為にこの町に拠点を作りやすいようにあいつらを手引きしてやったのに……ぐ⁉ うぐぅ」


 そのとき宿のダンナの後ろには30代後半くらいの男が立っており、宿屋のダンナの腹には深々と鋭利な刃物が突き刺さっていた。


「なに⁉ いつの間に、てめえなにやってやがる!」

 岩谷は大声を上げる。


「う、ぐうぅ、か、カムラ、お前一体なんのつもりだぁ」 

 宿のダンナは血を吐き、苦しそうにカムラという男を睨みつけた。


「アッキ、ベラベラしゃべりすぎだ。そんなんだから、こうなるんだ」

 カムラは宿のダンナ、アッキの腹に刺さった刃物を引き抜き、アッキはその場に崩れ落ちた。


「口封じか」

 スティーブはカムラを睨む。


「……いかにも、しかしいつになっても迷惑な奴だ。せっかく戻れるチャンスをくれてやったのに失敗するどころか、ペラペラとしゃべりやがって」

 カムラは血を流し倒れているアッキをゴミを見るような目で見下す。


「仲間を捨て駒にするお前たちらしい下衆が故にしゃべられる結果になるんだ」

「……さすが、貴族の足の引っ張り合いの国は言うことがちがう。そんなときも傷の舐め合いだ」


「……昔の話だ」

「果たしてそうかな? そう簡単に人間も国も変えられん、甘ちゃんのままだ、そもそもお前みたいな……」

「お前のほうがよくしゃべるな」

 スティーブはカムラの話を遮る。


「き、貴様……もういいお前と私とでは生きる世界が違う」

「そのようだ」

「ではまた会おう、そのときは君達二人を連れて帰るのではなく、その二つの首を持って帰るとしよう」

 そしてカムラは刃物を上に投げた。俺たちはそれに気を取られた時には既に奴の姿はそこにはなかった。



「あいつ、仲間を殺すなんて」

「……口封じはよくあることだ」

 スティーブは嫌そうな顔をする。


「でも、あいつ。アッキを散々振り回して、いくら何でもそんなこと、国がしていいはずがねえ」

「その通りだ、だから俺たちはこの世界を救う必要がある」


「スティーブ、まさかお前」

「すまん、俺もお前の記憶をのぞかせてもらった」


「ハハハ、スティーブみたいな、凄いものなんてなかっただろ」

「いや、本来俺がいるべき世界の情報は新鮮だった」


「へえ、そういうもんかね、俺みたいな普通な人間の人生でもそう思うか」

「ああ(……普通か、十分個性的だと俺はおもうが……それより、俺にとっては君のこれまでの人生は何かどこか違和感を感じるものだったが……他人の記憶だからそう思うのか、それとも……いや岩谷は嘘をついていない。今は不確かな推測で考えるべきではないな)」


「これで俺たちは腹の内が全てわかった。なら本当にやれるな」

「ああ、俺たちで世界を取り戻す。その前にまず太陽の国が勝つ必要がある。そうだな?」

「そのためには目の前ことを一つ一つ解決していくしかないな」

「まず、このセンドウで情報収集だ」



 俺たちはカムラのことも気にはなっていたが情報が少なすぎて追うことができなかった。

 仕方なく、俺たちを尾行していたクラスチェがどんなことをしていたかを調べることになり、彼が勤めていた花屋を訪ね、彼が住んでいた部屋にまでやってきた。



「意外と真面目だったみたいだな」

「ああ、むしろ町での評判はいい、花屋で働いていて、まあ事情を話して部屋に通してもらったはいいが。恐ろしくなんの変哲もない部屋だな」

 スティーブが部屋を見渡して言う。


「だが、スティーブ、人は見かけには寄らないみたいだな。部屋にあったこのノートに他国の情報ばかり集まってるぜ」

「本当だ、しかもかなり踏み込んだ情報が多いな、一番多いのは太陽の国と木の国の情報、次に砂の国、鋼の国、そして月の国か、状況から見て奴は炎の国か水の国からのスパイと考えるのが妥当だな」


「まだ、決めつけるのは早いんじゃねえか、今、あいつ北の検問所にいるんだろ、後でいろいろ聞けばいいじゃねえか」


「それもそうだが、一応、前提があったほうが揺さぶりをかけやすいだろ」

「なるほどねえ、ん? これは」

 岩谷はノートに何かを見つける。


「どうした?」

「あいつに協力者がいるみたいだ」

「何! どんな奴だ?」

「どうやら、クラスチェはこのセンドウにいる情報屋からいろいろ情報を買っていたようだ」

「情報屋か、それなら金次第ではこちらになびかせることが出来るかもしれないな」

「じゃあ早速行くか」



 俺たちはバルターという情報屋に会うべく、いかにもいかがわしそうな通りまで来た。

 そこでガタイのいい男に呼び止められる。



「ヘイ! そこのお兄さんたち、うちの店まで寄ってかないかい? 今なら可愛い子いっぱいいるよ」

「へーいいね、だけどよ、今俺たち仕事中でさ、ここいらでバルターって男知らない?」

 俺は男から情報を聞き出そうとする。


「あー、会ったことはないんだけどたぶんすぐには会えないと思うな」

「どうしてだ」

「なんか、だれにでも素顔見せるわけじゃないらしくて、仲介人がいると思うよ」

「で、その仲介人はどこにいるんだよ」

「うん、うちの店のオーナーさ、というわけでお二人様ごあんなーい」



 そして俺たちはその仲介人であるオーナーが帰ってくるまで、未知の世界にいざなわれた。



「な、なあスティーブこういうところ来たことあるのかよ」

「ふっ何を言っている、そんなことくらい、もちろん()()()()()()だろ」

 スティーブはドヤ顔でこちらを向いてくる。


「だよねぇ、そんな遊んでる記憶お前の中に無かったしな」

「大丈夫さ、どんな困難も今まで乗り越えてきたんだ、俺はいける……はずだ」

「(不安だ)」



 店の女の子がお酒を持って岩谷に近づく。



「ねえ、いっぱい飲んじゃおうよガタイのいい、お兄さん」

「いや、俺未成年なんで飲めねえんだわ、悪りいな」

「えー、未成年なのぉ! 全然そうには見えないわ、なのにこんなとこに来たの? 悪い子ねぇ」

「まあ、俺いい子ではねえな」


「そうなのにお酒飲まないなんて、変なとこ律儀で、逆に惹かれちゃうわ。可愛い」

「アハハ、(何が逆にひかれちゃうだ)まだ未成年だぜ俺、それに俺なんかと遊んだら後悔しちゃうぜ。なーんてな!」


「えー何が後悔しちゃうの?」

「それは遊んでからのひ、み、つ」

 俺は話かけてきた女の子の唇の前に人差し指を立てる。

「えー気になるー」


「(さて、オーナーはまだか、これ以上遊ぶつもりはないんだが、そう言えばスティーブはどうしているんだろうか)」


 そう思って隣の席を見てると、少しうつむきながら、ハイ、うん、そうですとしか返せていないスティーブの姿がそこにあった。


「スティーブさんって普段何のお仕事をされているんですか~」

「えっと、国に関することを少々」

「てことはお役人さんですか? すご~い」


「(いやいや、役人どころじゃなくて国のトップなんだが、スティーブこういうところは普段来ないのか。いや俺も来ないけどさ)」

 そう俺が心の中で呟くと少し低い声の男、いやニューハーフの人がやって来た。


「スティーブさんと岩谷さんお待たせしちゃってごめんなさいねぇ。私ここのオーナーのカルザといいます。それで国のトップとその相方さんが私に何の御用でしょうか」


「実はだな……」

 スティーブが話そうとしたときそれまで興味なさそうにしていた女の人が一気にスティーブの元に群がってきた。


「スティーブってあのスティーブ・ロイヤー! キャー本物よ!」

 女性が集まってくるに比例してどんどんスティーブの顔が赤くなっていった。


「ちょっと、お姉さんたち、悪いけど今日はオーナーさんに会いに来たんだ。また来るから今日のところは落ち着いてくれないか」  

 俺はスティーブと女の子たちの間に割って入る。


「そうよ、スティーブちゃん困ってるじゃない。それに他のお客さんもいるのよ彼ならまた来てくれるわ」

「ハーイ、わかりました。スティーブさんまた来てね」

 そして女の子たちは別の客の方へ散っていった。


「ふぅ、ありがとう治、見苦しいとこを見せたな」

「意外だな、こういうの上手くいなしそうなのにな」

「どうもこう、グイグイくるのは苦手だ」

 スティーブはゲッソリとした顔だ。


「意外と可愛いところがあるのねん、ウブなところが素敵」

「……そろそろ本題に入るらせてもらいますカルザさん」

「そうだったわねえ、バルターのことでしょう」

「そうだ、そいつに用があるんだ」


「そうねえ、彼とは長い付き合いだけど、短いと言えば短い気がするわね」

「ん? つまりどういうことだよ」


「そのままの意味よ、いつ知り合ったか思い出せないのよ、それくらい変わった男よ」

「信用できない男だなぁ」

 俺は口を曲げる。


「でも、彼の情報は信用できるわ」

「……なるほど」

「「俺は信用しなくていい、ただし情報は信用してくれ、情報は人間ではないからな。嘘をつくのはいつだって人間だ」が彼の口癖よ」


「まあ、とりあえず会ってみるしかねえな、スティーブ」

「ああ、どこにいるか教えてくれないか?カルザさん」 

「うん、彼がいる場所はね……」


 そして俺たちはカルザの指定した場所まで足を運んだ。


この度はキングバックを読んでいただきありがとうございます。

今回は潜伏していた木の国の一員たちと衝突するまでの話でした。

木が突然倒れ始めるなど岩谷の周りにおかしな現象が起こり始めました。彼は自分を普通の人間と疑わないようですが、果たしてどうなのでしょうか? 今後の岩谷に何が起こるのかお楽しみください。

次回は潜入していた木の国の一員たちと決着をつける回になります、次回も読んでいただけると幸いです。


今日のキングバック解説

ステータスA+~E-


バッシュ

パワーB スピードA 特殊エネルギー性B 行動距離B 耐久性B 精密性C+

砂の国の刺客の一人、ルイン・カッシュがテューラーという人物から借りていたキングバックを岩谷との戦闘で失ったとき、新たに発現したキングバック。

初めての自分のキングバックだったが、別のキングバックを使っていた感覚から、初めてとは思えないほど使いこなし、岩谷を追い詰めた。

能力は硬化、腕や脚を硬化することで攻撃、防御にも使える。

しかし、能力に関してはまだまだ練習不足であり、効果範囲や、強度など未熟な点も多い。


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