無責任な優しさは時として他者を傷つける
ゼドとノレドはザキュナの元に向かう。
キングバック94話「無責任な優しさは時として他者を傷つける」
ゼドとノレドは屋敷の中を駆けていく。
その最中ウォーターナイトにはほとんど出会わず、出会っても戦わず逃げて行った。
あっという間にザキュナの寝室にたどり着く。
「ここか」
「えぇ」
「よし、行くぞ!」
二人は勢いよく部屋の扉を開ける。
そこにはベットの上でぺたん座りをして、こちらを見つめるザキュナの姿があった。
「来たのね」
「ああ、そうだ、お前に会いに来てやった」
「そう……でも、私の物になりに来たのじゃあ、ないのでしょ?」
「そうだ」
「じゃあ私を殺しに来たの?」
「……いや、あれは言葉のあやだ。今のお前を正しに来た。お前が持っていてはいけない物を取り返しに来た」
「そう……これでしょ?」
すると、ザキュナは自分のキングバックを出す。
「そうだ。マリカの力を返して貰う。それはお前が持っていてはいけない物だ」
「そうよ、いつも、いつも、いつもいつもいつもいつも!あなたはマリカ、マリカ、マリカってあの女のことばかり」
「だったら何故、マリカの真似をする? 能力を奪い。髪型も似せ、結局お前はマリカを追いかけているのじゃあないのか!」
「うるさい、うるさい、うるさい! あなたに何が分かるのよ、他人の想いに気付かない鈍感なあなたも悪いのよ!」
「そうだな、確かに俺があの時お前の想いに気付いていればこんなことにはならなかったのかもしれない。いつも思い返せば後悔の連続だ。だがな、自分で蒔いた種は自分で刈る。これはケジメだ! 勝負だ! ザキュナ!」
ゼドは剣を抜き、出会っても構える。
「生身のあなたに何が出来るって言うの? 欲しい物は自分で奪う! 行け! サラシュエル」
ザキュナのキングバック、サラシュエルはゼドに襲い掛かる。
しかし、それをゼドより先にノレドが剣で受け止める。
「我が師よ、昂っているところ悪いですが、参戦させてもらいます。私だって、あの時のように、ただの傍観者ではない。私も後悔のないように好きにさせてもらいます!」
「ノレドか、私は知っているぞ、お前も私と同じ敗北者だってことをな、そして、私の敵だってことをなぁ!」
「な!? 伊達に女ではないってことね、でもその想いは秘めると決めた!」
ノレドは剣からシャボン玉を発生させ、それと同時に後ろに下がる。
「エアトラップボム!」
ノレドがそう叫ぶと、さっきノレドがいた場所に残ったシャボン玉は爆発を起こす。
「相変わらず、大型タイプのくせに小回りが利くですこと。でも、ここは室内。あなたの自慢の能力も火力不足よ」
ザキュナのサラシュエルはピンピンしている。
「だが、よそ見をするな」
爆発の合間にゼドはザキュナの背後に回り斬りかかる。
「いいえ、よそ見はしないわ。ゼドのことが見えていないわけないじゃない」
その時、水で出来た触手が剣を受け止める。
触手はサラシュエルの背中から伸びており、ザキュナを守っている。
「マリカの力を上手く使っているな」
「あはは、そうよ、この力私によく馴染む。水を発生させるマリカの能力と水の性質を変える私の能力、とても良く合う」
「なるほど、それが故のこの触手か! 確かに能力の相性は抜群かもしれない。だが、馴染むかどうかは別問題だ」
そうゼドは言うと、触手に絡めとられた剣をゼドはあっさりと手放し、素早くしゃがむ。そしてそれと同時にもう一本隠し持っていた細身な剣を引き抜くと、触手が守っていないザキュナの足を素早く斬り付ける。
「ぎゃあぁああああ!!」
ザキュナはその場に倒れる。
「キングバックがあるからと過信し過ぎだ」
「う、うぅ、あ、あああああああああああ!! ゼドが私を斬った、斬ったぁあああああ!!」
ザキュナは足を斬られたことよりも、ゼドが確かな殺意を持ってザキュナを斬った事実に泣き叫ぶ。
「俺はもう昔の誰にでも優しい俺ではない。無責任な優しさは時として他者を傷つける。だから俺はザキュナ、お前を斬る」
ゼドは覚悟を決めた顔で剣をザキュナに向ける。
「あ、その、剣は?」
ザキュナはゼドの剣に見覚えがあるようだった。
「これはマリカの剣だ」
「そう、そう、ならいらない。マリカの剣を持って私を傷つけるゼドの手なんていらない!! そうよ、私の元から去るその足もいらないわ!! その口もいらない! いらないものは全部排除して来た! マリカも男たちも、欲しい物だけ残っていればいいのよぉぉお!!」
ザキュナは完全に正気を失った狂気の表情になる。
「人を物としか捉えられないメンヘラサイコがぁ! 愛を語るなぁ!」
ノレドはそう叫ぶと巨大なシャボン玉をザキュナの元に送り込む。
「な⁉ 危な!」
ゼドは咄嗟にその場を離れ、伏せる。
「爆ぜろ!」
ノレドの叫びと同時に巨大なシャボン玉は大爆発を起こす。
「ふぅ、やったか?」
ゼドは起き上がると、ザキュナの方向を見る。
「いえ、まだです。このままやられるあの人ではありません」
「そうか、あのさぁ、今のちょっと遅かったら俺までやられていたんだが」
「私は師を信じていますから」
ノレドは笑顔で言う。
「はぁ、全く、誰に似たんだか」
ゼドはため息をする。
「女と仲良く喋るなよ、ゼド」
ザキュナの声が聞こえる。
声の先には水で作られた巨大なイカのような物がそこにはあった。
そのイカの中にザキュナとサラシュエルがいる。
「……これはなかなか難しいな」
「えぇ、本気ですね」
二人は真剣な表情に変わる。
このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございます。
今回からザキュナ戦が始まりました。
明日の投稿は時間帯が前後にずれるかもしれません。
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どちらにせよ、次回もお会いできるのを楽しみにしております。




