手のひらドリルトルネードフラッシュ
この期に及んでゼドはザキュナとタイマンを張りたいとのたまう。
キングバック91話「手のひらドリルトルネードフラッシュ」
「ザキュナの相手は俺に任せてくれないか? 自分の手で答えを出したい」
ゼドは真剣な表情でそう言った。
「まあ、恋愛事情に人様が介入するもんじゃねえってのは分かるけどよ。ことが事だ」
「危険です。我が師」
ノレドはハッキリと言う。
「無茶なことを言っている自覚はある」
「今のザキュナ先輩はもう前のザキュナ先輩ではありません」
「ああ、アルファラスに血を飲まされている」
「はい。あの力はマリカ先輩です。ザキュナ先輩は死んだマリカ先輩の能力を取り込んでいる」
「マリカの能力は水流を操る能力だった。そしてザキュナは触れた水の粘性を変化させる能力だ」
「今のザキュナは相性のいい能力を組み合わせて使ってくるってことかぁ」
「そうだ。さらに奴単体でも厄介なのに、この町にはザキュナの部下がたくさんいる」
「つまり露払いを俺たちにやって欲しいってことか?」
「……そうだ」
「うーん、そうは言ってもなぁ」
岩谷は腕を組み顔をしかめる。
「ザキュナさんは最高位セイケイの称号を持つ数少ないウォーターナイトだ。ここは安全を取って総力戦でザキュナさんに挑むべきだと私は思う」
ウィルメリアは現実的な意見をゼドに言う。
「俺たちに話したんだ。諦めて共に行こう!」
岩谷はゼドの肩を叩く。
「……そうだな、分かった」
ゼドは今回はあっさり諦めたようで、皆で行くことを承諾する。
「さて、どうやって攻めるかだが」
ゼドは早速作戦の話をする。
「ここは一番町に詳しい僕に任せろ。ザキュナはこの町一番の屋敷を根城にしている」
ガジャックがそう言うと紙に屋敷内のざっくりとした見取り図を書いて行く。
「結構でかいな」
「ああ、仕事でたまに診察に行くがいつも迷いそうになる。だが、ザキュナの部屋はここだ」
ガジャックは見取り図の一番端の部屋を指差す。
「ここにザキュナがいるのか?」
「この部屋はザキュナの寝室だ。夜に攻めれば確実にここにいるだろう」
「攻めるなら早い方がいい」
「なら今晩行くか」
「裏から侵入すれば上手く行く」
「ほう」
男三人で話を進めて行く。
「……何か、夜這いの計画を立てているみたいな感じね」
ウィルメリアは何とも言えないような表情で呟く。
「!?」
見取り図を真剣に見ている岩谷、ゼドそしてガジャックは一斉にウィルメリアの方を見て焦った様子で弁解する。
「いや、違うぞ!」
「確かに傍から見ればそう見えるかもしれんが違うからな!」
「そうそう、僕たちは無実だ」
「いや、でもガジャック、何でお前ザキュナの寝室の場所知ってんの?」
「そうだぞ、何で知ってるんだ!」
岩谷とゼドはあっさりガジャックを裏切る。
「うぐぐ、こいつら手の平を返しやがって」
ガジャックは悔しそうな顔で二人を睨む。
「まあまあ、冗談よ。ごめんね」
ウィルメリアは軽く頭を下げる。
「……一応誤解を解いておくけど、彼女が殺しかけた男を治療したことがあるんだ。その時、駆け付けた部屋がザキュナの寝室だったってことだ」
「なーんだ、つまんねえ」
岩谷はつまらなさそうな顔をする。
「あの時は大変だったんだぞ」
「ふーん」
「男は全身ボロボロ、血だらけでやばかったし、ザキュナは裸で泣き叫んでるし」
「……うわぁ、地獄絵図だな」
「とにかく、ザキュナの暴走は止めてもらわないと」
「分かった。ザキュナは止める。それが、俺が出来る唯一の償いだからな」
ゼドは真剣な顔でそう言った。
その後、粗方作戦を立てた俺たちは今晩ザキュナの館に突入することになる。
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夜、ザキュナ邸裏口門付近
「本当にデカい屋敷だな。クソ、門の前、警備が厳重だなどうする?」
「お願い、シャルデ」
ウィルメリアはシャルデの能力に頼る。
シャルデは無言で何か操作するような手の動きをする。
すると、二人の警備兵の足元の影から黒い液体が現れ、一瞬で全身に絡みついていき、口も塞ぐ。
「⁉ んんんん⁉」
拘束された二人の警備兵はその場に倒れ込みじたばたしている。
「おぉ、上手く行ったな」
「ありがとう、シャルデ」
ウィルメリアはシャルデの頭を撫で、シャルデは気持ちよさそうにする。
「よし、じゃあ侵入するぞ!」
皆、一斉に駆け足で裏口門まで駆けて行く。
すると、先頭を走っていた岩谷が突然何かにぶつかる。
「うぉ⁉」
岩谷は何か見えない壁に先を阻まれ、顔面からぶつかり、思わず顔を抑える。
ウィルメリアは突然止まった岩谷に反応し、ぶつからないように咄嗟に横に避ける。
しかし、その後ろのエルフェはそのまま岩谷に衝突し、続いてシャルデ、ノレドも次々激突していく。
「うげぇ!」
岩谷は見えない壁と三人とのサンドイッチになる。
「す、すまない」
「う、うぅ、痛いですの」
三人は岩谷にぶつかった後、フラフラしながら離れる。すると岩谷はそのまま真後ろに倒れ、仰向けにのびている。
その姿はさながら死んだカエルだ。
「だ、大丈夫?」
ウィルメリアはしゃがみ覗き込むような態勢で岩谷を見る。
「あ、ああ、一瞬走馬灯が見えた。でも、エルフェの身体が柔らかくで良かった」
「な、ななな、堪能しているんじゃないんですの!」
顔を真っ赤にしたエルフェは岩谷を踏んづける。
「がはっ⁉」
岩谷は踏みつけられ、ビクッとした後動かなくなる。
「……とどめを刺したね」
ウィルメリアは呆れた顔で言った。
「あ! ついやっちゃったんですの、ごめんですの」
「う、うぅ、そんなことより、この壁は一体なんだ?」
岩谷は寝転がりながら疑問を口にする。
「どうやら、俺たちの行動は読まれていたようだな」
マシューは後ろを親指で指す。
岩谷も立ち上がり、皆がマシューが指さす方を見る。
すると、そこには眼鏡をかけ緑の髪色の女性が立っている。
「はぁ、まさかあの男の情報が的中するなんて……まあいいわここであなたたちの冒険はおしまいよ」
眼鏡をかけた女性は腕を組んで少し偉そうに立っている。
「誰だぁ? この眼鏡」
岩谷は眼鏡をかけた女性を指さす。
「ああ、この眼鏡はね、ジューノよ」
ウィルメリアは答える。
「ちょ、その言い方だと、私の眼鏡の名前がジューノみたいに思われるでしょうが!」
ジューノは怒っている。眼鏡が特徴と思われるのが嫌なタイプなのだろうか?
「はぁ、私はジューノ・セトリ、アルファラス様の忠実な部下であり、補佐官よ」
ここに来てまさか、アルファラス直属の部下、ジューノがお出迎え、ここからどうなるのか?
このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございます。
今回はザキュナの館への突入の出鼻をくじかれた形となりましたね、次回をおたのしみに!
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どちらにせよ、次回もお会いできるのを楽しみにしております。




