盗み聞き×2
無事スティーブをガジャックの元に届けることが出来た岩谷たち。
しかし、この町はゼドにとって何か訳アリのようだが……
キングバック87話「盗み聞き×2」
「さて、スティーブは治療して貰えることになったが、俺たちはこれからどうする?」
「僕たちがここに来ていることは敵も分かっているはずだ、あまり目立った行動は避けた方がいい」
「確かに今スティーブが狙われるとまずいか」
俺たちはゼドの案内で知り合いの宿に泊まることになった。
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その皆が寝静まったような夜俺はふと目を覚ます。
「う、ううん、ん?」
同じ部屋で寝ていたゼドがいない。
そして静まり返った夜の中、離れて行く足音がして窓から外を見ると、ゼドが宿から出て行くのが見える。
「こんな夜遅くに一体なんだ?」
気になった俺はゼドの後を追う。
夜中ゼドがどこに向かったと言うと、スティーブが入院しているガジャック診療所だった。
診療所の中でゼドとガジャックは何やら会話をしている。
二人の真剣な表情から会話の輪に入れる雰囲気ではなく、俺はつい盗み聞きをする。
「ゼド、君がここに戻ってくるなんて思わなかったよ」
「……」
「もう、マリカの墓には行ったのか?」
「……まだだ」
「そうか」
「スティーブの容態はどうだ?」
「あと少し遅かったらやばかった。でも本人の消耗が酷い。このまま元気に回復するかどうかは本人次第ってところかな。本当に一体どんな生活をしたらこうなるんだ。無理させ過ぎだ」
「そうか、分かった。ありがとう」
「それにしても君も変わったな」
「何がだ?」
「君がたくさんの仲間を連れてくるなんて珍しい。そもそも君は友達が少ない方だろう?」
「別に友達と言うわけじゃない」
「だったら彼らは何だい?」
「……ほっとけない奴らだ。かつての俺たちを見るようでな」
「……あの時は楽しかったな」
ガジャックは昔を懐かしむような悲しい顔をする。
「……」
ゼドは少し俯く。
「ゼドとマリカ、僕やハービット、そして……ザキュナたちとギースの店で集まって、あの時は楽しかった」
「もう、その話はやめろ」
ゼドは静かに制止する。
「それはマリカのこと? それともザキュナのことか?」
ガジャックはギロッとゼドを睨む。
「……」
「二人とも待っているよ」
「そんなはずがあるか、マリカは死んだ。死んだ奴が待つかよ」
「でも、ザキュナは生きている。きっと彼女は君が来るのを待っているよ」
「そう、かもな」
「だから戻って来たんだろ。もうここには戻って来ないと思ってた」
「……あいつらを見て思ったんだ。いつまでも足踏みをしているわけにはいかないってな……先に進むにはけじめは必要だ」
「そう、だね」
「邪魔したな」
そう言うと、ゼドは診療所を出る。
その時、入り口から出て来たゼドと鉢合わせする。
「あ!」
「はぁ、岩谷、聞いてたのか?」
ゼドは頭を抱える。
「ご、ごめん、夜に出かけるから気になって」
「まあいい、戻るぞ」
そうしてゼドと診療所を去ろうとしていると、今度は診療所の窓で聞き耳を立てていたノレドと目が合う。
「ノレド、何してんの?」
「あ! いや、これはだな」
ノレドはあせあせしている。
「ノレド、お前まで盗み聞きか?」
「我が師、ごめんなさい」
ノレドはしょんぼりとしている。
「……はぁ、戻るぞ」
ゼドは怒ることなく、俺たちは宿に戻る。
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次の日俺たちはスティーブの様子を確認するために診療所に向かう。
しかし、診療所の前にウォーターナイトたちが複数人群がっていた。
「な、なんだ⁉ あいつら?」
「情報が早い。スティーブが回復するまではいけると思ったのだがな」
ゼドは苦い顔をする。
「セイガの能力を使った、アルファラスの仕業か?」
「いや、能力を奪った直後の奴ではこの町に届くほど能力を使えないはずだよ」
ウィルメリアは否定する。
「今はとにかく救出が先だ。裏口に回ろう」
「ああ」
ゼドの提案に乗り、俺たちは診療所の裏口に回る。
岩谷は裏口のドアノブを捻るが扉は開かない。
「クソ、鍵かかってやがる。防犯対策はバッチリかよ」
「ここは私に任せるんですの!」
するとエルフェがドアの前に立つ、そして彼女のキングバック、アクア・エビデンスが鍵穴に侵入していく。
しばらくすると、ガチャっと音を立て、キレイに解錠される。
「私にかかればこれくらい楽勝ですの!」
エルフェは胸を張る。
「やけに手際がいいなお前」
岩谷はエルフェをじーと見る。
「え⁉ べ、別にこっそり侵入して堪能とかしてないんですの!!」
エルフェは焦って口が滑る。
「……今、堪能って言ったな」
「墓穴を掘ったなぁ」
「あわわわ」
「そうか、たまに下着が無くなることがあったけど……」
ウィルメリアは何とも言えない表情でボソッと呟く。
「お前マジか」
皆、ドン引きした表情でエルフェを見る。
「そ、そんな目で見ないで欲しいですの⁉ ちゃんと使った後は元に戻しているんですの!!」
「つ、使った……」
ウィルメリアは顔を赤くし、もじもじし始める。
「ガチ百合じゃん」
「エルフェ、もう喋るな」
ノレドはエルフェの肩を叩く。
「は、はいですの……」
「エルフェ、後で話があります」
ウィルメリアは笑顔で言う。
「……はい、ですの」
「……じゃ、じゃあ突入するぞ!」
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裏口から侵入する。
入り口の方でガジャックと女性との話し声が聞こえる。
「よく聞こえないな」
「お願いシャルデ」
「分かりました」
すると、シャルデから黒い液体で模ったリングのようなが発生する。
そのリングの中央から声が聞こえ始める。
「おお、これで良く聞こえるな。何をしたんだ?」
「シャルデの能力でガジャックの足元の影と繋げたの」
「へー便利だな」
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「さあ、いい加減、私にスティーブを明け渡しなさい!」
淡いピンクのポニーテールの女性は高圧的にガジャックに迫る。
「そんな人、僕は知らないよ」
「……大人しく渡した方が身のためよ、ガジャック。昔馴染みじゃあなければ、殺して奪う所よ」
「僕は彼が誰かなんて知らない。ただここにいる以上僕の患者だ!! 治療するまでは患者をどうするかの決定権は僕にあるはずだ!!」
ガジャックは言い返す。
「……言うようになったじゃない、ガジャック、少しは歳を重ねたと言うことかしら」
「この声は……」
ゼドは眉間にしわを寄せる。
「そういう君はいつまでこじらせているんだ?」
「何ですって⁉」
「君のこの町での行い、色々理由を付けているのかも知れないけど。僕には分かる。ただ寂しいだけだ! 男をとっかえひっかえして寂しさを埋めようとしているけど、今のままでは君の心の穴は永遠に埋まることはないよ!!」
ガジャックは勢いよくそう言い放つ。
「く、口が過ぎたな!! ガジャック!」
女性は明らかにキレた様子だ。ガジャックに何をするか分からない。
その時、誰よりも速く、ゼドは駆け出した。
「ぜ、ゼド⁉」
「師⁉」
皆の声を無視してガジャックと女性の元に突っ込んで行く。
「ザキュナァァ!!」
ゼドは剣を抜いて、ザキュナと呼ばれるその女性に斬りかかる。
このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございます。
今後の展開は今まで登場して来たゼドに焦点を当てたストーリーが展開されます。お楽しみに!
しかし、今後作者は少し忙しくなるので投稿出来ない日が出て来るかもしれません。
多少進行が遅れても、完結はさせますのでご安心ください。
いつも読んでくださる皆様にお願いがあります。
ブックマーク、評価、感想などよろしくお願いいたします。
作者のやる気が上がり、クオリティがアップすること間違いなしです。
Twitterでは作品に関する情報を提供するかもしれません。
作者名で検索すると出ると思います。
どちらにせよ、次回もお会いできるのを楽しみにしております。




