姉と弟
リリナは死んだ。
キングバック83話「姉と弟」
帰って来たウィルメリアたちに助けられて、岩谷たちはゼドの家に帰還した。
そして、一室丸々借りて、そこに縄で縛ったルペルを座らせていた。
「……私をどうするつもり? 殺す? まあ、好きにすればいいわ」
ルペルは精気のない表情だ。
「殺しはしない。それではアルファラスと一緒だ」
「そう……だからあの子は安心できたのね。自惚れていた、汚れた私ではあの子を救えないことくらい分かっていたのに……」
「今からでも変われ、ルペル」
岩谷はルペルをじっと見る。
普通この状況でそんなセリフを言えることはとても難しい。
しかし、岩谷はリリナを殺してしまったルペルにそう声を掛けることが出来るそういう人間だ。
「……それは出来ないよ」
ルペルは目を逸らす。
「何故だ!」
「一度、アルファラスという沼に嵌ったら二度と抜けることは出来ない」
ルペルは諦めたような表情をする。
「ルペルさん、あなたに家族はいますか?」
ウィルメリアはルペルに問う。
「……年の離れた弟がいる」
「そうですか、十年前雨の降る夜に私はあなたに撃たれました」
ルペルは驚きウィルメリアを見る。
「私だと気づていたのか?」
「あなたの声を覚えていましたから。それとさっきの質問の回答で確信しました」
「……」
「あの時、確かに私たちを撃った。だけどとどめを刺さなかった。それは私たちの姿に自分たちを当てはめてしまったからではないですか?」
「そうだ、まるで自分を撃つような感覚だった」
「なら、今の私の気持ちが分かるはずです」
「……やめろ」
「なんでもいい、私の気持ちが分かるあなたに力を貸して欲しい!」
「……やめてくれ」
「ルペルさん!」
すると突然ルペルは血を吐く。
「ルペルさん⁉」
「クソ、言っただろ、やめてくれって。そう説得されたら力を貸したくなっちまった。だから、アルファラスにかけられた呪いが今、体中を駆けている」
ルペルの顔には赤い痣のような物がどんどん広がっていく。
「そ、そんな、そんなつもりは」
「はぁ~、呪いのことを喋っても発動する。お前は悪くない気にするな、う゛」
「あ、ああ」
ウィルメリアを大きく動揺する。
そして再びルペルは血を吐く。
「縄をほどくぞ! いいか?」
「ああ」
岩谷はスティーブに了解を得るとルペルの縄をほどき、ゆっくりとベットに寝かせる。
ウィルメリアはルペルの手を握る。
「クソ、もう時間がないな。最後にいいことを教えてやる。リリナのような子供たちを苦しめている奴がいる。そいつ名は……」
その瞬間ルペルの下が燃え始める。
「がっ⁉ ぐぐぐ」
ルペルは喋ろうとするが上手く声を出せない。
「ルペル、そいつの名はネイビー・プランだな?」
岩谷は問うとルペルは頷く。
すると突然ルペルは自分の下を嚙み切る。
「がぁ⁉ はぁはぁ、ほぐとうだ、そこ、の、ティア―大森林に、ある、カラン、湖に、奴の、研究所が、あ、る」
そう言い終えると、ルペルは力尽きる。
「私のせいだ、私が協力を求めたから……」
ウィルメリアは自分を責める。
「ウィルメリア、全てを終わらしたら、彼女にお礼をしよう」
スティーブはウィルメリアに声を掛ける。
「ふぅ……アルファラス、ちょっと待ってろ、先に倒す奴が出来た」
岩谷は怒った顔で手を強く握る。
ーーリリナ、ルペル、俺たちは立ち止まれない。
ここで立ち止まれば、君たちの人生を否定することになる。
リリナ、君のおかげで俺の封印は反転化され、能力が使えるようになった。
ルペル、君のおかげで悪の巣を知れた。
「みんな、行こう」
岩谷は強く言い。
仲間たちは全員頷く。
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そして俺たちはウィルメリアが調達してきた二台の馬車の前までやって来る。
「それにしても、いいのか? ゼド、何もお前まで付いて来なくてもいいんだぞ。ギースたちは俺たちが安全にこの街外に連れ出す」
俺たちの旅に同行すると言うゼドに岩谷は声を掛ける。
「なんだ? 能力者ではない俺がついて行ったら邪魔か?」
「いや、別にそんなことはないけどさ、ルペルに肩を撃たれて痛いんじゃないのか?」
「この程度問題ない。俺にも用事が出来た」
「用事?」
「ああ、お前たちを見て、俺もそろそろ前に進まないといけないと思ったからな」
「……分かった、って言っても俺一人で決められることじゃないけどな」
その後スティーブとウィルメリアに許可を取り、全員を乗せた馬車は街を出発する。
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男どもを乗せた方の馬車内
「へ~、あんたもアルファラスに恨みがあってエステイトに協力してんのか?」
岩谷は馬車を運転する、30代前半くらいの女性に声を掛ける。
「ええ、色々ありましてね。他にも少ないですが各地にエステイト派はいます」
彼女らはエステイト派だ。
しかし、エステイトの正体がウィルメリアでさらに女であることを知っているのは側近を含むごく一部の人物のみらしい。
俺たちが雑談をしていると、突然スティーブが苦し始める。
「どうした⁉ スティーブ!」
「あ、足が」
スティーブはルペルに撃たれた右脚を押さえている。
「確認させてくれ」
ゼドはそう言い、スティーブの足を診る。
「これは当たりどころが悪い。応急処置程度でどうにかなる物ではない。適切な施設で処置しなくては最悪足を無くすことになるぞ!」
「な、何⁉」
「おい、馬主、ココノツという町に行ってくれ、ここからだと一番近いはずだ。そこには知り合いの医者がいる」
「分かりました」
こうして岩谷たちは進路を変更し、スティーブの足の処置のためココノツという町を目指すことになる。
このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございます。
今回はリリナにつぎ、ルペルが死にました。
Q:死に過ぎでは? A:はい、この章ではよく人が死にます。
血生臭い話が続いてしまっています。正直作者も疲れてきております。
それでももうしばらくお付き合いください。
ブックマーク、評価、感想などよろしくお願いいたします!
作者のやる気が上がり、クオリティがアップすること間違いなしです。
Twitterでは作品に関する情報を提供するかもしれません。
どちらにせよ、次回もお会いできるのを楽しみにしております。




