ただ一言褒めて欲しかった
岩谷に襲い掛かるリリナのロキ、スティーブと同じように奇襲をかけられるがどうなるのか?
キングバック80話「ただ一言褒めて欲しかった」
リリナのロキが現れ、岩谷の背後から襲い掛かろうとする。
「うーん、よくわからないなぁ」
すると、岩谷はリリナの軽くまくった袖をいきなりグイっと大きくまくり、二の腕が見えるくらいまで見えてしまう。
「きゃあ!」
リリナは突然の出来事に驚き、ロキを引っ込める。
しかし岩谷はそれ以上の衝撃の光景を目の当たりにする。
そこには昨日今日ついたような傷ではない無数の切り傷などの外傷跡が見受けられた。
「な、なんだ、これ⁉」
岩谷は衝撃のあまり、リリナの傷を凝視する。
「み、見ないで!」
リリナは岩谷を振り払い腕の傷を隠す。
「……この傷、いつのだ? リリナ?」
「そ、そんなものあなたには関係ない」
リリナは顔を背ける。
「関係ない? そうか、リリナがそう思ったならそうなのかもな。だが、俺の中ではもう関わっちまった。だからもう関係なくない」
「そんな勝手な!」
「勝手? そうさ、いつだって人間勝手に生きてる。だから俺は勝手にお前を心配するんだよ」
「……もういい、私は帰る」
気分を害したリリナは背を向けて歩き始める。
「おい! いいのか? 俺はここにいるぞ、俺を殺すために来たんじゃないのか?」
「あ、あなた既に気付いて……」
リリナは驚いた様子で振り返る。
「リリナ、自分じゃあ可愛い子供を演じているつもりかは知らないがな、作り物ってのは違和感がすげぇんだよ。俺にはあんたの本性が見える」
岩谷はリリナをじっと見る。
何故かこの時の岩谷はリリナの心を見透かしているようだった。
「……そう……どうせ、ろくでもない性悪に見えるんでしょ?」
リリナは諦めたような表情で目を逸らす。
「ん? いや、俺にはただ子供としての純粋さを押し殺し、見栄を張っているようにしか見えないがな」
「わ、私が見栄を張っている? ふざけないで! これが私よ、自分の可愛さを利用して、他人を騙す、性悪女、それが私なのよ! あんたに何が分かるって言うのよ! はあはあ」
リリナはまくし立てるように一気に喋り、息切れを起こしている。
「……今まで色々なことがあったんだろうな、そうでなければ俺の言葉にそこまで感情的になるまい」
そう言うと、ゆっくり岩谷はリリナの方へ歩いて行く。
「こ、来ないで! そ、それ以上こっちに来たら殺すから!」
ロキが出現し、岩谷に剣を向ける。
「それは出来ないさ」
岩谷は歩みを止めない。
「なんでよ、もう殺すから! やりなさいロキ!」
しかし、ロキは動かない
「ど、どうして? どうして、動かないのよ! ロキ!」
「分からないか?」
「分からないわよ!」
「それは今お前が偽りの自分ではないからだ」
「い、偽りの自分?」
「そう、今この俺と話している君は、普段隠している本来の君だ。今まで殺してきた感情が出てきている。例えそれが怒りだとしても、今の君は本来の君だ」
岩谷が言い終える頃にはリリナの前に岩谷はそびえ立つ。
「何よ! 何よ! 何なのよ! あんたぁ!」
リリナは怒り叫ぶ。
岩谷はかがんで優しい顔でリリナを頭を優しく撫でる。
「今まで、頑張って来たんだね、えらいよ、リリナ」
するとリリナは堰を切ったように目から涙が溢れ出始める。
「あ、あれ? なんで? 私、泣いてるの?」
何故泣いているのか理解出来ていないリリナに岩谷はさらに声を掛ける。
「いいんだよ、泣いたって、怒ったって、そして、笑ったって。本当の自分になれるのならいくらでもするといい」
そこでリリナはあることに気が付く。
ーーああ、そうか、私はただ、褒めて欲しかったんだ。
企みもなく、悪意もなく、ただ一言褒めて欲しかったんだ。
私を受け入れて欲しかったんだ。
「う、うぅ、ううう、私、私、頑張ったよ、ここまで生きてくるために、私頑張ったんだよぉぉおお!」
リリナは岩谷に抱き着くと、くしゃくしゃになるほど泣きじゃくる。
「存分に泣くといい、俺の前では自分を隠すな(こんな子供に途轍もない重圧を加えるとは、アルファラスめ!)」
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リリナの泣き声は辺りに響き、それはルペルの耳にも入る。
「なんだ⁉ この泣き声は? どこだ? 音の鳴る方はどこだ?」
リリナを見失ったルペルは音の先を探し始める。
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リリナはかなり泣いていたが、しばらくすると泣き止む。
「もう、大丈夫か?」
「うん、ありがとう。岩谷治」
「治でいい」
「うん、分かった。治お兄ちゃん!」
「え⁉ お、お兄ちゃんはちょっと……」
岩谷は少し照れた様子で顔を背ける。
「えぇ~いいと思うんだけどなぁ~」
リリナは小悪魔的な笑顔で岩谷の胸をつつく。
「はぁ~分かった、好きにしろぉ」
「やった!」
「……それでよ、リリナ、お前こっちに来ないか?」
岩谷はリリナをスカウトする。
「そ、それは……」
リリナは言葉を濁す。
「ダメか?」
「ダメというより、無理かな」
リリナ悲しい顔をする。
「何でだ?」
すると、リリナは再び涙を浮かべると、どこか影のある笑顔をして岩谷から離れる。
「ごめんね、私、そっちには行けない。だって、ここまでにたくさん殺して来た。私が生きるために人を殺して来たんだよ。こんな汚れた私はそっちには行けない」
「……リリナ」
「今までしてきたことを聞いたら、きっとあなたは私に失望する。だから、ここで治とはお別れ。だってまだ私に失望していないまま、記憶になってくれた方が楽だもの」
そう言うとリリナは再び岩谷に背を向ける
「さようなら、そしてありがとう。優しい治」
「待て! リリナ!」
リリナは一瞬ぴくッとするが振り返らない
「何よ?」
「このままアルファラスの元に帰ってどうするんだ? 今戻ってもお前は壊れていくだけだ!」
「そんなこと……言っても」
「分かった、このまま帰ってもどうせ、敵同士だ。なら、その前に全てを語っても変わりはないだろう?」
「でも、あなたに失望されたくない」
「そうか、でも俺はこのままアルファラスの元に戻ったら、きっとお前に失望する。だったらここで全て話して失望されない結果が一番じゃないか?」
「……ほんと、ずるい。そうやって逃げ道塞いで、ずるいよ」
リリナは振り返ると岩谷のほっぺをつねる。
「あはは、ごめんごめん」
「じゃあそんなに聞きたいのなら教えてあげる。今までのつまらない人生を」
このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございます。
次回はリリナの過去に関する内容になります。お楽しみに!
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