雨
雨の降る夜。
雨の音は他の音を貪り喰らう。
キングバック72話「雨」
10年前
雨の降る夜、四人家族は何かに追われるように街を逃げる。
銃声が鳴る。
しかし、雨の音は銃が鳴く声をかき消していく。
意識しない者はただの日常が街に残る。
銃弾が飛び交う中私たちは必死に逃げた。
しかし、その鉛玉はまず、母に当たった。
雨が音をかき消す間にドサッと人が倒れる音が一瞬だけした。
そして、私は後ろを振り返る。
「お母さん!」
「振り向いてはダメ! 行きなさい!」
母は振り向くなと叫ぶ。
「いくぞ、ウィルメリア! エステイト!」
父は母を見ようとせず、私たちの手を引く。
「お父さん! でも!」
「振り返るな! そう約束しただろう!」
お父さんは私たち二人の手を引っ張り、雨の中走ります。
強く握りしめたその手からは強い怒りを感じました。
しかし、子供を連れたまま逃げ切れるわけはなく、私たちは次第に追い詰められて行きました。
「……ウィルメリア、エステイトを連れて逃げろ!」
「お父さんは?」
「……お父さん、お母さんを迎えに行かなくちゃ、絶対戻ってくるから、な」
そう言うと、暗い中私のお父さんは笑って見せる。
正確には暗くて笑っていたかは分からなかったけど、いつもお父さんは私たちに嘘をつくとき、笑って誤魔化すから、きっと笑っていたんだと思う。
「じゃあ、お父さん、行くから」
そう言うと、お父さんは逆走して行く。
私は振り返らない。その約束を守ってエステイトを連れて必死に逃げました。
「はあはあ、エス、絶対にお姉ちゃんが守ってあげるからね」
「う、うん。ウィル姉ちゃん」
だけど、子供二人が簡単に逃げ切れるわけはなく、一人のウォーターナイトに見つかりました。
その瞬間、私は急に立てなくなり、膝を着きました。
そこで初めて自分の足が撃たれたことに気が付きます。
「あ、ああ、足が」
「お、お姉ちゃん!」
「はぁ、ほんと、嫌な仕事をさせる」
ウォーターナイトは素顔を隠し、正体がわからないようにしていましたが、その声は今でも覚えている。
「エス! あなたは逃げなさい!」
「で、でも」
だが銃声は鳴らないのに弟もその場に倒れる。
「あ、ああああああ!」
弟も足を抑える。きっと私と同じく足を撃たれたのだろう。
「……恨んでいい、お前たちを切り捨てないと私は生きていけないから」
ウォーターナイトの声はまだ少し若く、まだ十代のように感じました。
「お願いします! どうか、弟だけは見逃して下さい!」
私は撃たれて動かない足を強引に動かし、土下座をする。
「……それは出来ない、私の任務はお前たち一家全員の始末だからな」
「そ、そんな」
「代わりにこれ以上苦しませないように殺してやる」
「見逃して下さい!」
私は必死に懇願した。しかし現実はそう簡単には許してくれない。
「……ここで私が見逃しても、他の誰かに見つかる。ガキを虐めて楽しむような奴もいるんだ。ここで大人しく諦めろ」
ウォーターナイトの人はキングバックを出すと、そのキングバックが持つ銃口をこちらに向ける。
「僕がキングバックを使えるのがいけないんでしょ? だったら僕だけ殺してお姉ちゃんを見逃してよ」
冷静にエステイトはウォーターナイトのキングバックの銃を掴むと、銃口を自分の頭に向ける。
「ダメよ、エス!」
そのとき、何故かウォーターナイトの銃口の先が震えていた。
「……いや、ダメだ、二人ともここで死ね」
そう言うと、ウォーターナイトはエステイトを蹴り飛ばすと、エステイトの腹、私の背中に一発ずつ弾を撃ち込んだ。
「ちっ、嫌な仕事させやがって」
ウォーターナイトはそれ以上私たちにとどめを刺そうとせず、その場を去っていった。
「う、うぅ、エス?」
弟からの返事はない。
その時の私はとにかく敵に見つかることを避けるため、弟を引っ張りボロボロのまま、近くの川に飛び落ちました。
そこからの記憶はなかったのですが、時折夢という形でその後何が起こったのか? フラッシュバックするように思い出すときがあります。
これはたぶん弟の記憶。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
知らない人の家で飛び起きるように目を覚ます。
「ここは? そうだ! ウィル姉ちゃんは?」
狭い部屋を見渡すと、そこにはフードを被った男がいた。
顔は黒いモザイクのような物で常に隠れている。
弟からは見えていたのだろうが、この記憶では常に黒く見えない。
「あなたは?」
「……気まぐれでお前を助けただけの男さ、名は知らなくていい」
「じゃあ、気まぐれさん、ウィルメリアって人知りませんか? 僕の姉なんですけど」
「ちょっ、気まぐれさんって、そのままだな、まあいい、お前の姉なら上で眠っている」
そういうと、僕は気まぐれさんと共に上の階に上がる。
そこで姉はベットに眠っていた
「良かった、姉ちゃん無事だったんだね」
僕は安心していたが、僕は次の瞬間自分の目を疑った。
「な、なんだ? これ⁉」
ベット一面に大量の血がしみ込んでいる。
「な、なんだよ! これ、姉さんは無事じゃなかったの!」
「無事とは言っていない」
そして自分の服をまくり腹を見る。
「僕は腹を撃たれた、でも傷はきれいさっぱり残っていない! なのに、なんで姉ちゃんはこんな目に!」
「言ったであろう? 気まぐれでお前を助けただけだと、気まぐれでお前の姉を助けなかった。ただ、それだけだ」
「そんな、お願いします! 僕の姉を助けて下さい! 何でもしますから」
「お前に見返りを求めていない。俺が助けるのは将来が有望な奴だけだ。あれを生かしてもこの先のお前の荷物にしかならん」
すがりつく弟を気まぐれは振り払う。
「何を言って……」
「お前は将来この国の変える器がある。だから、助けた。それだけだ」
「そんなこと僕に言っても」
突然の言葉に僕は混乱する。
「俺には目にはそう見える。だが、お前は少々優しすぎる。姉がいるとお前はダメになる。姉の死の恨みをアルファラスに向けるくらいでちょうどいい」
「ふざけるな! 僕はそんなものどうでもいい! 今はただ、ウィル姉ちゃんが生きていてくれればそれでいい」
「お前の都合など知ったことか、最後の挨拶くらい済ましておけ」
そう言うと、男は近くの椅子に腰かける。
「こ、こうなったら僕の能力で」
「お前、何をするつもりだ!」
気まぐれは焦った様子で立ち、椅子が倒れる。
「僕の能力で姉ちゃんを助ける!」
「バカが、下手すれば両方死ぬぞ!」
「やってみなくちゃわからないだろ!」
「……愚か者め、勝手にしろ!」
気まぐれは諦めた様子で、椅子を直すと再び座る
このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございます。
ウィルメリアの過去に関する回でした。次回もこの続きになります。
いつも読んでくださる皆様にお願いがあります。
ブックマーク、評価、感想などよろしくお願いいたします!
作者のやる気が上がり、クオリティがアップすること間違いなしです。
Twitterでは作品に関する情報を提供するかもしれません。
作者名で検索すると出ると思います。
どちらにせよ、次回もお会いできるのを楽しみにしております。




