欲望の獣
なんとかアルファラスから逃げることが出来た岩谷たち、アルファラスの遭遇を予測できなかったウィルメリアは己が責任と自分を責める。
キングバック71話「欲望の獣」
「……それで何があったんだ?」
ゼドの問いにノレドとウィルメリアは事の顛末を全て語った。
岩谷とスティーブは疲労が凄まじく、今もなお眠っている。
「正直、これは敗走と言っても過言ではない」
ノレドは正常を装っているが、辛い事実による思いが表情に出ている。
「ごめんなさい、私の作戦が甘かった」
「ウィルメリア様……でも普通あそこでアルファラスが出て来るなんて思わないですの」
「だとしても、彼らにアルファラスのことは全て話しておくべきだった。彼らを戦いに巻き込むために、敢えて伏せた私の責任だ。そんなことしなくても彼らは己が正義のため動くのに、私はそれを信じきれなかった」
「でも、俺たちは全員生きている。なら、いくらでもなる。違うか?」
「⁉ スティーブ、さん」
そのとき、スティーブと岩谷が起きてこちらに語りかけて来た。
「過ぎたことは変えられない。死んだ人間は生き返らない。自分の過去に後悔があっても、止まってはいけない」
岩谷は真剣な表情で言った。
「岩谷……」
「まあ、戦いの最中で戦意を失った俺の言うことじゃないけどな」
「ごめんなさい。私がアルファラスの能力を事前に言っていたら、間接的とはいえどあなたが他人を殺すことにならなかったのに……」
「謝るのは後にしようぜ、お互いをもっと知ってそれからでも遅くはないだろう?」
「岩谷の言う通りだ。腹を割って話そう」
「二人とも、うん分かった。私に何があったのか、全て話す」
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俺たちはこれまでのこと、何でも話した。
その後ウィルメリアは話しにくそうしていたが、次第に話始める
「私には弟がいたの」
私の三つ下の弟、とても優しくて自慢の弟だった。
でも、今から約10年前、アルファラスの策略によって両親共々死んでしまった。
皆も疑問に思っていたかもしれないけれど、この国には女性のキングバック使いばかりいる。
昔からこの国は何故かキングバックを使える男性が生まれにくいの。
その代わりにこの国のキングバックが使える男は普通より強い能力を持って生まれることが多かった。
アルファラスの前の王もそうだったそうよ。
アルファラスの能力は自分の血を飲ませた相手からは何でも奪うことが出来る能力。
それは寿命、若さ、キングバック能力、つまり彼の血を飲むということは彼の奴隷となることに等しい。
そしてアルファラスは本能で、自分が他人と比べて邪悪であることを理解していた。
さらに彼は理解していた、ただ力のみで国を乗っ取っても、民は付いて来ないことを、世論は付いて来ないことを、知っていた。
だから彼は自分の心の内に潜む、どす黒い牙を隠し、自分の能力のことも他人には一切話さず、元々男のキングバック使いが強力かつ、稀少であることが追い風になり前王の後釜まで登り詰めた。
前王は病死ということになっているけれど、本当のところは分からない。
そして彼が王となった途端、自分の中の欲望の獣を解き放った。
まず、そのときの流行り病を解決するためといい、国民に薬を配った。
もちろん中身は彼の血が入った薬とは名ばかりの奴隷の刻印。
彼は世論をコントロールし、自分が国のトップとして皆に受け入れられるように仕組んだ。
奴隷になった国民の身体を彼の能力でコントロールすることで確かに病の難は逃れた。
だけど、そのせいで国民は彼を英雄視し、彼にとって都合のいい、自分の欲を満たすための地盤が完成した。
あとはもうこの国は彼の手足となり、彼にとって不都合な人間は次々と消えて行った。
死因は皆、病死。
私の両親も弟も病死扱いよ。
確かに男のキングバック使いが少ないといってもゼロじゃない。
彼は自分の地位のために後継者の可能性になる男のキングバック使いを片っ端から殺して回った。
例外はない、子供だろうと容赦はしなかった。
私の弟も7歳になったとき、キングバック能力があることが発覚した。
私の両親は事前にアルファラスの蛮行にかんづき、家族全員薬を飲んではいなかった。
そのおかげで、アルファラスから逃げるチャンスが出来た。
家族全員で当時出来たばっかりのレジスタンスの所に逃げ込むつもりだった。
……だけど、そう簡単に物事が運ぶことはない。
アルファラスはかなりの切れ者私たちの行動など全てお見通しだった。
あれは十年前、雨の降る、逃げるには絶好の夜だった。
だけど、隠蔽するにも絶好の夜でもあった。
このたびはキングバックを読んでいただきありがとうございます。
次回からはウィルメリアの過去に関する内容です。
何故男として生きて来たのかそれが分かります。
皆さんのアルファラスへのヘイトが溜まっていっていると思われますが、辛抱をお願いします。
いつも読んでくださる皆様にお願いがあります。
ブックマーク、評価、感想などよろしくお願いいたします。
作者のやる気が上がり、クオリティがアップすること間違いなしです。
Twitterで作品に関する情報を提供するかもしれません。
作者名で検索すると出ると思います。
どちらにせよ、次回もお会いできるのを楽しみにしております。




